表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/44

ランダムイベント



このまま気まずいのも嫌だから、お互い気にしない事にして、話を変える。

乙女として大切なものを犠牲にした気がしないでもないけど。

「何かあった?」

「うん、カラの宝箱と、お頭の日記」

「なんて?」

「仲間割れしてここへ移動してきたとかそんな事が書いてあった」

「それだけ?」

「うん。あとはせいぜい小銭や食料くらい」

樽や麻袋から食べ物は回収したらしい。

食べ物は私の鞄に受け取った。傷まないし。



洞窟内なのに空気はキレイだし流れを感じる。

「ねぇ、リールー。なんか風が吹いてない?」

「うん?そう言われれば、洞窟なのにおかしいね。 あっ、だからか!」

「どうかした?」

「ほら、これ…」

リールーに案内された先にはボートが浮いてる。


「川から入ってこれるのかな?」

「風の向きからしたらあの上の穴から…あっちへ〜だろうね」

リールーの指差す先は、ミニマップでみてもどうやら外へ続いているらしい。


ボートに乗りたいって言うリールーと二人でボートに乗り込む。

ゲームだと出来なかったことが出来るのは未だに戸惑う。

ボートはリールーが漕いでくれて、トンネルを抜けて外へ。

街道を通って、さっき渡ってきた橋のすぐ近くに出てきたみたい。


橋の傍へボートを接岸し降りる。先に下りてちゃんと手を貸してくれるあたりリールーは優しい。

「もう少し乗ってたかったけど、流されても嫌だしね」

名残り惜しそうにしてるけど、私はもうボートはいいや。

そもそもボートで移動することに違和感もあるし、流されて滝とかあったら悲惨だ。



山賊を退治したから暫くはこの街道も安全だろう。ちょっと寄り道しちゃったけど先を急ぐ。 

しばらく道なりに進むと、道端に放置された馬車。

「また罠?」

「違うと思う…どちらかと言うと襲撃された後?」

だって亡くなった人や馬が倒れてるし。


「一応警戒して」

「わかった」

ミニマップで見る限り亡くなってるのは二人。あとは馬が倒れてるが見える。

馬車には矢がいくつか刺さってて、襲撃されたんだろうと予想はつく。


「この矢…」

「リールー、知ってるの?」

「雪エルフのだね」

雪エルフ…?そんなのいたっけ。

(真っ白い肌の美しいエルフじゃぞ?)

なにそれ知らない!

(元々は地下のダンジョンに居った、目の見えん可哀想なエルフじゃ)

あぁ…。でっかい虫と一緒にいるやたら凶暴な?

(言うな…我、虫はダメなんじゃ。デカイのとかあり得んじゃろ…)

でっかい蜘蛛とかは?

(そんなもの我の世界には不要じゃ! クマやネズミなどに変わっておるのじゃ)

あー…。じゃあその雪エルフも、襲ってこない?

(排他的ではあるから、テリトリーに入れば襲われるぞ?)

それはそっか。


リールーは馬車や亡くなった人から手がかりを探してたけど、商人の夫婦だったことしか分からなかったらしい。

「雪エルフが表に出てくることなんてほとんどないはずなんだけどなぁ…」

「くわしいね?」

「ネコキャラバンであちこち旅してたもん」

街から街へ移動して、グレーな物も販売してたりするんだっけ。




商人夫婦を弔って、すぐ側の分かれ道をリールーは迷うことなく左へ進む。

橋を渡ると、遠く…北の方に建物が見えてきた。

あれってドラゴンブリ…

(竜橋じゃ!)

まんまじゃねぇか!

(やかましいわ! いいのが思いつかんかったんじゃ…)

…今までいいのってありました?

(余程天罰がお望みのようじゃな…)

横暴だー。ちゃんとツッコミいれたのに…

(それもそうじゃな。 このやり取りも気に入っておるし)

じゃあ天罰とか無しで!

(仕方ないのぅ)

さーすが! 優しい神様。

(じゃろ?)


チョロ神様と話してたらリールーにおいていかれてた。

(チョロ…?)

なんでもないです!


「竜橋まできたら王都は近いから、頑張るよ」

「はーい!」

竜橋は名前の如く、橋の上に大きな竜の頭蓋骨を模した石の彫像が掲げられてる。

落ちてきたら橋ごとぶっ壊れるんじゃねぇですかこれ…。

(有り得んな。決して壊れんから安心するのじゃ)

老朽化とか…。

(ない!)

もうゲームなのかリアルなのかわかんねぇな…。


橋を渡るとちょっとした村があって、皇帝の親衛隊…なんだっけ?なんかすっごい噛みそうな名前の部隊。

その人たちの基地があったはず。

(皇帝親衛隊じゃな)

え?それが名前?

(だって言いにくいんじゃもん…)

……。いいけど。一応エリート部隊だったはずなのに。


まぁ、基地とは言っても民家の一軒程度だったからなぁ。

暗殺ギルド関連じゃなきゃ来なかったよね。

(暗殺ギルドは壊滅しておる)

あー、勇者様は壊滅ルートにしたんだ?

(…そんな生ぬるいものじゃなかったんじゃ…)

はい?

(手違いかなんかで勇者を襲った暗殺者がおってな…返り討ちにあって、その後も何度か襲われた事でブチギレた勇者が…)

それって…ランダムイベントでは?

(なんじゃそれは?)

えっと…ゲームだと、特に理由もなく暗殺者が差向けられて襲われるんです。

ほら、道で盗賊に金目のもの置いてけ! って絡まれるのと同じ。

(そのせいで暗殺ギルドも盗賊ギルドも壊滅させられたと!?)

盗賊ギルドも?そっちは壊滅ルートなんてなかったのに…。

(全員勇者にボコられて、お縄になったんじゃ…。おかげで世界のバランスが…)

あぁ! だからロリ神様はやたら私にそっちを勧めてたの?

(うむ…)

なるほどなぁ。納得はしたけど、裏稼業には手を染めないよ?

(無理強いはせんから安心するのじゃ…こっちでなんとかするよう手を打っておるからな)

またキナエル様が…。

(今回はノクもじゃな)

闇神様だからか。お二人とも大変だ…。どーりで最近声が聞こえないと思った。

願わくばどちらも義賊であってほしい。



竜橋の村を抜けて坂道を登る。

「あ…やばっ」

「どうしたの?トイレ?」

「違う! ほらアイツら」

リールーが指差す先には、重装を着込んだガタイのいい三人組。

これどっかで見たような…?


「手ほどきに来た!」

これアレだ! 犯罪に手を染めると差向けられる雇いの悪…

(雇いの賞金稼ぎじゃな!)

あっ…はい。


私は身に覚えが無いし、狙われてるのもリールー。

どこで盗みを働いたんだあの子は…。

見捨てるわけにもいかないから私も応戦。

ただ、リールーがやたら慣れてるようで、あっさり返り討ちにした。

「誰だよ…毎回毎回さー」

「そんなしょっちゅうなの? リールーは何してんの!?」

「お腹減って、ちょっとパクって…」

はぁ…もう!


「リールー…今度こんなことがあったら、私パートナー解消するよ?」

「ごめん…シルビアも巻き込むもんね。二度としないから」

「約束だよ?」

「うん。約束する」

「それで、結局誰から差し向けられたの?」

「ブラックランの宿屋…店主のプードルさん」

「宿屋って…セントバーナード?リールーが働いてた?」

「そう。お腹空きすぎてチーズ食べちゃった。見られてなかった筈なのに…」

セントバーナードの店主、プードル…。わんわん王国かよ…!

(かわいいじゃろ?)

そ、そっすね…。




「リールーは知らないかもだけど…見られてなくてもこの人達は差し向けられるからね?」

「マジで?」

「うん。だから盗みはダメ!」

「わかった…シルビアがそう言うなら」

「それに今は食べ物に困らないでしょ?」

「そうだね。シルビアが狩りで仕留めてくれるから。一人だと獲物を仕留めたりできなくて…」

「リールーは近接だからか」

「うん。一撃で仕留められないと逃げられるからね。買って持ってても腐ってて…仕方なく食べて死にかけたし」

確かに私も最初の頃、鹿狩りで苦労したっけ。それに私は鞄に入れたものが腐らないからなぁ。


「リールー、食べ物で苦労はさせないから!」

「ありがとう。でもボク情けないね…シルビアを守らなきゃなのに」

「相棒でしょ?お互いやれる事をやるの! 私は狩りや料理、戦闘では遠距離攻撃。リールーは道に詳しいし、近接戦闘では本当に頼りにしてるから」

「わかった!」

落ち込んでしまったリールーを慰めて、王都への道を急ぐ。

そろそろ日が傾いてきた。


上り坂を進むと変な光が何本も岩山に…

(キナの聖堂じゃな)

あの神様も統合されてるのかぁ。中は安全?

(あのキナが荒らされたままにすると?)

思いません。

時間が早かったら寄りたかったけど、今寄り道したら王都へ着くのが遅くなる。

後日お供えを持って改めて行ってみよう。

(それがいいのじゃ。キナも今は忙しいしの)







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ