戦友
荒木の追い出された理由が少し明らかになりました。
「初めまして、荒木探偵事務所の荒木と申します」
アレンさんの話を聞いた後、こちらの荒木さんを紹介して貰ったのだが…
「初めまして、○○社でライターをしている三田と申します…」
そう言って名刺を渡した。
「詳しくウチの組長とお話してみませんか?」
とアレンさんに言われて、またまた冗談を…と思っていたが…組長だった。
アレンさんは高木組から荒木組に移籍したのだろうか?
とにかくここまでノコノコやって来た事に少し後悔していた。
アレンさんは美人局してたらしいからなあ。
俺も釣り上げられた口だろうか…
「あの…荒木さんは荒木くんの…お父さんで宜しいでしょうか?」
「はい、そうです。亘の父で、現在探偵をしております。」
組長じゃなかった…
でも、そう言われても信じられたと思うが…
「荒木くんは中々お若いのに優秀ですね。落ち着いてますし…」
「有難うございます。いやあ、まだまだで…あんなですが俺の跡を継ぎたいなんて言ってくれて可愛い所も有りまして。勉強に少し手伝わせてる次第でして…」
「成る程…荒木くん、亘くんは良い後継者になるでしょうね」
「すみません、下の名前で呼ぶのやめて貰えます?親族か好きな人以外には呼ばれたく無いんで。」
荒木くんが怒った…
荒木さんと荒木くんでややこしかったけど何か拘りあるみたいだ。
この年頃って難しいんだな。
娘しか居ないから分からないな。
この後は荒木さんと2人だけで話したいからと荒木くんとアレンさんには席を外して貰った。
「あの…アレンさんから高木組って名前が出て…実は俺、昔追ってたスクープが有りまして…」
○○○○○○○○○○
「何かヤバいかも…これ…」
「だなあ…何か…ゾクゾクするな…」
俺はたまたま寺元議員のスキャンダルの噂を聞き付けて張り込みをしていた。
今日はとある料亭で密会とタレコミがあった。
表向きは再開発の予定の地域の着手企業との意見交換会…
となっていたが、相手が明らかにおかしい。
時間をずらせて別々にやって来た面子…
1人は役職は確か警視長の杉田
その後やって来たのは高木組の幹部、目黒…
夢中で撮影した。
興奮していた。
これは再開発なんかの話だけでは無いのかも知れない…
お互いの私利私欲が色々絡んでいるだろう。
なるべく同じ日にやって来た事が分かるように撮影に気をつけた。
着物を着た迎える女のスタッフの顔が同じ事を強調させる為、引きの画角と、人物の顔が明確に分かるアップ、もちろん日時を画像に入れ込む設定もした。
動画で撮影したので、後で編集でいい場面を切り取る予定だ。
この密会の内容までは分からない。
しかし、この画像、映像をまず世に出して、第二、第三と取材、と徐々に暴いていく予定だった。
この密会のタレコミを教えてくれて、店の裏口に張り込んでいた藤間と興奮していた。
藤間も店から出てくる場面を此方から撮影出来ていた。
「これは凄い騒ぎになるぞ!」
「ああ!最初はどうせ寺元の不倫か何かかと思ってたが…」
「こりゃジャーナリズム賞も狙えるぞ!」
「かもしれんが、先ずはこの黒い関係の内容を暴く事からだぞ。」
「そうだな。俺達が切込隊長にならないと何も始まらないな!」
そう言って粗方記事をまとめて編集長に持ち込んだ。
「凄いな…これ、半年はこのネタで持ちきりになるぞ!与野党入れ替えも有るかも知れんな!早速今のトップネタ差し替えてこれ持っていこう!」
と、編集長の中野さんも鼻息荒くなっていた。
やっぱり皆、週刊誌と言う正統な新聞からは少し外れた、売り上げの為に不倫だの芸能界のスキャンダルだのピンクネタだのがメインで下世話なネタを扱ってはいたが、本来はこう言う社会派なネタに熱くなる。
この時は俺達は無敵だと思っていた。
○○○○○○○○○○
この話を第三者にしたのは初めてだった。
話ていると当時の熱い気持ちとその後に起こった現実を思い出して気落ちしてしまった。
アップダウンが激しい。
中年にはキツイ。
「成る程…俺は今はこんなですが元刑事で、暴力団対策課に所属していました。」
荒木さんはヤクザじゃなくてヤクザを追う人だった…
しかも元刑事…その顔面は役に立ったろう…
「俺は高木組を調べていました。そこで三田さんの言う関係を知ってしまいました。」
「成る程…荒木さんも俺と同じ状況に追い込まれた口ですね…」
「その通りです。俺もこの関係を見過ごす事が出来ず周りの忠告を聞かず深追いしていて結局排除されてしまいました。」
まさかこんな形で同じ様な脛に傷持つ同志に出会えるとは…
やっぱりミロは血を吸うだけで無く何か目に見えない能力でもありそうだなと思った。
「多分荒木さんは俺より内情を知ってそうですね。」
「かも知れませんが…恐らく全てでは無いでしょう。裏付ける証拠も持っていません。三田さんみたいな動画等も何もないです…」
「我々は相手の巨大な力を身を持って思い知りました。」
「ですね…でも…」
「はい。このまま知らなかった、見なかった事には出来ない。」
「その通りです。」
「いきなり真正面から向かうのでは無く…少し別方面から何かやってみませんか?」
「と言うと?」
「丁度、今いい依頼が来てまして…是非三田さんにも協力して貰えればと思うんですが…」




