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流水

「いきなり走りだすからどこへ行くのかと思いましたよ〜」

セントは両手両膝を地面につけて項垂れる俺に声をかける。

「社不ニートで頭までおかしいんですか〜、手に負えないですね〜」

いや、頭おかしいから社不ニートなのかと呟きながら一人考えているセント。

変わらず四つん這いで地面を眺める。

(どうしてこんなことになったんだ・・・)

(どうして・・・?)

立花の顔が浮かんだ、立花がトラックに轢かれる瞬間を思い出した。

(そうか、俺は・・・)

立ち上がり、振り向く。

セントは俺の顔を見て笑った。

「あれ〜、急に顔つきが変わりましたね〜、なんか、覚悟が決まったって顔してます」

「さっき言ってた軍って俺も参加出来るのか」

なんのために飛ばされたのか、あの金髪女は言ったはずだ、見てくればいいと。

世界史の知識は無いが、軍という言葉が引っかかった。十字軍の軍と何か関係があるのではないかと。

ダメ元だが、軍に参加できれば何か見えるもの、元の世界へ帰った時に教えられることがあるかもしれない。

「できますよ〜、ちょうどセンチョーに呼ばれてたんです〜、教会へ行きましょ〜」

そう言って教会へ歩き出すセント、俺は頷きついていく。

すれ違う時、セントの口元がニヤッと笑った気がしたが、気のせいだろうか。


教会まではさっきまでいた銭湯から見える位置にあり、徒歩で2分もかからない位置にあった。

大通りに面していて、周辺は小さな民家やお店があるが、閑散としていて人一人いない。

「不気味だな、こんな人いないもんなのか?」

「その理由はすぐ分かりますよ〜」

セントは軽い足取りで前を行く。

「はい、とうちゃく〜」

着いたと同時に教会の扉を開くセント。

扉が開いて目に飛び込んできた光景に俺は絶句した。

教会の中にはびっしり人がいて、一人を除いた全員が同じ方向に向かって土下座をしている。

ほぼ全員が土下座をするその先には両手を胸に置き、目を瞑り天を仰ぐ女性がいた。

(不気味だ・・・)

異様な光景に気味の悪さを感じていると

「なんですかあなたたちは!」

さっきまで天を仰いでいた女性が俺たちに気づいたのかこちらを指差しそう言った。

「あ、こんにちは・・・」

少し怖気付きながら挨拶をする。

土下座をしていた100人ほどの人達もこちらを振り向いていた。また、見渡す限り皆女性だった。

3秒ほどだろうか、沈黙による静寂が教会内を支配していた。

その沈黙を打ち破ったのはセントだった。

「みなさ〜ん、安心してくださ〜い、この人はおっぱい派の人間ですぅ〜」

「は?何言ってんだお前」

バシュッ!!

そう言った瞬間俺の頬を何か鋭い物が掠めた。

後ろを見るとナイフが教会の扉に刺さっている。

「おっぱい派じゃないのか?」

長い黒髪を後ろで縛った白のローブに身を包む女がナイフを俺に突きつけ聞いてきた。

「・・・おっぱい派です」

この状況でお尻派だと言ったらどうなるんだろう、神田先生みたいな人間はこの場合どうなるんだろう、そんなことを考え硬直していると。

「おー、来たかお前ら」

肩にゴツい手が置かれる。

いつの間にか俺の隣にさっき銭湯で出会ったセンチョーがいた。

「おっさん!なんなんすかこれ」

女性しかいないこの状況で同性であるセンチョーに会えたのは嬉しい。

「誰がおっさんだ、俺はまだ二十歳(はたち)だ」

「痛い痛い!ごめんなさいお兄さん!いや、お兄様!!」

肩に置かれた手に力を加えられ俺は悶絶しながら謝罪する。

「センチョ〜、ここに私たちを呼んだ理由ってなんですか〜?」

セントに聞かれ「あぁ、そうだったな」と言いながら俺を解放してくれる。

「お前達を呼んだのは、これから聖戦に参加してもらうからだ」

「聖戦?」

「そうだ、みんな!よく聞いてくれ!俺たちおっぱい派の聖地、エロサレムがお尻派に占拠された!!」

「「な、なんだってぇぇぇ!?」」

教会内にいた多くの人が絶叫し、絶望する者もいれば憤怒し狂喜乱舞する者もいる。

「・・・もう帰っていいか?」

カオスな状況を前に俺は隣にいるセントに小声で尋ねる。

「いいわけないです〜、エロサレムはこの国にとって命より大切な地です〜、なので取り返しに行きますよ〜」

セントの目から絶対逃がさないという意志を感じる。

「いや、旅人なんだから俺は関係ないだろ」

「さっきの覚悟はなんだったんですか〜?」

「なんだったんだろうな、聞いてたらアホらしくなってきて覚悟なんざ忘れたわ」

「お前らいつの間にそんな仲良くなったんだ?」

俺とセントのやり取りを見てセンチョーがそう言う。

「どこがですか・・・ってか聖戦に参加するって、女性ばかりじゃないですか!危険すぎますよ!」

戦は男が行くものだと、なぜかそう考えるのがカッコいいと思っている。正しいかどうかなどどうでもいい。カッコよければいいのだ。

「あぁ、その通りだ、だから聖戦に参加するのはお前だけだ」

センチョーが俺の肩にポンと手を置きながら言った。

「・・・・・え?」

「せっかく貴重な戦力の男性を見つけたんです〜、逃すわけにはいきませ〜ん」

ニコッと微笑むセント。

「俺1人ですか!?ここら辺の地理全く知らないですよ!どこにどう行けばいいんですか!あと装備も何もないですけど!!」

「大丈夫だ、現地まで同行してくれるやつがいる」

センチョーはそう言いながらその同行してくれる人を呼ぶ。

「私がエロサレムまで同行いたします、名はフェイト、よろしくお願いします」

さっきナイフを投げてきた長い黒髪を後ろで縛った白のローブに身を包む女だった。

いかにも女騎士といった出立ちで、腰に据えた白銀の(つるぎ)がその様を一層際立たせる。

「戦地奪還の手助けをしてくださるお方だとは知らず、先ほどの無礼をお許しください」

頭を下げるフェイト。

「いや、別にいいんだが・・・」

「出発は3時間後だ、それまでにコイツの装備を整えてやってくれ」

そう言い残し、センチョーは教会を出ていく。

「申し訳ない、名を教えてはくださいませんか?」

「あー、俺の名前はコノエだ、いまいち状況が飲み込めていないが、よろしく頼む」

「コノエさんですね、こちらこそよろしくお願いいたします」

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