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1-3、勇者リの意志

 邪険な雰囲気を醸し出しながらギルドへと向かう二人。


 カランコロン。


 ギルドはどこか賑やかだ。

 一人の少年が地べたに座り込んでいた。どこか泣き出しそうな様子だ。

「"バム"はパーティには要らないな。」

「そんなこと言わない……でよ。」

 いかにも強そうな男が笑いながら見下している。片手には酒の入ったジョッキ。豪快に飲み干す。

「ずっと足手まといだったんだ。物にバネをつけることしかできないお前に何ができるんだ? ピョンピョン跳ねててウザイし、丁度良かったんだ。」

 両隣りにいる踊り子と魔法使いの二人の女性が笑い飛ばしている。

「あたしらは最上位のS級冒険者なのよ。お荷物を抱えている余裕なんてないの。」

「Eランクからはじめたら……?」

 それを聞いた男が「な、もう誰もお前を仲間としちゃ見ていねぇよ」と付け加えていた。


 そこに一人の眼鏡をかけた魔法使いの男がやってきた。


「こんにちは。バムさんが抜けて下さったお陰でこのパーティに入れました。バムさんには感謝しています。」


 笑顔で見下していた。


「こいつ、元々A級冒険者パーティーのリーダーやってたんだぜ。お前より遥かに役に立つ。聞くけどさー、バムはこいつに勝ってる所あるの?」


 それを聞いて、高笑いされる。

 それを受けて周りにいる人々に伝播し、ギルド内は笑いで溢れていった。

 バムは半泣きで立ち上がり、ギルドの出入口へとトボトボ歩いていった。


 その途中で片腕がそれを止める。

 彼が見上げた先には如何(いか)にも勇者らしい人が立っていた。


「バム君。もし良ければなんだけど、俺の仲間になってはくれないか?」


 少しの……沈黙。


「僕はパーティから追い出される程に弱いんだ。だって、僕、バネを出すことしかできないし……。こんな弱い僕なんかを仲間にしない方がいいよ。」


 それを聞いて笑っていた。


「そんな卑下(ひげ)することはないぞ。アンタは強い。それをこいつらは知らないだけだ。」


 そこにオラついた男が勇者リに近づく。


「おいおいおいおい。見ない顔だなぁ。こいつが強いってぇ? 馬鹿言え。こいつは弱ぇんだよ。いい加減なこと吹いてるとやっちまうぞ?」


「やれるものなら? まあ、キムティムじゃ俺に勝てはしないよ。」


「どうして、俺様の名を知ってる。(つくづく)気持ち悪ぃ野郎だなぁ。まぁ、いい。俺に勝てないと言いやがったからには覚悟しとけよ。今からお前をボコボコにしてやるよ。ただ、今なら土下座すりゃあ、許してやる。」


「する必要がないな……。」


「あぁん?」


 その喧嘩早そうなキムティムという男が距離を取って、両手を前に出した。


「後悔しても知らねぇぞ。」


【キャノン――!】


 腕に小さな大砲が現れた。その大砲がリを狙う。


 ドガァァン!!


 思いっきり発射された砲撃がリを襲う。


【リフレクト】


 さっと右手の手のひらを向けるとその砲撃は反射され、キムティムを襲った。あまりのクールな動きに余裕さを感じさせる。

 

 吹き飛ばされたキムティムは死にかけた表情を浮かべている。


「何が……起きたんだよ。」


「アンタの攻撃を普通に跳ね返しただけだ。で、まだやるか?」


「く、くそぉっ! 何(もん)なんだよ、おめぇ!」


「俺は、勇者……らしい。この世界では。」


「な、お前ぇが最近現れたっちゅう、勇者なのか。す、すまねぇっ!」


 態度が百八十度変わる。それを何事も無いように振る舞っていく。


「安心しろ。俺は気にしてない。それよりもキムティム。仲間にならないか? 一緒にいりゃ、酒が上手くなりそうなんだ。すぐにとは言わねぇ。二日後、北門の十時に俺は町を出る。その時に、答えは教えてくれ。」


 そして、勇者リは彼の仲間と思しきぱっとしない眼鏡の男と上半身裸体の男の二人に声をかける。


「クエストロンとカリュウも一緒にどうだ? 実は、神のお告げでオススメされてたんだ。」


「その誘い、前向きに考えておこう。」

「お、オイも!」


 今度は受付へと向かい、


「ケレナさん――」とギルド嬢を仲間入りのために口説き始めた。


「おい!」


 ブチギレるコンン。

 力強い足取りで出入口へと進んでいく。


「どこ行くんだ?」

「少し野暮用ができた。」


 彼はどこかへと行ってしまった。

 勇者リは再びギルド嬢ケレナの方を向いた。


――――――


 リはパーティ追放されて身寄りのないバムを連れて協会へと向かった。


 二人はそこに入る。


 太陽の光を薄くさせるステンドグラス。淡い光がどこか儚いような淡い空気を作り出している。

 そこに立つ牧師スルタナをリが誘う。

「誘われたからには精一杯、神の加護を与えられるように頑張ります。」

 さらに、シスターのセーナを誘う。

「わ、わたくしがですか?」

「駄目……か?」

「い、いえ。あなた様が良ければ。」


「では、私は旅の準備をします。セーナは一緒に着いていきなさい。」


 協会を出る三人――リ、バム、セーナ。 



 しばし歩くと町が何やら騒がしい。

 どこかで「泥棒だっ!」という声が轟いていた。

 リは少し路地裏に入る。

 何やら怪しい女がいた。


「盗賊――朱色のシュナ。また盗みでも働いているんだな。」


 それを聞いた女がパッと動いて小刀を勇者らに向ける。


「誰だ。アンタら。捕まえに来たってんなら、殺すよ。」


「大丈夫。安心して。俺は捕まえにきたんじゃなくて、仲間に勧誘しに来た。」


「はぁ?」


「神のお告げだ。アンタを仲間にしたくなったんだ。二日後、北門、十時。その気なら、そこに来い。」


「ふんっ。仲間になってやる訳ないでしょ。」


 その場からシュッと消えた。少し見上げると瞬間移動の速さで屋根を走り回っていた。


「仲間に誘えませんでしたね」とセーナ。


「そうでもないよ。」


「どういうのとでしょう?」


「シュナはツンデレだ。」



 その裏路地を進んでいくと、怪しい場所に辿り着いた。


 一目見れば分かる。人身売買が行われている。

 ステージに置かれた檻の中には鎖に繋がれた女がいる。


 怪しい雰囲気が漂う。

 少し吐き気すら催すような地獄がそこにある。


 リは黒ずくめの人から札を貰う。

 そう、オーディションに参加したのだ。

 魔物や動物が売られていく。ついに、人間も売られはじめた。


「目玉は踊り子のタンコです。さあ、買った買ったぁ!」


 挙げられる札。リもそれに合わせて挙げる。

 餞別(せんべつ)だとしても国王から貰った財力。リの金の力には誰も勝てはしなかった。


 裏口へと進みタンコを買い取る。

 そして、


「売人のソルクにお願いがありまして。」


「何かな?」


 少し太った大柄な男。見るからに欲にまみれた醜悪さがある。


「仲間になって頂きたい。実は俺は勇者です。勇者の仲間となり、魔王を倒した暁には、不労所得の富を得られるはずですよ。もし仲間になって頂けるのであれば、二日後の北門、十時に落ち合いましょう。」


「かしこまりました。」


「それと、貴方のとっておきのスキルは人材派遣。もし仲間になって頂けるのであればチョウガンとツツッツを手配して頂きたい。タンコもその時に、でいい。」


 そう言って、その場を後にする。



 セーナがずっとぷんぷんと怒っていた。それをバムが(なだ)めている。ようやく会場を出て、外の風を浴びながら彼女が口を開く。

 

「失望しました。どうして、あんなクズを仲間に誘うんですか。仲間として強いからって、勇者さんも同じクズなんですか?」


「一つだけ訂正するけど、アイツはそんなに強くないよ。多分、旅じゃ役には立たないかも。」


「じゃあ、何故あんなクズを仲間に誘ったのでしょうか? 納得いく答えをください。」


「一人でも多くの不幸な人を救い出したり生み出さないためだ。何もしなければソルクは変わらず人身売買を続けるだろうな。けど、仲間に誘ったことで奴隷として過ごしていく羽目(はめ)になったタンコ、チョウガン、ツツッツは自由になれた。魔王討伐した時には、ソルクはもう奴隷売買に手を染めないだろう。捕まる危険を犯してまでやる必要性もなくなるからな。」


「だからって、あんなクズにいい思いをさせるなんて。奴隷にされた人達の事を考えると胸が苦しくなる。」


「それで幸せになれる人が増えるのか? 潰そうとした所で潰せる訳じゃない。わざわざ敵対した所で誰も得はしない。なら、クズがいい思いをするかも知れなくても、より不幸の生まれない代替案を出せる方が素敵だと、俺は思うけどな。」


「私はそうは思わない!」


「どっちにしろ綺麗事でしかないんだ。なら、俺は俺の信じた道を行く。」


 未だに納得していなさそうなセーナ。

 しかし、リはそのまま宿へと向かった。


 


 約束の日。北門外――十時。


 沢山の旅の準備万端な人達がそこで待っていた。やる気が溢れ返っている。


「よしっ、みんなで行けば、魔王だって怖くない!」


 勇者リは高らかに宣言した。


 が、そこにコンンが馬車を引く運送屋を連れてやってきて、


「いいや、そうは行かない。ここから先は馬車で進む。この馬車小屋に入れる人数しかこの先には進めない。」


 驚きがそこに広がる。

 無言になったリ。しかし、力強く握った拳を震わせながらも、大きく口を開いた。


「分かった! 今は数名で旅をする。だけど、金を得て、馬車を沢山買って、みんなが乗れるようにする。だから、みんな、少しの間だけ待っててくれ。かならず迎えに来る!」


 それを聞いて、「まあ、それなら」と多少の頷きが見られた。


「ひとまず先発の仲間を発表する!」


 リは大きな声を挙げる。


「バム!」


 パーティ追放された少年が笑顔で近づいていく。


「アリナ!」


 女騎士が照れ臭そうにしながらゆっくりと歩いていく。


「ケレナ!」


 ギルド嬢が可愛子ぶって進んでいく。


「シュナ!」


「ふんっ。仕方ない。行ってやってもいい。」


 盗賊の彼女は仕方なーく馬車へと向かうが、その足取りは軽い。


「セーナ!」


「……。まだ、あの件、根に持ってますから。」


 シスターは暗い表情で進んでいく。


「タンコ!」


 ソルクから買い取った踊り子がお淑やかに進んでいく。


 そこにリとコンンが加わる計八名。彼はコンンの耳元で「ハーレムなら問題ないだろ?」と囁いた。


 軽く舌打ちの後、「イカれた奴め」と放たれた。



 馬が運送人によって鞭を打たれ、荒野を進む。

 残された人々が手を振っている。遠くなっていく彼らに向かってずっと手を振るリ。

 

 それなりに距離は開いていく。


【コレクション(ゼロ)――浮遊】


 突然、コンンが外に出た。コンンが片手で作る丸。彼は空を浮きはじめた。


【コレクション(ハチ)――ロックオン】


 両手にその丸を作る。それを横から真ん中へと持ってきて眼鏡のような形にし、さらにそれを縦に向けて八の字にした。


 今度は右腕を真っ直ぐに伸ばす。


【コレクション(イチ)――時空斬】


 横に向かって一振。


 門の付近で手を振っていた人達。

 今はその人達は下半身しか残っていなかった。悲しくも上半身は地面に落ちていた。


「安心してください。このシーンはオフレコですから。彼らは魔物に襲われて死んだことにしておきます。」


 馬が止まる。


「おい。何をしたんだ!」


 とてつもない怒号。勇者リはこの世界で初めて強烈な怒りを見せた。


「簡単なことですよ。あまりにもネームドキャラが多いので読者離れする前に殺しておいたまでです。これで見る側は沢山の名前を覚えずに済みますからね。逆に、掃除した私を褒めて頂きたい程だ。」


 止まっている馬車から飛び降りたリと空を浮いているコンンは睨み合っていた。

需要があれば続けますが、なければこれで打ち切りです。ここまでお読み頂きありがとうございました。

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