届かない
「桃ーっ!!」
「ぉわっ。な、何。どしたの」
どっかーんと言いながら抱きついてきた親友を引き離す。
私より幾分背が低い彼女を引き離すのは結構容易だ。
見て、と言って卒業証書を自慢気に見せびらかす彼女に、拳を一発くれてやった。
「私だって持ってるよ」
「ウチ達、卒業するんだねぇ」
「無視かコラ」
会話を交わしながら、彼女が目を向けた方を見た。
卒業式が終わり、みんなは記念撮影やら何やらやっていた。泣いている子もいれば逆に笑顔の子だっている。
「よっ。どした? ぼーっとして」
「え? あ……、辰馬」
とんとん、と私の肩を叩いてきたのは悪友の工藤辰馬だ。可愛らしい童顔にその学ランはミスマッチだ。そんな事言ったら睨まれそうなのでやめておくが。
――そういえば、と思って親友を探してみると担任の先生と写真を撮っていた。くそ、こんな時に。
「辰馬こそどうしたの?」
「あー、佐伯が私立のとこ行くって聞いてな。柄じゃねえけど……頑張れよ」
「あ、ありがとう」
辰馬の笑顔に、後ろに隠した手紙を握りしめた。そんなの、ずるいよ。
「じゃな」
「あ……! 待っ、」
今手を伸ばさなかったら二度と辰馬には届かない気がして、伸ばした手は
空を切った。
駄文申し訳ないです。これが初投稿なもので…。
わがままですが、温かい目で見てくださると嬉しいです。