1-2、勇者リの仲間集め
「ここは魔物が蔓延り、魔王の脅威に人々が震えて暮らす異世界。驚くなかれ、あなたは交通事故でこの異世界へと転生したのです。実は私も異世界転生者なのです。私は神のお告げにより現れる魔王を討伐する勇者をお待ちしておりました。そして、そのお告げの勇者こそあなたなのです。」
コンンの丁寧な説明。これは誰のための説明か。――それはこれを第三視点から見ている観客に向けた説明である。これが物語を進めていく上での最初の説明だ。
「ひとまず勇者の戴冠のために王宮へと向かういましょうか。」
二人で風が心地よい草原を歩いていく。
ゆったりと進んでいくとゲームの中でしか見たことのない緑色の人型の魔物――ゴブリンが現れた。手には棍棒を持っている。
「魔物が現れました。魔物は放っておくと人類に危険を及ぼす存在。ここは倒して起きましょう。では、リさん。武器をお貸しします。」
勇者リは短剣を手に入れた。
「では、早速戦いますよ。この異世界はターン制ではなくリアルタイム制となります。しっかりと体を動かしていきましょう。」
ゴブリンが棍棒を振り回してきた▼
それを体を捻じって避ける。そして、サッと踵を返し魔物の方向を向く。
勇者リの攻撃▼
【略奪――】
「はっ。悪ぃなぁ。ちょっと奪っちまった。」
ゴブリンの手からパッと消える棍棒。その棍棒はリの右手にあった。
そのままゴブリンの所へと駆け寄って、棍棒が横に思いっきり振られた。
ガッ!!!!!!!
思いっきり飛ばされる魔物。しかし倒しきれていない。
【リピート――】
まるで逆再生をしているかのように時間が巻き戻される。ただし、巻き戻っているのは魔物だけだった。
今度は思いっきり棍棒を縦に振るう。ゴブリンは先程の殴られる前の位置に戻された。そのタイミングで攻撃が与えられる。
ゴガッ!!!!!!!!
懇親のダメージ。
ゴブリンが泡のように消えていく。
それを見たコンンが笑顔で拍手を浮かべていた。
「コングラチュレーション。素晴らしい戦いぶりでした。やはり、貴方こそが神のお告げ通りの勇者。私もあなたの活躍に一躍買いたい。そこで勇者の旅に私も着いて行くことに決めました。これから、よろしくお願いしますね。」
リはそのお世辞を作り笑いで受け入れる。
やる気ないような足取りでザッザッと雑草を踏みしめて進む。
巨大な壁がはばかる。
その壁には通路があり、門番が立っている。
「なっ、彼があの勇者様なのですかっ。おっ、おっ、お通りください!」
門番がたじろぎながら膝を着く。
その横を通り過ぎる。過ぎた後に振り返れば再び凛々しい顔で背筋を張って立っていた彼らが見える。
――――――
玉座に着く国王。あからさまな装飾にこれまた煌びやかな王冠。
「そうか。オヌシが選ばれし勇者か。この世界は今も魔王に脅えて暮らさなければならない。平和のために魔王討伐に行って貰おう。よいか?」
「ええ。お任せ下さい。」
跪いた体制をやめて、その場から離れる。しかし、途中で立ち止まる。
彼は突然、そこで待機していた騎士に向かって大声で言う。
「神のお告げで俺はお前のことを知っている。騎士アリナ。俺らと一緒に旅して欲しい!」
その言葉に周りにいる騎士や貴族がざわめき始める。
「な、な、な、何を言っておるのだ。ば、ば、馬鹿を言え。わ、わ、私は下級騎士だぞ。それに私は女。戦いの役にはたてぬ。」
赤面して早口になる騎士。
「問題ない。それどころかアリナだからこそ誘ったんだ。」
「お、う、ぬ、ぬ、ぬぁー!」
理不尽に投げ飛ばされるリ。
すぐに戻って何事も無かったように振る舞う。ただ、頭にでっかいタンコブがついている。
「急にとは言わない。三日後、俺はこの町から旅立つ。もし行ってもいいなら、北門の十時で待ち合わせよう。」
さらりと言い、今度は近寄ってきた厳つい大男の騎士に声をかける。
「騎士団長イルツさん。この旅にはあなたの力が必要です。どうか共に旅に出てお助けを。」
彼は驚いた表情を見せた。そして王の方を向いていた。それを見て、リは何かを察する。
「町の警備の問題もあるから、今すぐとは言いませんが、三日後の北門、十時にできるかどうか聞かせて欲しい。」
「分かった。できるだけ尽力いたそう。」
リとコンンの二人は王宮を立派な歩き姿で去っていった。
――――――
武器屋へと来た二人。
銀でできた剣や斧、盾などがずらっと並んでいる。それを見ている様子を大柄の店主がニコッと微笑みながら見守っている。
ギラギラと輝く純銀のソード。王から頂いた勇者への資金を叩いて購入する。
鞘を腰におさめる。
勇ましい姿となった。
去り際、勇者リは武器屋の鍛治職人を口説く。
「ウンガンさん。是非、仲間になってください。」
アリナやイルツ同様、三日後に返答しに来て欲しいと伝えた。
武器屋を出てショップへと向かう。
コンンは邪険な雰囲気を醸し出していた。二人パーティの雰囲気はとっても悪かった。無言で町を進む。
ショップにて、薬などを調達した。
今度はショップの商人に「エキルドさん。是非、仲間になってください」と勇者は口説いた。もちろん、定石通りに返答を三日後にする。
――――――
宿に辿り着く。
店主のおばさんに向かって「サドラヌさん、仲間になってください」と頼む。そして、宿へと進んだ。
木でできた部屋は自然の匂いが漂う。最低限の暮らしができるアイテムが揃っている。
「ようやく、ここからはオフレコだ。」
突然、コンンがリを蹴り飛ばす。
吹き飛ばされた彼はベッドへと飛ばされた。そのまま裸足を顔付近へと近づけた。
「ふざけてんのか。てめぇ。」
それは丁寧な物言いの先程までのコンンとは違う、荒々しい態度のコンンだった。
「流石に堪忍袋の緒が切れるわなぁ。何が『リ』だ? そんな名前の奴いねぇだろ。あろうことか今度は無駄に仲間を増やそうとしやがって。二人ぐらいまでならいい。騎士二人を仲間にするのは良案だと思ったが、それ以降はなんだ? 鍛治職人、商人、挙句には宿の店主だと? ふざけるのは大概にしろよ!?」
思いっきり腹を殴る。
その時に振り下ろされた腕を掴んで、抵抗し、今度は上下の位置が逆になった。
「ふざけてなんかねぇよ。配信するまでの間にこの町にどれぐらい滞在してたと思ってるんだ? あんたらのために時間を巻き戻して今まで築いた関係をリセットすることを受け入れたんだ。けど、やっぱりな、大切な仲間には違いねぇ。俺は大切な仲間と一緒に冒険したいんだ。それが何人になろうとな。」
コンンの抵抗。ベッドから転げ落ち、またもや上下の位置が逆転した。
「観客――つまり、見る人のことを考えろよ。一気に沢山のネームド――名前付きのキャラ――が出て見ろ。覚えられる訳ないし、余計な混乱を起こすだろ? 視聴者はなぁ、そんなとこに頭は使わねぇんだよ。だから、モブでいいんだよ。そういうのは。」
「いいや、嫌だね。あいつらをモブのままで終わらすのは……。あいつらが許しても俺は許せねぇ。」
「ほんとっ、ふざけんなよ。そんなわがまま認めりゃ、見る人はすぐ離れてく。特に最初が一番大事なんだよ。分かってんのか。お前はテンプレ通りに動けばいい。それだけで顧客は着いてくるし、お前だってスターになれる。手術代も稼げて、現世に戻れた際には世界的スターになってる。欲しくねぇのか?」
「地位や名誉は欲しいよ。もちろん。だけどさぁ、あいつらの事は無視できねぇんだよ。俺は!」
立ち上がり啀み合う。
そこにドアのノックの音。
店主だった。彼女は特別に勇者とその仲間コンンの服を持ってきたのだ。
一時的に対立は中断。彼女のためにと服を着る。
勇者の服。
「似合ってるわ! 素敵よ!」
勇者リは凛々しい光を放っていた。
一方で、コンンは黒っぽい服をまとっていた。




