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地下への扉



ロリッコテッドの宿屋で一泊し、相変わらず寝起きの悪いリールーを起こす。

「リールー、起きて。リールーってば!」

「うぅ…ん…ちゅーしてくれたら起きるー」

「起きてるよね?」

「早くー」

あーもう! 

グライダーを拾った山の東屋で貰ってきた枕をリールーの顔に押し付ける。

「もが…むが…ちょっと! 酷くない?枕とキスさせるとか!」

「あ、朝から馬鹿なこと言うから!」

「…恥ずかしいの?」

「うっさい!」

ニヤニヤしてるリールーにもう一度枕をぶつけて、出発の準備。


「シルビアはケチだよー。いいじゃんちゅーくらい」

「…寝ぼけてとかはヤダ。ちゃんとムードが欲しいの!」

「うわっ、めんどくさ!」

「…………」

「ごめ…嘘だから! その鍋を下において…ね?」

リールーはどこまで本気なんだか。まったく!

(惜しかったです〜もう少しで濡れ場が…ハァハァ…)

(おい、ディー。朝から発情するな。うっとおしいわ!)

(じゃあアリエル様が沈めてください…私もう〜)

(ぎゃー やめっ! キナ! 助けてくれ! ノクでもいい!)

朝からホント何してんだ…。



私が怒ってると思ったのか、リールーが顔色をうかがうように覗き込んでくる。

あれ…なんか顔色悪い?室内で暗いからかな。と言うかリールーは元々、見た目は色白の美少女だっけ。

男だけど…。


「今日はこのまま王都まで行くつもりだから、あまり寄り道せずに行くよ」

そう言うリールーに頷き、ロリッコテッドを出発。


すぐに農園が見えてきて、農作業してる夫婦らしき二人を横目に進む。

農園を少し過ぎたらミニマップに違和感が。

「あれ…?」

「どした?シルビア」

「なんか、街道の左右…あの岩と、あっちの岩かげに誰かいる」

ミニマップに反応がある。ただ、まだ敵対はしてない。

「待ち伏せだろうね。ほらあれ…」

リールーが指差す下り坂の先には、何故か道の真ん中にカートが放置されてその上に宝箱が。

「罠だろうね」

「リールー、どうする?」

「右側任せていい?ボクは左」

「わかった」

リールーと別れ、隠密姿勢で岩陰の人が見える位置まで移動。

やっぱり山賊か…。

私が弓を構えて矢を放つとほぼ同時に、リールーも走り出して戦いが始まる。

だけど、ミニマップに追加で2つ反応が!

坂の下から山賊が二人リールーに向かって矢を構えだした。

慌てた私は、まず遠くの山賊へ矢を射かける。でも、腕にあたって致命傷にはならなかった。武器を抜いてこちらへ走ってくる。

今度は落ち着いて胴体を狙う。

倒れたのを確認して、リールーへ弓を構えてる敵に狙いを定める。

今度はキレイにヘッドショット。


リールーも無事に山賊を倒せたみたい。

「ケガはない?」

「へーきだよ。それにしてもまだ居たんだね。助かったよシルビア」

「相棒だからね!」

念の為…とかいって道の真ん中にあった宝箱を確認するリールー。

舌打ちしてるって事は大したものが入ってなかったんだろう。 

見るまでもないと思うんだけどなぁ…。



宝箱のあった三叉路を直進すると、街道はかなり急な下り坂になる。

「コケたら悲惨だなこれ」

「歩くよりは早そうだけどねー」

「やだよそんな降り方」

坂を下った先には大きな川が見える。


「シルビア、狼だ。2匹!」

「うん、見えた!」

坂の途中で鹿を追いかけている狼を矢で仕留めると、坂のふもとまで滑り落ちていった。

「コケたらああなってたね」

「怖すぎる…」

確かゲームでも落下ダメージって最強だった筈。それは坂を滑り落ちても同じ。

(そんな情けない死に方してくれるなよ?我の眷属なんじゃから)

はーい。私だって嫌だ。


坂を下ると道は川にそって続き、ようやく橋にたどり着く。

「リールー、アレどう思う?」

「山賊だろうねー。街道を塞いで襲う気だと思う」

だよなぁ…。橋を渡りきった辺りに、木造で砦が作られてて、左右に射手がいる。

「仕留められそう?」

「もう少し進めばいけるけど。でもまた落石の罠があるよ」

「ちっ…スイッチがどこにわからないから突っ込めないな」

「いっそ罠を作動させて、避けてく?」

「そうだね。頭に落とされるよりはいいかも」


左、右と射手を仕留めたところで誰かが罠を作動したらしい。

ガラガラ…と大きな岩が道に転がり落ちてきた。

そもそも、あんな大きな岩をどうやって設置したんだよ…。

(気にしたら負けじゃぞ?)

ロリ神様は気にしようよ…。


岩を避けつつ走っていくリールーを高台から狙う射手。それを仕留めてから私もリールーを追う。

街道の東側にアジトがあるのか数人の赤い光点がミニマップに見える。


リールーは私が追いつくまでに砦の入り口を見張ってた山賊を倒して、扉横の壁に張り付いてる。

”ギィー“と扉が開いて出て来た一人をリールーが不意打ちで仕留める。

「あと2! もうすぐもう一人が出てくる!」

私の声にうなずくと、リールーは武器を構えたまま待ち伏せる。

私もしゃがみながら弓を構える。

開いてる扉の先に山賊が見えた瞬間に矢を放つ。

直後にリールーも扉の中へ。

弓では仕留めきれなかった山賊をリールーが斬り倒す。


「あと一人?」

「うん。でも、奥の建物に籠もってるみたい」

かなり大きなアジトなのはテントの数でわかる。

ただ、テントに対して山賊の数が少ない。

出掛けているのなら、戻るまでに終わらせないと。


…思い出してきた。ここの奥にいるの山賊のお頭だ。

「リールー待って」

「うん?」

前衛を受け持ってくれるリールーに、自然回復強化と、防御アップの魔法をかける。

「奥にいるの強そうだから」

「ありがと、援護任せるね」

「うん」

頷き合い、ゆっくりと進む。


奥の建物の入り口には今までの山賊とは違う、かなりしっかりとした鎧を着込んだ女の人が。お頭かな?

「よくも仲間を! 生きて帰れると思うなよ! この砦は私達のものよ!」

矢を射かけるも鎧に弾かれる。

嘘でしょ…?

(鎧の隙間を狙うんじゃ。今のお前の力ではあの鎧は貫けんぞ)

そんなこと言われても…。

すでにリールーと斬り結んでいる相手に矢を射かけるわけにもいかない。

下手したらリールーに当たってしまう。


「くそっ、チビのくせになんて力してやがる!」

「デカイだけのオバサンに言われたくないね」

「まだ20代だ!」

いや知らんがな…。リールーと舌戦も繰り広げる山賊頭。

私はリールーへ回復魔法をかけて援護する。

「卑怯な! お前らそれでも冒険者か!」

「は? 外道の山賊がなにいってんの?それに冒険者は生き残ってこそなんだよ!」

リールーの正論パンチで悔しそうに怯んだ山賊は、畳み掛けるように振るわれたリールーの攻撃に耐えられず後ずさりして、尻もちをつく。


「ま、まて! 降参だ! 宝ならやる!」

「お前はそう言った人を助けたの?違うよな?」

言い返せない山賊頭にリールーは容赦なくとどめを刺した。

うめき声とともに息絶える山賊。

もうどっちが悪者かわかんねぇなこれ?

まぁリールーが無事で良かったよ。


「リールー、怪我は?」

「あちこち痛いよ、でもシルビアの回復のおかげでなんとかね」

よかった…。

もう一度、リールーに回復魔法をかける。

「ありがと。 お宝かぁ…」

キョロキョロと周りを見渡すリールーは、奥の建物内へ。

私も後を追う。


建物の中には、テーブルと椅子、左の小部屋にベッドと…

「リールー、あれ宝箱」

「シルビア、ナイス」

壁際の棚から何やら回収していたリールーはすぐに私の指差す部屋へ行き、宝箱に手をかける。

「あれ?」

「どうかしたの?」

「鍵かかってる。ボク鍵あけ苦手なんだよねー」

私もこっちへ来てからやったことないから、多分無理。

鍵があるかもしれないし、二人で建物内をくまなく探す。


テーブルの下や、棚の中…探したけれど見つからない。

ただ、一冊本があって、読んだら弓のスキルが上がった。

スキル本は健在なのか。


「あった!!」

リールーは部屋の奥で見つけたらしい鍵を持ってきて宝箱に差し込むも回らない。

「おっかしいなぁ…」

「んー、じゃあさっきの山賊頭が持ってるとか?」

「それだ!」

リールーは山賊頭らしき女の人の装備を引っぺがす。

躊躇ないなこの子。

「うわっ、デカ!」

リールーの声に覗き込むとあられもない姿にされた山賊長が…。


思わずリールーをひっぱたく。

「いったいな! なにすんの!」

「スケベ! 変態!」

「仕方ないじゃん!」

「鍵だけ取ればいいでしょ?」

「だってこれ結構イイ値で売れそうだし」

たしかに豪華な鎧だったけど。

ゲームだった時には躊躇なかった事も、目の前であられもない姿になった女の人を見ると戸惑ってしまう。

ただ…大した罪悪感がないのはロリ神様のせいかもしれない。

(我のせいってなんじゃ! 我のおかげじゃろ!)

そうだけど…これでいいのか私。

(ここはそういう世界じゃと言うておるじゃろ。情けなぞかけておったら足元を掬われるぞ?)

そうですね…。


山賊頭から鍵を見つけたリールーが宝箱を開けてる間に、倒した山賊を弔ってまわった。

罪悪感はなくてもなんかもやもやするし…。

放置してアンデッドになったり、病気が蔓延しても困る。


離れた場所で倒れた山賊からも、矢とゴールドだけ回収し全員弔ってからリールーのいる建物へ戻る。

「シルビア、これなんだと思う?」

しゃがみこんでるリールーが地面にある扉を調べてる。

地下のアジト?

「鍵かかってるんだよね」

「最初に見つけた鍵は?」

「それがあった!」

リールーが鍵を差し込み回すと“カチャ”と開いた音。

「ここの鍵だったのかー」

扉を開くと中はどうやら洞窟らしい。

人の気配がないから降りてみるって言うリールー。

「仲間が戻ってきたらどうするの?」

「じゃあ見張ってて」

「はぁ…わかったよ。気をつけてね」

頷くとリールーは梯子を降りていった。


ゲームなら仲間が戻ってきたりはしなかったけど、これは現実。

何があるかわからない。

(戻って来たりせんぞ?ここにおったやつで全部じゃ)

は?

(じゃから、あやつらで全員じゃ)

そういう事は早く言ってくんねぇですか?いらん心配と緊張で疲れたんだけど!

(そういう事もあるじゃろうて)

なんだかなぁ…。


危険がないなら私も降りよう。

ハシゴを少し降りたところでお尻が何かにぶつかる。

「きゃっ…」

「…ごめ…呼びに行こうとしてて…」

「見上げないで! 早く降りて!」

「…うん」

(いいわ〜。ラッキースケベ〜。そのまま地下で…)

目ざとく色神様がいいねをくれたけど嬉しくない!

と言うか声は女の人なのに、言動がおっさんのそれ。

(まぁ…こやつはな?どっちでもあるから…)

…ききたくなかったその情報。


私が地下へ降りると真っ赤になったリールーが俯いててめちゃくちゃ気まずい。

「…えっと、ごめんねシルビア」

「殴ったら記憶から消えるかな?」

「やめてよ!」

やれやれ…


地下は洞窟と、地底湖のようにきれいな水が溜まってて、くつろげる程度には家具が設置されていた。

山賊頭の個室?何かありそう!








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