お風呂と鉱山
拠点も手に入れたし、二人でささやかなお祝いをした。
茹でたカニや、リールーが楽しみにしていたイクラもツマミにして、私も初めてお酒を飲んだ。
甘くて美味しかったのは、はちみちゅしゅ…言いにくいな畜生め!
(蜂蜜酒醸造所)
はちみちゅしゅじょうじょうしょ…? くっそ!!
(ウケるんじゃが?)
うっせーですよ! 言いにくいのが悪い!
狭いベッドで、少し酔ったリールーとくっついて寝て…。
翌朝、地上から大工さん達の作業の音が聞こえてきて目が覚める。
「ちょ…リールー! 手! どこ触って…」
ってぐっすりか…。狭いベッドだししょうがないか…。
昨日カッコよかったし、これくらいは許してあげよう。
(ニヤニヤ…)
それ口で言うんですね?
(それしか伝わらんじゃろ?)
それはそうだけど。余計にイラッてするんで止めてくんねぇですか?
(いやーシルビアも丸くなったのーと思ったのじゃ)
失礼な! 太ってません!
(いや、そういう意味ではないんじゃが…)
ベッドから抜け出して服を着替える。
ここ、お風呂がないのだけが困りものだ。
(リバーサイドの雑貨屋に、お風呂キットが売っとるぞ?)
そういう事は早く教えて下さいよ!
リールーを叩き起こしてリバーサイドへ! お風呂が待ってる!
「ふわぁぁ…そんな急いで行かなくてもよくない?」
「お風呂が待ってるの!」
「はぁ?また訳のわかんないことを…」
「雑貨屋でお風呂キットが売ってるって教えてもらったの!」
「誰に…?まさか、ボクが寝てる間に大工と話したの?」
「違うよ。ほら、神様がね?」
「はぁ…ホントにシルビアって何者なの?神様と友達みたいだよね?」
(間違っておらんな?)
朝から意地悪されたけどねー。
(そうじゃったか?)
リバーサイド村からトボトボと歩く帰り道。
「そんなに落ち込まなくても…」
「だって…」
雑貨屋にお風呂キットは売ってた。売ってたけど高すぎる…。
ぬか喜びだよ!
(すまん…値段まで気にしておらなんだ)
わざとじゃないならいいです…。
「とりあえず鉱山に行こ?山賊の装備とかかき集めて売れば買えるかもだし」
「うん…」
リバーサイドを出て、街道から山の方へ行くと鉱山の裏口がある。
山沿いを歩けば入り口が見つかるはず。
やっぱりあった! 変わってなくてよかったよ…。
「へぇーこんなとこに入り口があるんだね」
「裏口だから手薄だと思うよ」
「シルビア、援護よろしくね」
「任せて」
リールーを先頭に、鉱山へ。
(エンダーシャドウ鉱山じゃな)
先手打たれてしまった。手慣れてきました?
(ちょっと楽しみなんじゃコレ)
次は負けないから!
(受けて立つぞ?)
入って直ぐに骨製の鳴子がぶら下げられてたから、当たらないように慎重に進む。
リールーが3人目視したと合図をくれる。
近くの一人はミニマップにも表示されてるから、私もわかる。
リールーの隣まで行くと、奥の二人も見えた!
洞窟へ流れ込んできてる水で小さな滝ができていて、立体構造になってる下には小さな池ができている。
奥の二人は私が狙撃して仕留めた。
手前の一人はリールーが背後から不意打ちで。
「誰かいるのか!?」
下にも山賊がいたらしい。
私達は少し下がって隠れたけど、上がってきた山賊に、さっき仕留めた敵を見られてしまった。
「やったやつが誰であろうと見つけ出す!」
ちょうどよく射程内に入ってくれたから弓を引き絞り…矢を放つ。
警戒されてたせいか仕留めきれなかった。
すぐさま走り出したリールーが斬り伏せて、なんとかそれ以上の騒ぎにならずに済んだ。
「ここ景観が凄い」
「山賊のアジトには勿体ないね」
滝の側にかけられた吊り橋を渡り、仕留めた山賊から装備品を回収。
「宝箱あるよ!」
洞窟の奥待った部屋を確認してくれてたリールーが叫ぶ。
宝石類もあったらしく、結構な稼ぎになるって喜んでる。
「下も確認しよう。鍛冶場まであるし」
「わかった、まだ居るかもだし気をつけてねリールー」
「了解!」
山賊のくせに丁寧な仕事するなぁ…。木材で足場が作られてて、下の池のそばまで難なく降りられた。
鉄鉱石やインゴット、完成した剣まで幾つかおいてあった。
「これだけの技術があるなら普通に鍛冶屋すればいいのに…」
「一度手配されると街に入れなくなるから仕方ないんじゃない?」
「あーなるほど…」
確かにゲームでも街に入った瞬間、スタップされたな…。
(悪さしとったんじゃな?)
ゲームだし…。
辺りをくまなく探索して、幾つか鉄鉱石を掘れる場所も見つけたからリールーがツルハシで集めてくれた。
これもまたしばらくしたら取れるようになるのかな…。
(そうじゃな。一週間くらいか?)
早っ…。
「どうする?もう少し進む?」
「うん。全滅させておかないと、ボクらの拠点に攻め込まれたらヤダからね」
「それもそっか」
「シルビアが山賊に攫われたりしたらボクはブチギレる自信があるよ」
「…そこはそうならないように守ってほしいけど…私も戦うし」
「だからこそ、全滅させるんだよ」
ごもっとも。
鍛冶場から上にあがり、更に奥へ進むと”カツーン、カツーン“って鉱石を掘ってるであろう音がする。
忍び寄ったリールーが一刀で切伏せたけど、そのまま違う方を見て固まった。
どうした? 敵ならあんな無防備に突っ立ってたりしないよね?
近くまで行って目線の先を見た私は、リールーをひっぱたいた。
「痛いよ、シルビア…」
「じゃあせめて視線を逸らせバカ!」
リールーが凝視してた先には、あられもない姿で縛られて檻に入れられてる女の人がいた。
確かにすごいスタイルだけど…。別に悔しくないし!
「お姉さんも山賊?」
「違うわ! 奴らに捕まったのよ…貴女達はアイツらの仲間じゃないの?」
「私達は、山賊を退治しにきただけです」
「それなら助けてもらえる?バカな山賊が向かいのテーブルに鍵を置いていったから、まだあるはずよ」
振り返るともう一つ檻があり、その前にテーブルと椅子が設置してある。
ここから眺めてたとでも言うの?変態め!
テーブルを確認すると確かに鍵が置いてあった。
それを使って檻を開けて、手枷も外してあげる。
「ありがとう…。もう少しでひどい目に合わされるところだったわ」
「服は…」
「その鍵を貸してもらえる?」
鍵を渡すとテーブル側にあった檻を開けて、中の宝箱をあさる女の人。
「よかった。私の持ち物がそのままあるわね」
そう言いながら着替えた女の人はどう見ても冒険者って出で立ち。
「お姉さんエロい事されたの?」
「リールーのバカ!」
「だって…そうならあいつら許せない。無理やりなんて」
「心配してくれてありがと。でも大丈夫よ。売るつもりだったらしく、リーダーが手を出させなかったから」
「そう。でも売るって…」
「貴女達は何人倒した?」
「5人」
「じゃあまだいるわね。申し訳ないけど、残りのやつらは譲ってもらえる?」
「いいよ。仕返ししたいだろうし」
リールーは即答する。
ニヤッと笑った女の人は武器を抜くと、私達が来たのとは違う方向へ走っていった。




