欲求
夕食にルディアさんは温かいシチューを作ってくれた。
ブラックランはまだマシだけど、この世界ってすごく寒かった記憶があるから温かいものは有り難い。
「勇者様の残してくれたレシピで作ったから美味しいでしょう?」
「はい。体が温まります」
ちょっと懐かしい味がするのは気のせい?
ピロンって食神様からのいいねがもらえたのは食事したからかな。
ルディアさんと夕食の後片付け。それにしても…
空腹と満腹っていうのをようやく体感できた。お腹いっぱい。
(設定がちゃんと反映されたようじゃの)
まさか…アッチの欲求も?
(当然じゃ!)
なくてよかったのに…。
(何を言うか! 人間、欲求が無かったらだめなのじゃ!)
「シルビアちゃん、後片付けはもういいからお風呂入ってらっしゃい」
「は、はーい!」
この家も私がMODで改装したのが反映されてるから地下にお風呂やサウナがある。
ゲームとはいえ、アンデッドのいるダンジョンとかに入った後にさっぱりしたくて追加した要素だ。
「はふぅ〜…お風呂最高…」
(いいのう…)
ロリ神様のところにはお風呂ないのです?
(そういう訳ではないんじゃが、欲求を抑制しておるから、満足感も薄いんじゃよ)
あー…だから欲求は大事って言ってたんだ。
(うむ。世界の管理をする側としては、欲求に振り回されておったらやりにくくての)
なんか急にロリ神様が身近に感じました。
(それは喜んで良いのか、悩むところじゃの)
でも、なんだか神様特有の悩みって感じですね。
(まぁ、そうじゃな。我の事はもうよい。 それよりお主はこれからどうするか目標などは決めたのか?)
うーん…本当は細々とした簡単なお使いをしつついいねポイントをためて、レベルを上げていくつもりだったのだけど…
(キナがやらかしおったからな…)
はい。光神様系統だけでレベルも18まで上がってしまったので戦闘スキルをとらないと、ダンジョンに入った時に悲惨な事になりますから。
(うん?どういう事じゃ?)
いえ、このゲームって、いくつかのダンジョンがプレイヤーが入ったときのレベルで難易度が変わるとかだったように記憶してるんです。固定や変動もあったけど…
(おー。確かにあったの、そんな設定)
もしかして弄りました?
(いや、忘れておったくらいじゃからな)
………。
そうだとしたら、回復スキルしか無い状態で、ダンジョンには入りたくないです。
(そうじゃなぁ。敵もレベルが高くなって、倒しにくくなっておるじゃろうな)
はい。なので、明日からは狩りや簡単な討伐があればそれを受けてみるつもりです。
(ふむ、了解したのじゃ。神によってはダンジョンにしか祠がないものもおるからの)
ですよね…。
(今、一番身近なのは戦神じゃろうな)
そうなんですか?
(うむ。その街にもあるのじゃ)
今日行った聖堂にはなかった。となると後は…まさか演説してるおっさんの後ろの?
(正解じゃ!)
近寄りたくない…。
(まぁ…やかましいしのー。 他の場所にもあるから無理に行く必要はないぞ?)
今は、戦神様のポイントもないしとりあえず保留にします。
お風呂から出て、借りてる部屋のベッドへ飛び込む。
明日は戦闘関係のクエストを頑張ろう…。
あぁ…ベッド気持ちいい…。
いつか自分のお金で、この生活が出来るようにする為にも、がんばら…なきゃ…
「…zzz」
(寝付きのいいやつじゃ…せいぜい我を楽しませてくれよ?クックックっ)
(何を邪悪な顔して笑ってるんですか! …昼間はよくもやってくれましたね)
(キナか、あれで許してやったんじゃから感謝せい。にしてもよく抜け出せたな?かなりきっちり縛り上げた筈じゃが…)
(誰も助けてくれなくて、姉に助けられて借りを作ってしまったんですよ! どうしてくれるんですか!)
(知らんがな。お前ら姉妹の問題じゃろ?)
(本当にそう思います?)
(ん?)
(アリエル様は私達姉妹が正反対の性格だと仰ってましたけど、姉妹なんですよ?)
(まさか…)
(その子に興味津々ですから、気をつけてくださいね)
(めんどくさいことになりそうじゃの…)
「…………! ………!」
…………んー…ふわぁ〜。うるさいなぁ、なんか変な音がする。まだ夜中、だよね…?
はっ! まさか、泥棒!?
(大丈夫じゃ、二階の寝室でやつらがまぐわっておるだけじゃ)
へっ? まぐわ…?
(激しいのぉ…そんな事までするのか! ふむふむ…)
うぅ…ご夫婦だし、当たり前だよね。
(なんじゃ顔を真っ赤にして…)
な、なんでもないです!
(くくっ。覗きに行くか?それとも実況してやっても良いのじゃ!)
行きませんし、いりません!
そう言ったのに、嬉々として実況を始めるロリ神様。これも勉強じゃとかなんとか言って…。
頭まで布団に潜り込む。
早く自分の拠点を手に入れなきゃ!
色々気まずいよぉー! ”ピロン”
なんで色神様からいいねがもらえるの!
(なんじゃ、発情しておるのか?)
してない!! あぁもう!
その夜は結局ほとんど眠れず、朝まで頭を抱えたまま過ごす羽目になった。
はぁ…どんな顔して挨拶したらいいんだろ…
(ひっどい顔じゃの)
眠れなかったんです! そもそも誰のせいですか!
(しかたないのぉ、そのまま狩りに行くのも危ないじゃろ、出かける前に聖堂で我の像に触れていけ)
……。
(なんじゃその疑いの目は…)
自分のぺったんこの胸に手を当ててよーく考えてください!
(やかましいわ! 覚えておらんのか?聖堂の像に触れるとどうなる?)
…?病気とかが治る。
(そうじゃ、疲労も回復されるから寄っていけ)
はーい…。 まったく誰のせいだと…。
(ロリ神様が信じられなかったら私の像でも大丈夫よー。狩りに出かけるのなら私の祝福効果のがいいと思うわ)
(なっ…横から来てなんじゃ! コヤツは我の眷属なんじゃ!)
(そうかもしれませんけど…ロリ神様の祝福効果って、物理的な狩りをするなら何の恩恵もないじゃないですか)
(…そうじゃった…)
何?どういう事…
(ロリ神様の祝福効果は魔力の回復速度が上がるだけなの。それに比べて私の祝福は体力とスタミナの底上げ)
物理に重点をおいて戦うのならキナエル様の祝福効果のがありがたいですね…。
(そういう事よ。まぁ、もし命を落とすような事になって時を巻き戻すってなると、ロリ神様の独壇場なんだけどね)
時間を操れる?
(そういう事じゃ。世界、時間それらを操れるのが我じゃからな)
ロリ神様すごい! それなら祝福ももっと凄くないとおかしくないですか?魔力だけって…
(じゃよな? 我、最高神じゃし! よし、改変じゃ!)
(あぁ…やめてください! また私の仕事が増えますー!)
な、なんかごめんなさい。
ルディアさんとダルさんはまだ寝てるみたいだからリビングに置き手紙だけして家を出た。
まずは聖堂へ行って、それから依頼を探そう。