血の契約
「先輩、それどうしたんですか?」
「んー、何か虫に食われた。痛いから貼ってる」
俺は手首に貼った四角い大きめの絆創膏をぼんやり眺めていた。
あの自分を吸血鬼と言った少年にやられた。
○○○○○○○○○○
「ははは、そんな事信じられる訳無いだろう。大人を揶揄うんじゃ無い。」
「文政12年はこの辺り大火事で大変だったよ。まだ寒くてさ。いくら吸血鬼でも焼けちゃったら死ぬし。日に当たれないから逃げるの苦労しちゃった。」
確か文政の大火、この辺り神田佐久間町で歴史的な大火事があった筈だ。
でもこんな事はちょっと調べれば分かるだろう。
でも…
さっきチラッと見えた牙が気になる…
日に当たれないの言葉通り、アルビノみたいな白子とは違う。
日に全く当たってない白さだ。しかも男の子でこの年頃…色が白すぎる。
「吸血鬼…だったらやっぱり血を吸ったりするのか?」
「まあね。血がないと生きていけないし。」
「ここで…獲物とか待ち伏せてんのか?」
「ふふふ、まあね」
こりゃ不良も逃げ出すわな。
有る意味オバケより怖い…
て、俺こんなガキの戯言何信じてんだ…
中年なのに。
でもやっぱりこの時間、この容姿で信じそうになってしまう…
「普通にメシとかは食わないのか?」
「食べることは出来るけど美味しいとは思わないかな。人のフリするために食べる事はあるけど」
「成る程な。」
「オジサン、僕に血を少しくれない?」
「…こえーな…まだ死にたくない…娘もまだ学生だし奨学金も残ってる…」
「舐める位でいいの。死ぬまでは吸わないから。」
「やっぱり吸い尽くしたら死ぬのか?俺」
「そうだね。でもオジサン良い人そうだし、死んじゃったら娘、可哀想だし。」
「舐める位で足りるのか?」
「うん。その代わり定期的に舐めさせてくれない?そうしたら他の人襲わない。」
「まあ…それ位なら…他に被害者出さないなら…」
「有難う。お礼に何かしてあげるよ。何が良い?」
「うーん…そうだなあ。今は家族も娘だけで、娘も忙しくて話す相手もいないから、俺の話し相手にでもなってくれ。」
「いいよ。分かった、オジサン」
「俺は三田さんな。オジサンだけどさ。」
「ふふふ。僕はミロ。」
「なんか飲み物みたいな名前だな…ミロな。」
「交渉成立だね。じゃあ三田さん、手首出して?」
「…」
マジで怖い…
ミロの気が変わって吸い尽くされて死ぬんだろうか…
「っ、」
動脈から少し離れた手首の内側に牙を立てて出てきた血を舐めた。
何だか夜の街灯に照らされた青白く細い少年が赤い舌を出して血を舐める光景は淫美だった。
「有難う。三田さん、タバコとかはやらないでね。不味くなるから。」
「酒は良いか?生き甲斐なんだよ。」
「沢山は飲まないでね。ふふふ」
「分かった。」
「じゃあ、もうすぐ夜明けになっちゃうから今日はこれでね。次回は来月の同じ日の2時にここでね。来ないと誰か襲っちゃうからね。ふふふ」
「…分かった…」
「じゃあね、三田さん」
そう言ってミロは立ち去った。
○○○○○○○○○○
「なあ、立川、吸血鬼っていると思うか?」
「先輩…どうしたんですか?疲れてます?」
まあ、それが普通の感想だよな。
「いや、何でもない。オカルト記事読み過ぎたかな…立川はあの後どうなった?」
「もう、大変でした…上にスゲー怒られるわ散々ですよ。泣きそうです。」
「まあなあ。ネタバレは地雷だからなあ。」
「特にアニメガチ勢は怖いですよ。下手したら俺の個人情報晒されるんじゃないかってビクビクしてます。」
「アニメでも特に鬼滅の牙は下手な事書いたらヤバいぞ。他もジョンプ系は気をつけろ。」
「俺、好きだからつい熱が入っちゃって。反省してますよ。」
「まあ所詮俺らはコタツ記事でも書いてりゃ良いんだからさ。熱意もやる気も期待されてないからな。その期待には応えようぜ。」
「…はい…」




