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でかすぎるパンツ

「おっ、おはよう、豪徳寺さん」

「うん、おはよう」

 できた、ついに俺にもできたんだ。昨日の事に気をよくした俺は、思い切って挨拶をしてみた、だって秘密を共有する仲だし、と思ったものでね、えへ、えへへ。まあ、そこまでだけど。

「なに昨日、勝手に帰ってんだよ」

 加藤が肩を手をかけて、顔を近づけてきた。

「あ、ああ、ごめん、あの顔だったからさ、早く戻さないとって、いっぱいいっぱいで」

「へ~、いっぱいおっぱいか。それはいい。でも戻ったみたいでよかったな。今日は付き合ってくれるんだろ、あとで話聞かせろよ」

「ああ、うん」


 そしてこれといった事件もなく放課後となった。余談だが、俺は帰宅部である。加藤もそうだ。ちなみに豪徳寺さんは手芸部に所属している。そんなわけなので、俺は授業が終わり次第、帰宅の途につくのであった。

「でも不思議だな、自然に治るなんて、まあ、なったのがそもそも不思議なんだけどさ」

 加藤には自然に治ったと言った、いくらなんでも信じるはずがないし、めんどくさいからだ。豪徳寺さんのことも秘密にしておきたいし。いや、なんとなく。

「ほんとだよ、治るってわかってたら、色々とやっとけばよかったって気もするよな」

 俺も気が大きくなっていた。昨日のチキンぶりはどこへやら、意味深な発言もしてしまう。

「お、エロ方面?」

「はは」

「須磨くん」

 声のした方を見ると、豪徳寺さんがうつむき加減で立っていた。

「あれ、今日は部活じゃ?」

「いいの、それより……。ちょっと、いいかな?」

「え、ちょっと……って?」

「あの……だから……」

「おいおい、隅に置けないな。じゃあ俺は先帰るわ。がんばれよっ」

 加藤が突然去っていった。こういうのを空気を読むというのだろう。だが正直いてほしかった気もする、あのときは必死だったけど、改まって二人きりとなると。どう話したらいいのだろうか。

「じゃ、じゃあ、その辺で」

 俺達はとりあえず、人気のなさそうな校舎隅のあたりに移動した。人に聞かれたくない話っぽかったので、彼女にとっても、俺にとっても。

 豪徳寺さんは、言おう言おうと思いながらもなかなか言い出せない感じで、もじもじしている。

 こんなときは、やはり男らしさを見せなければならない。そうだ、ここは俺が、俺がっ。

「あっ、ななっ、何? ななな、なんか、なな何か話でも……」

 やはり無理だった、緊張のあまりカミカミの上、最後は尻すぼみだ、最悪だ。

「あ……あのね……」

 三十秒程度の間。ああ、なんか心臓が首のすぐ下に上がってきたかのように感じられる。もうちょっとで窒息しそうだ。どうしたら、どうしたら。

「ごっごめんっ」

 と言ったかと思うと、豪徳寺さんは目を閉じ、一気に顔を近づけてきた。赤く染まったほっぺたが日光を反射してピンクに輝いている。魅力的なその瞳を閉じてなお、美しさも可愛らしさも微塵も揺らいではいない。ほのかな甘い香りとともに、その桜色のやわらかそうな唇が、もう目の前まで迫ってきている。ぶっぶつかるっ、え? キキキッ、キス? えっ、なんで? どういうこと? 俺は元々真っ白になっていた頭の中がさらに激しい光に満たされ、もはや卒倒する寸前となった。

「ちょちょっ」

 思わず避けてしまった、勢いでちょっとほっぺた同士が当たった。ああ、俺のバカ、避けてしまうなんて。しかし俺の意識を保つためには仕方がない。それに意味もわからずされるというのも、ああ、でも。どっちがよかった? 俺はほんとはどっちがよかった? ああ、どどどっちが。

 豪徳寺さんは、真っ赤になってうつむいている。

 どどどど、どうしたら? こんな時どうしたら? こんな時なんて誰にでもよくあることじゃあないだろう、正解なんて無いんだろう、でもどうしたら?

 と、よく見ると豪徳寺さんの横に小さな男の子が立っている。さっきまではいなかったと思うんだけど、なぜこんなところに? 小一くらいの生意気そうな顔をした金髪少年で、興味しんしんにこっちを見つめている。しかし服装や雰囲気は近所の子供という感じではなく、大金持ちのご子息という感じだった。

「あ、あの、君、どこから……」

 俺は、少年に話しかけた。だって、この状況に耐えられなかったもので。迷い込んできたなら、対応してこの場をなんとかしようか、なんて。

「見えるの? この子が」

「え、ああ、うん、それは」

「ちょっと、カオーソ、どういうこと?」

 豪徳寺さんは急に怒り出した。え? カオーソって? この子が?

「キスしないと、お互い見えるようにならないんじゃなかったの?」

「ばれちまったか、面白かったのに。お互いの顔の一部が触れればいいだけさ。本当はね」

「ちょっとーっ!」

 カオーソを激しく揺さぶる豪徳寺さん。

「あ、あの? どういうこと?」

「いやこれはね、ちょっとキミに頼みたいことがあったんだけどさ。なにせキミには僕が見えないだろ。色々と不便だし、今後のこともあるからね。だからちょっとキスしてもらおうと思ってさ」

「もう二度と会えなくなるって言うから、私っ、私っ。どういうことーっ!」

 あ、ああ、大体わかった。そういうことね。まあ、セーフでよかった、ってことなのか?

「それで、頼みたいことって?」

「そうそう、それだよ。オルオルは今いないのかな?」

「オルオル? ああ、学校には連れてきてないけど。朝起きないし、家から出ようとしないんで」

「ふうん、じゃあキミの家に行こうか」

 そんなわけで、俺の家に行くことになった。豪徳寺さんもロロに会いたいと言うので三人で家に向かった。


 家に着くと俺は気がついた。部屋に色々やばいものがあったかもしれない。いや大丈夫とは思うが。あと掃除してなかったかも。

「ちょ、ちょっとここで待ってて、呼んでくるから」

 考えてみれば、別に中に入ってもらわなくてもいいよな。家の中に入ると、ロロは相変わらず電源の入っていないパソコンに向かっていた。

「あの、カオーソが来てるんだけど」

「なにぃっ!」

 ロロはすごい勢いで玄関を飛び出し、カオーソに飛び膝蹴りをかました。だがカオーソも負けてはいない、がっちり両手でガードしている。

「何の用だ、貴様!」

「かわいーい。あなたがオー(Rの発音)ドちゃんね。はじめまして」

 さすが豪徳寺さん。発音も完璧だ。

「見えているのか? どういうことだ、おい」

「そんなことより、オヤジが来るぞ、オルオル」

 ロロの表情が一気に変わった。唇は恐怖に青ざめて小刻みに振るえ、目は大きく見開かれ、無限の彼方を見つめていた。

「ほ、ほほ、ほんとうか……それは……。ばかな……、ネットの情報では……何も……」

「あいつがそう簡単に悟られるかよ。ゾルガスから連絡が来たんだ。どうだ、ここは協力するしかないと思うんだが」

「ぬぅう、貴様とか。や、やむをえんな。不本意だが――まあ立ち話もなんだ。入るがいい」

 え、いや。勝手に。と言う間もなく、全員部屋に入った。

 ロロとカオーソは、激しく対応を話し合っている。どうやら親父さんが連れ戻しに来るらしい。それをいかに撃退するか、という話のようだ。口を挟む隙はない、もし何か言おうものなら死ぬほど睨まれるだろう。

「は、はは。まあ、お茶でも」

 俺は豪徳寺さんと二人きり。何を話せばいいんだ、おい。

「結構きれいにしてるんだね、部屋」

「あ、ああ、まあ、一応」

 結構な間。

「え、ええと、カオーソとはいつから?」

「ああ、うん。一週間ちょっと前かな、初めて会ったのは」

「へえ。俺の方もそれくらいだったな」

「きっと一緒に来たんだね」

「うん。なんだかんだ言って、仲よさそうだし。喧嘩するほどっていうか」

「ね」

 それから何か話したかもしれない。よく覚えていない。たぶん主にロロとカオーソの話をしたと思うけど、内容は記憶にない。もしかしたらほとんど黙っていたのかもしれない。そして日が暮れかけたころ、

「私、門限あるからこれで」

 と二人は帰っていった。ちょうどその頃、対応の方も決まったらしい。

「当然貴様にも協力してもらうことになっている。失敗したらどうなるか――わかっているだろうな」

 はっきりとはわかっていないが、よくないことになることはわかる。幸い明日は休日だ、特にやることもないし、それに豪徳寺さんも来るかもしれないし。

 それにしてもそんなに親父さんが怖いんだろうか。俺にはよくわからない、うちの父親はほぼ母親の言いなりだから。なんとか穏便に済むといいけど。


「早く起きんか!」

 いきなりたたき起こされた。時計を見ると、まだ五時じゃないか。え、こんなに早くから?

「行くぞ、やつを迎え撃つ準備だ、急げ、グズが」

 どうやら、罠を張っておくということのようだ。親父さんにそんなことをしていいのだろうか。たしなめるべきなんだろうか、年長者として。だが、人間じゃなさそうなので問題ないのかもしれない。

 五分後、俺は巨大なミサイルランチャーを運ばされていた。

 いや、本当なんだ、十mはあるミサイルランチャーだ。部屋を出たらアパートの前の駐車場に置いてあった。全長五mのミサイルが四×四で十六発搭載されている。どうもこれも他人からは見えていないらしい。そして俺にもどうにか持てる重さなんだ。本当にぎりぎりだ、本当にぎりぎりだけど、なぜか持ててしまうんだ。

「あの、重いんですけど」

「早く運べ、亀が! そこの角だ」

「ああ、はい」

「カオーソのやつが向こうの家に被害を出したくないとのたまうのでな、貴様の家が本拠地となった。まあ、貴様の家など灰燼に帰しても問題なかろう」

 いや、大ありなんですけど。と思ったが、もうこうなったらなるようになれだ。

 ミサイルランチャーの他にも、キャノン砲や、レーダー、戦車、ガドリングガンなど、数々の兵器が所狭しと並べられた。というか俺が並べた。一つ運んだと思ったらいつの間にか次が現れていて、というのを繰り返し現在に至っている。ただいま朝の八時である。

「ぷはぁ、これで……。これで……終わり?」

「こんなものか、もう予算がない」

「おっ、準備万端じゃない」

 いつの間にか、カオーソがやってきていた。右手には死神のような大鎌を持っている。漆黒の柄には複雑な模様がぎっしりと彫られており、美しい曲線を描いた刃は朝日を反射してキラキラと光っている。

「ほう、貴様も本気のようだな」

「そりゃそうさ、オルオルもあれ使うんだろ」

「無論だ」

 ロロが左手を高く掲げると、魔法少女が持っているような可愛らしいステッキが光の中から現れた。先の部分についた真っ赤な宝石の周りを、シルバーのリングがくるくると回っている。

「へえ、かわいいね」

「かわいい……だと」

 とたんにロロの表情が曇った。

「このダミナシオンをかわいいと言うか、痴れものが。一振りすれば星一つ消し去ることすら造作もない、神すら恐れる古の超兵器だ。愚鈍な貴様にはわからないだろうがな。なんならこれで今殺してやろうか、塵も残らずにな」

「あ、ああ、ごめん」

 ともかく、親父さんはまだ現れないようなので、三人でアパート前の道路に座って待つことになった。

 まだ朝早いので、夏といえども暑すぎず暖かい、いい陽気だ。

「あ、そういえば、豪徳寺さんは?」

「危ないから家に置いてきたよ、当然だろ」

 まあ、よく考えてみればそりゃあそうだ。なんで俺、期待してたんだろ。


 四~五分ほど経っただろうか、小学校高学年くらいのメガネをかけた女の子が通りかかった。塾に行くところらしい。と思ってよく見たら真実じゃないか、妹だ。小六で中学受験のために塾に通っているのである。

「来た! 全弾発射!」

 え、ちょ、ちょっと。俺が立ち上がる暇もなく、無数の弾丸とミサイルと砲弾とその他もろもろが爆音とともに発射され、一直線に真実に向かっていった。

 激しい金属音と爆発音、火薬の臭い、閃光と真っ黒な煙。そして……静寂。

 あああ、もうだめかも、俺のせいかもしれない、やってしまったのかもしれない。やっぱり止めるべきだった、人の命は重いものだと教えるべきだったんだ。それなのに、俺は……、流されて……。

 徐々に煙が晴れてきた。

 そこに真実は無傷で立っていた。さっきと全く同じ表情でこちらをじっと見ている。

 そうか、そういえばそうか、だって他の人からは見えないし触れないし聞こえないんだった。もちろんこの立ち込める硝煙の臭いも真実にはわからないんだ。

 周囲をよく見ると、隣近所の家屋も全くの無傷であった。

「ちっ、やはりだめか、いくぞ!」

「よっしゃぁ!」

 すぐさま二人が、真実めがけて突っ込んでいった。

 そして真実をすり抜け、その背後にいる何者かと激しい戦闘を繰り広げ始めた。

 巨大な光の玉が、周囲から落ちてきては大爆発。その中で鋭い刃が殺戮のワルツを奏でている。相手の動きはわからないが、二人がやられている様子はない。優勢ということだろうか。二人とも攻撃の手を緩めることなく、猛スピードで様々な攻撃を繰り出していた。正拳・裏拳・回し蹴り。光線・炎・衝撃波。

 だが、しばらくすると二人は空中で動かなくなった。敗北らしい。

 すると、真実が近づいてきて、顔面に頭突きを食らわしてきた。

「いてっ、なんで」

「すみません、豊さん。この方に頼まれましたもので」

 真実は俺を豊さんと呼ぶ。そんな関係なのだ。妹と兄の禁断の関係なんて遠い夢の世界。抱きついてきたり、甘えてきたり、お兄ちゃんのお嫁さんになる、なんてことは一切なかった。現実はこんなものだ。

 それはそうと急に暗くなったんだが。曇ってきたのか? と視線を上に向けると。

 真実の背後には三m程の巨人がいた。ウェーブのかかった真っ赤な長髪をなびかせ、金剛力士像のような表情をした半裸の巨人が、丸太のように太い腕で二人を両脇に抱え、悠然と立っていたのだ。あれだけの攻撃にも関わらず、ダメージを受けた形跡は一切ない。むしろエネルギーに満ち溢れ、これから黄金のチャンピオンベルトをかけた戦いに赴く世界王者のように、堂々とした姿で仁王立ちしていた。

「どうやら、うちの二人がご迷惑をおかけしたようで」

 巨人は、顔に似合わない甲高い声で言った。

「い、いえ、そんな」

 俺は紳士的な態度に意表をつかれ、硬い表情ながらも半笑いで答えてしまった。

「では、私は塾がありますのでこれで」

 と突然ぼそっと言ったかと思うと、真実はすたすたと歩き出した。基本的には結構かわいい顔をしていると自分の妹ながら思うが、今日も表情が変わることは全くなかった。こんな状況なのに。

 俺に頭突きした後、ずらりと並んだ兵器類と立ち込める煙を見たはずだし、硝煙の臭いもまだ残っていたはずなのに、まるでテレビのニュースでも見るような冷静さ。そもそもこの巨人すら全く怖がっているそぶりはない。

 まったくいまどきの若い者はわからないよ。

「ああ、すまないね、手間取らせて。ありがとう」

 巨人は真実に軽くお辞儀をして言った。

「いちおう万一に備えて付いてきてもらったんですよ。距離が離れると力が弱まってしまいますからね。まあこのくらいなら問題ありませんでした。寄り道をさせて申し訳ない思いですわ」

 そういう仕組みがあったんだ。知らなかった。

「では、この二人は連れて帰らせていただきますので、なにとぞご容赦ください」

 そんな、ちょっと寂しいな、そう思った。罵倒されてばかりとはいえ、結構仲良くなり始めていたから。せめて別れの言葉くらい、という気持ちが一気に込み上げてきて、巨人を呼び止めようとした。

「あ、あの」

 そのときだ。

「待ってー!」

 突然、豪徳寺さんが走り込んできた。

「はぁはぁ、やっぱり、はぁ、放っておけないって思って、はぁ、来たけど」

 激しく息切れしている、家からずっと走って来たのだろうか、となると結構な距離だ。

「ええと、あの子?」

 豪徳寺さんは、去り際の真実を指差して聞いてきた。

「ああ、うん」

 と答えると、豪徳寺さんは真実に走り寄り、ほっぺたにキスをした。ちょっとうらやましい。双子は感覚を共有しているという話があるが、兄妹でも今の感覚を共有できないものだろうか? 今だけでも。そう思ってほっぺたの感覚を必死に研ぎ澄ましたが、当然のことながら全く何も感じることはできなかった。

 豪徳寺さんは振り返って巨人を見ると一瞬驚いた表情をしたが、気を取り直して語り始めた。

「あの、私……、カオーソが来てくれて、すごくうれしくて。だって私、兄弟もいないし、友達はみんなすごく良くしてくれるけど、なんか一歩引いた感じで。だから、素直に何でも言ってくれるカオーソがすごく好きになったんです。最近は毎日楽しくて、こんなことって今までになかったから……」

 巨人はすでに号泣していた。見かけによらず、すごい涙腺のゆるさだ。

「どうか、連れて帰らないでくださいっ、もう少しいさせてください、お願いしますっ!」

 豪徳寺さんは頭を深々と下げた。心なしか、足ががくがくと震えているようだ。やっぱりこの相手に意見するのは相当の勇気が要るのだろう。でもっ、でもっ。

「おお、俺からもお願いしますっ。俺もロロのこと、なんていうか、うまく言えないけど、離れるのは寂しいです」

 俺もとっさに頭を下げた。体が勝手に動いたというか、無意識のうちに声が出ていた。きっとこれは本当の気持ちだからだと思う、俺も自分で驚いた。

 巨人はとめどなく溢れる涙をぬぐい、震えた声で言った。

「なんと、こんな未熟な二人では他人様に迷惑をかけるだけだと思い込んでおりました……。それがこんなにも好意を寄せていただいていたとは、わたくしは……感激であります!」

 そして、二人をそっと地面に下ろした。

「オーちゃん、カーちゃん、起きなさい」

 二人は目を覚まし、即座に正座した。

「お父さんに銃口を向けたことは反省しなさい。ですがどうやら他人様に好かれている様子。ここは大目に見てあげます。ここにいて構いませんよ。おーよしよしよし、よしよしよし」

 巨人は優しく二人の頭をなでた。二人は、ちょっぴり涙目になっている。

「でもたまには帰ってきなさいよ。お父さんもそれにお母さんも寂しいから……さ」

 と言い残し、巨人は去っていった。

「よかったな、二人とも」

 と言うと、ロロは

「ふん」

 と言って、部屋に入っていった。

「私たちも帰るね」

「うん。よかったね、豪徳寺さんも」

 自然と言葉が出た。

「うん、じゃあね」

 二人も帰っていった。後姿が心なしか嬉しげに見える。そういえば、いつの間にか兵器類は跡形もなく無くなっている。俺も部屋に戻った。

 ロロはぐっすり寝ていた。疲れたのだろう、無理もない。俺も朝早かったから眠い。結局その日は家でごろごろ過ごすことになった。

 夕方ごろ、ロロが、

「貴様、あ、あの……あ……いや……なんでもない……」

 と言った。

 ちょっと嬉しかった。

 といっても、俺は乗っかっただけだと言われれば、まったく反論の余地はない。ほとんどは豪徳寺さんの功績だよな。やっぱすごいよ。


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