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魔術師



(やかましいのー忙しいと言うとるじゃろうが)

返事できるんかい!

(お前の心の声は聞こえとるからな。じゃが忙しいのは本当じゃ。取り敢えずはそやつの言うとおりにしてみるといい)

あまりにも非人道的ですけど…。

(そもそも、吸血鬼を治すのに必要なブラックソウルストーンは、人を殺めなければ手に入らん。お前たちがどうやって手に入れたか聞くのはまずいじゃろう?やめておくのじゃ)

普通に拾っただけだし!

一番抵抗があるのは、あんな泣いてる小さな子にまで手伝わせるってこと。

(その娘も立派な魔術師じゃ、下手な同情は相手を傷つけるぞ)

…そうですね。



パリオンの家を出た私とリールーは、吸血鬼を闇雲に探すより、確実にいる場所へ向かうことにした。

そう…私が初めて死んだ、あのダンジョンへ。

あそこなら入ってすぐに吸血鬼がいた。

それにノクエル様が弱体化させてくれたって言ってたし…。


確実にいるって言う私をリールーは信じてくれた。

私が死んだことで時間が遡り、一緒にダンジョンへ入った事実は無くなっているのに…。

(吸血鬼の姫でもさらいに行くかと思ったんじゃが)

ありえませんわね!

(…やめて…あの子は好きにさせてあげて…)

大丈夫です、ノクエル様。ロリ神様が勝手に言ってるだけなんで。

(…こら、ロリっ子…)

(お前も似たようなもんじゃろが! 冗談じゃて…やめっ…ノク! それだけは!)

(…問答無用…)

神界の力関係がわかんなくなってきたなぁ。

遊んでないで早く助けてほしいのに…。

 


リールーは室内やダンジョンなら夜のように戦えるから任せてほしいって言うけど、今回は倒してしまうわけにはいかない。

「まずは魔術師大学へ行くよ」

「は? ダンジョンへ行くんじゃないの?なんでまたそんな遠くへ…」

「捕獲するなら麻痺の呪文書が欲しいんだよ」

「うん?なるほどね…縛るのは?」

「革紐でいいでしょ」

「縛り上げたら袋に詰めればいっか」

リールーの発想が怖いよ…。



今回も移動は馬車。

「乗ってくかい?」

来た時に乗ってた御者とは違うな…。

「魔術師大学へ行きたいんだけど」

「任せろ。今日は天気が崩れそうだから急いでくれ」

御者の言った通り、途中から雪が降り出した。

コートを着ても寒くて、リールーとくっついてたけど、リールーが前みたいに温かくない…。

否が応でも吸血鬼なんだって現実を突きつけられて泣きそうになる。


「シルビア、ごめんね…ボクのせいで」

「ううん。リールーの為なら私は…」

「それって…」

「あー寒い!!」

「話そらすなー」

そんな感じに騒いでたら馬車は魔術師大学のある街についた。

確かウインターホー…

(ウインタータウンじゃ)

あ、はい…、忙しいのに突っ込みはいれるんだ。

(お約束じゃからな!)

実は暇なんじゃ…?

(あー忙しいのー)

なんだかとっても嘘クセェですね…。



もう夕方だし、街の宿で泊まろうかとも思ったけど、呪文書を買うだけだし、そのまま大学へ。

大学への坂を登る。どこもかしこも坂ばっかだな…。

「危険を承知で進みなさい。門は閉ざされていて入れないわ」

やっぱりいるのかこの人。

魔法の腕を見せないと入れてくれないんだよな。


幸いにも要求されたのは他者治癒の魔法。

回復魔法がカンストしてる私をなめるなよ?

キナエル様のおかげだけど…。



「中へ入ったらミラレスと話してください」

「わかりました」

本格的に入学するつもりもないし、挨拶するだけでいいかな。

なんか攻撃魔法を司る魔神様ががっかりしたような気がしたけど、多分気のせい。


麻痺の呪文っておじいちゃん先生が売ってたはず。

ミラレスさんに挨拶をして、校内の案内は断り、大学のホールへ入る。

中では授業の真っ最中だった。

「ようこそ、ようこそ! たった今始めたばかりだ」

あれ…勇者様って魔法大学のクエストやってないのかな。

ミラレスさんも元気だったし…。

(マグロの目に関する大事件なら終わっておるぞ?兄の方が学長になったのに、その地位を捨てていきよったし…)

今なんて?

(学長になった…)

そこちゃう! 一番最初!

(マグロの目?)

それ! なんだよ…珍味かよ!

(魔法に関する特級アイテムじゃぞ?そんなことも忘れたのか…)

名前のせいだよ!! 私悪くねぇですよ!



無駄に疲れたけど、授業の邪魔も出来ないし、暫くリールーと待つ。

「…シルビア、喉乾いた…」

「また!?大丈夫かな…。飲みすぎると吸血鬼としてパワーアップするけど、街に入ると狙われるよ?」

「うぅ…でも…」

そんな縋るような顔をされたら、ダメって言いにくい…。

ホールの柱の影で、また手首を少し切ってリールーの口元へ。

「はぁ…んっ…ちぅ…んくっ…んくっ…」

力が抜ける…。

今回も吸い付くリールーをなんとか振り払って、傷口を治癒魔法で治す。


「もっとぉ…」

「ダメ! リールー、これ以上は私が無理」

また心ここにあらずって感じで恍惚としてるから、座らせておく。

どうやら授業も終わったらしい。


おじいちゃん先生のところへ行こうとしたら、ネコの生徒に絡まれた。

「ケイザルゴは大成するよ! それは間違いない!」

「…じゃあ初級以外の魔法も使ってよ」

「ケイザルゴはいろいろな魔法を覚える」

「はいはい」

全く…。

あのネコさん、大成するって言うから連れ歩いてたけど、どれだけレベルが上がっても初級魔法しか使わないポンコツだった。

まぁそれはいいや。こっちのネコさんに八つ当たりしても仕方ないし。


「先生、呪文書を買いたいんですが…」

「何が必要かね?」

「麻痺の呪文書を」

お金を払って呪文書を購入。ちょっと懐に痛いけど仕方ない。


大学での用事は済んだ。

街へ戻って宿で一泊。

血を飲んでも、時間経過でパワーは落ちる。

最低限以上飲ませないようにしないと…。私自身も衰弱してしまう。


翌朝、また馬車に乗りリバーサイド村へ向かう。

そこからダンジョンへは歩きになる。


馬車に揺られてる最中にまたリールーが渇きを訴えて、少し血をあげた。

段々と、飲みたがる頻度が上がってきてて…急がないとヤバい気がする。


リバーサイドで馬車を降り、街道を行く。

イリタマゴ湖近くでキャンプしてる狩人にリールーが話しかけてて、何してるのかと思ったら食材とかを容れる麻袋を分けてもらったらしい。

「コレに詰めればいいでしょ」

「物騒だなぁ…」

「仕方ないよ、縛り上げたのを担いでる方がヤバいし」

どっちもどっちな気がしないでも無いけど、まだ袋のがマシか…。



暫く街道を歩いて、例の古代の墓地…なんだっけ、甘そうな名前だったような。

「ボクが先行するから、援護してね」

「大丈夫かな…」

「日の当たらない場所ならボク負けないよ!」

そう言って笑ったリールーの歯が尖ってたのを私は見逃せなかった…。







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