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パンツ見学

 その日も俺はいつものように鳴り響く目覚ましを止め、買いだめしてあるパンを食べ、制服への着替えを済ませて、鞄を片手に玄関のドアを開けた。

 だが一つだけいつもとは違っていたことがあった。

 それは、ロロが俺の後を付いてきていたことだ。

「どうしたんだよ、いつもは寝てるのに」

「うるさい、虫けらが。わらわの勝手だろう」

「まあ、別にいいけど。あんまり人前じゃ話せないよ」

「貴様と話などしたくない。鼻血が両穴で止まらなくなって死ぬがいい」

 後を付いてこられると何となく気になってしまうが、あんまり気にしていると周りから変に思われるかもしれない。周りから見たら、俺一人なわけだからな。

 なるべく気にしないようにいつも通り歩いて、学校につき、教室に入った。

「おはよう」

 豪徳寺さんに軽く挨拶する。もう慣れたものだ。加藤はまだ来ていないようだ。いつも通りだな。

「ふん、いい気になりおって。ちょうちんアンコウのちょうちんの分際で」

 どういうことなのかよくわからないが、きっと罵倒されているんだろう。

「これが学校か。思ったよりも狭いのだな。それに誰もがやる気なさそうではないか。これで学問が身につくのか?」

 確かにそうかもしれない。でもまあそんなもんだろう、朝だし、試験前でもないしね。

「あら、須磨君、今日」

「あ、ああ、うん、ちょっとね」

 ロロのことは他の人の手前はっきりとは言えないわけだが、それがなんとなく秘密の関係のような感じになる。これはこれで悪くない、と思ったり。

 豪徳寺さんは、ロロににっこりと微笑んだ。ロロはちらっと見ただけだ。

「おはよ、スマホン。どうよどうよ、最近どうよ」

 加藤が突然背後からやってきた。

「スマホン? そう呼ばれておるのか? 貴様にふさわしい脳みその足りなそうな名だな」

 いや、スマホはすごいよ、いろいろできる。持ってないけどな。

「どうって、普通だよ」

「とかいって、結構機嫌よさげじゃない。俺なんてもうおっぱい不足がひどくてさ。どこかにトップレスの美少女が歩いてないもんかね、ほんと」

「こんなところで服を着ずに歩いている女などいるわけがなかろう。何を言っているのだこの男は。頭にカブトムシでも飼っておるのではないか? そうか、こやつが加藤とかいうやつだな。貴様の友達というだけあるわ」

 加藤の名誉のために一応言っておくと、これは冗談であって本当にいると思っているわけではないんだ。まあちょっとくらいは期待しているかもしれないが、本気ではないはずだ、たぶん。

「いねーよ」

 俺も突っ込んでおかないといけないと思った。ロロの声は聞こえていないわけだからね。でもなんのひねりもない突込みでごめん。そんな気にもなる。

 なんてことをしているうちに授業が始まった。

 するとロロは俺の右隣の席に腰掛けた。俺の席は教室の左の方なので、中央寄りということになる。もちろん俺の隣の席は突然の転校生に備えて空けてある、はずはなくクラス委員でちょっと硬いタイプの滝川さんが今日も元気に出席している。つまり二人重なっているのである。

 これまでもすり抜けることは何度もあったが、こうきっちりと重なっているのは初めてだ。ネトゲなどではよく見るけど、現実に見るとかなりグロテスクに見える。ひとりひとりはグロくなくても、二人合わさるとグロくなるとは摩訶不思議。1+1は2ではない、ということだろうか。滝川さんの顔の下半分から銀の髪の毛が生え、首の辺りに顔がついている。当然、手は四本で足も四本だ。ロロはあぐらをかいて腕を組んでいるが、滝川さんはきちんと座ってノートをとっている、という状態である。

 あまりじろじろ見ると滝川さんに変に思われるので自然体を心がけたつもりだが、ついつい横目で意識してしまうのを隠しきれたかどうか定かではない。


 授業中にも、ロロは何かにつけて授業にダメ出ししていた。

「ふん。知ったかぶりおって、昨日確認したばかりではないのか?」

「なんだその文字は。汚すぎてまったく読めんではないか」

「目に生気がなさ過ぎるぞ。生徒に絶望を教える気か」

「その服装はどういう意図だ。さしずめ若い女を意識しすぎているのだろう」

「早口すぎて聞き取れん。もう一度最初からやり直したらどうなんだ」

 まあ、俺も軽く笑いかけるのをこらえる場面もあった。


 昼休み、俺と加藤はいつものように学食に向かった。もちろんロロも一緒だ。

 Bランチを受け取ると、加藤と俺は向かいの席に座った。そしてロロは加藤の席に座った。

「食事には興味がない。退屈だ」

 ロロは普段から何も食べようとしない、食欲というものがないのだろう。ちょっともったいない気がする、おいしいものもたくさんあるのに。

 この前も、まとめて買ってきた袋づめのチョコレートをあげようとしたけど、結局食べようとしなかった。

「なんか俺の胸ばっか見てない? 俺のおっぱいでも見たいのかよ? おいおいしょうがないなあ」

 やばいやばい、ついロロの顔を見てしまっていた。ロロの顔は加藤の胸の辺りに突き出ている。

「なわけないだろ。いや、脱がなくていいから、まじで」

「ところでさ、前から気になってたんだけど」

「何?」

「最近おまえ豪徳寺と仲良くね? どこまでいってんの?」

「え、いや。どこまでって、別になんでもないよ」

「そうか? この前もなんか告白めいた感じで来てたじゃん。今日も親しげだったし。教えろよ~」

「そういうんじゃないよ、全然」

「ふん、白々しい。接吻したと聞いているぞ」

「いや、してないって」

「してない? 何をだ? してないって言うやつはたいていしてるもんだぞ、おい。もうしちゃったのかよ」

「違うって、ええと、違う。とにかくほんとに何もないんだよ」

「まあ、言いたくないならいいけどさ」

 まったく、ロロが急に喋るからつい答えちゃったじゃないか。びっくりした。それに実際してないのに、カオーソのやつ嘘を教えるなっていうんだよ。


 放課後加藤に誘われたが、どうにもロロが気になってしまうので「ちょっと用があるから」と断ってさっさと帰ることにした。

 それにしても今日はなんだったんだろう。なんで急に学校についてきたのか。これといった行動をとるわけでもなかったし、結局わからずじまいだったな。

「ええと、今日はなんで……」

「理由などない。しいて言えば貴様の恥ずかしい姿を見て、あざ笑ってやろうと思ってな」

「へ、へぇ。それでどうだった? 学校は」

「……つまらんな。わらわの知らぬことは教えんし」

「そっか。まあでも家で一人でいても寂しいし、たまには来てもいいけどね」

「寂しくなどあるか。貴様と一緒にするな。世界一のビビリが。アリクイに全身を舐められて死ぬがいい」

「世界一ではないと思うけど……」


 その日の夜、夕食の後テレビを見ていたらロロが突然言い出した。

「おい、つ、使ってもよいぞ」

「え、使う?」

「だからこれだ、無知な貴様が使ってもよいと言っているのだ。ありがたく思え」

「ああ、パソコンか」

 そういやあ、ずっと使ってなかったな。朝ちょっとメールチェックするくらいで、ロロが起きたらずっと使ってたもんだから。

「どうした? 早く使ったらいいだろう。ノロマが、早くせぬか」

「いやでも、別に今すぐ使いたいってわけじゃ……、アニメ見てるところだし」

「わらわが使えと言っているのだ。貴様は『あり難き幸せでございますご主人様』と言って、わらわに最大限の感謝をしながら嬉々として使えばよいのだ、早くしろ、このへっぽこ右大臣」

 なんか使わないと収まらない感じだし、仕方ない。

「あ、あり難き幸せでございますご主人様」

「うむ」

 久しぶりにネットをしたが、まあこれといって新しい発見はなかった。いつも漫然と見ているだけだったし、いざ使うぞ、となってもうおーっ、これだーっ、ってのはなかなかないよ。

「どうした、パンツは見ないのか?」

 そうか、それがあった。って、いや、でも、いいんだろうか。

「パンツを見たいのではないのか?」

「あ、ああ、でも。ロロに見られてるとなんか……」

「まったく面倒なやつだ。ではくそつまらぬテレビでも見てやる」

 そう言ってテレビを見始めた。ほんとにつまらなそうな顔で。

 そこまで言うならと思い、パンチラサイトを開くと結構更新されていた。この状況で楽しめるだろうか、なんて心配していたけど正直楽しんでしまった。俺のとってのパンツは日々のエネルギー、無尽蔵エネルギーなんだ、いつでも元気の源なんだ、そう改めて感じた次第である。本当なんだから仕方がない。

 一通り見終わってロロの方を見ると、ロロはテレビを見ながらぐっすりと寝ていた。やはりつまらなかったのだろう。

 でも、ありがと。心の中でそう思った。


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