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山へ 準備編



午後からはブラックラン周辺での狩り。

私が弓で仕留めてリールーが回収を担当。

ロリ神様にもらった私のポシェットに入れておけば腐らないし。


あれ?じゃあ他の人はどうなってるんだ?

(当然くさるぞ。長持ちさせるために、皆なにかしらの対策はしておるのじゃ)


そうなると私のポシェットが狙われたり…。

(お前にしか使えんし、みんなそういう物として気にしておらん。リールーも何も言わんじゃろ?)

そう言えば…。明らかにポシェットに入らないサイズの物を出し入れしてても何も言われてない。

(じゃろ?だから大丈夫じゃ)

それなら安心して使えます!


「シルビア、もうこれくらいでいいよ」

何匹目かの獲物から肉類を回収してリールーはそう言う。

二人分だし、狩りすぎてもよくないもんな。

「じゃあ肉類は預かるね」

「あまりそっちへ行き過ぎると巨人の野営地があって危ないからね」

リールーの指差す先を見ると、まだ遠いけど巨人とマンモスが見えてる。

こっちへ来て初めて見たかも。

ゲームの時、巨人に挑んで棍棒みたいなので、どーーん! ってされて空を舞った記憶があるから近づかない。

あんなのリアルで体験するものじゃない。



「シルビア、毛皮と角は売っていいよね?」

「うん。コートを受け取る時に売ってしまおう」

リールーも普段から大きめのリュックを背負ってる。ただ、あれもサイズと容量が合わないんだよなぁ。

(仕様じゃ。山賊共から装備を剥ぐ時も、態々脱がせたりはしておらんじゃろうが)

気にしてなかったけど言われてみれば…。ゲームで言うならインベントリ?から回収する感じ。

狩りの肉とかも触れれば、必要なものだけ選んで回収っていう不思議仕様なのに当たり前すぎて気が付かなかった。

(血まみれで獲物の解体をしたいのか?)

絶対嫌です!

(まぁ我もそんな光景見とうないのじゃ)



肉以外の食材は、ブラックランに戻ってから、いつもの市場で買い揃えて私のポシェットに。

リールーはお酒を買い足してた。

蜂蜜酒とエールは好きだけどワインは苦手らしい。

私はまだどれも飲んだことがない。

絶対酔いそうだもん。

(キナの耐性があるから酔わんぞ。馬車でも酔わんかったじゃろ)

あの荒ぶる馬車でも平気だったのはそういう理由か! じゃあ私も蜂蜜酒買っておこう。

キナエル様いつもありがとうございます。

(いいのよ。ロリ神様の尻拭いはいつものことですから)

本当にいつもご苦労さまです…。

(ほんとよ。いつもいつもいつも…)

(な、なんじゃ、二人して我を悪者みたいに)

そうは言いませんけど、キナエル様にちゃんとお礼を言うくらいはしてもいいのでは?って思いますよ。

(そうじゃな…、キナよ、いつも世話をかけるの。感謝しておるのじゃ)

(あ、あのアリエル様がお礼を?ふわぁぁ〜感動ですよぉ〜うぅ…ぐす)

(泣くな泣くな…)

やっぱり最高神様からのお礼っていうのは特別なのかな。

時々くらい言ってあげればいいのに。




帰宅すると夕食の準備は終わってしまっててお手伝いができなかった。

ルディアさん手作りの美味しい夕食を頂いた後、リールーと二人で片付けをして、部屋で明日からの旅に備えて荷物の確認。

「ねぇシルビア」

「どうしたの?」

「なんでこのテント二人用なの?前に誰かと組んでた?」

「違うよー。リールーと組むって決めた時に買ったもので、まだ使ったことない新品だよ」

「じゃあボクが初めての仲間?」

「うん。そうだね。 あ、でも一人、道案内をしたことはあるよ」

「…そうなんだ」

「なになにー?ヤキモチ?」

「うるさい! あんな話聞いたら心配にもなるでしょ」

「…そうだね、ごめん。 安心して、リールーが初めてだよ」

「いつか全部もらうから…」

「うん?」

(くくっ、楽しみじゃのー!)



リールーは猫キャラバンと旅をしてただけあって、テントの張り方も心得てるから任せてって言ってくれた。

これで野宿になっても安心だよ。

(別の危険がありそうじゃがな?くくくっ)

なんですかそれ…。危険なら笑い事じゃないのに。

(大丈夫じゃ、気にせんでよい。くくっ)

なんだよもう!



今日も一緒にお風呂に入って、真っ赤になってたリールーがちょっと可愛かった。

最初の余裕はどうしたんだろう。

言うと怒りそうだから言わないけど。

また噛みつかれたらやだし。



「しばらくはベッドともお別れかー」

ふかふかのベッドへ飛び込む。堪能しておかないと。

「なるべく宿屋に泊まれるようにはするよ」

「うん。でも無理しないでね。それにリールーとキャンプも楽しそうだし」

「それならいいけど」

外が危険なのは理解してるけど、テントを張ってキャンプとか絶対楽しい。

それに、ゲームのままなら敵の出ないところは絶対あるはずだし。




ベッドでぐっすりと寝た私達は、翌朝の鍛冶屋さんのオープンと同時にコートを受け取りに行った。

「出来てるわよ。一度着てみて。手直しするから」

ふわふわの毛皮のコートはあたたかく、しっかりしているのに重すぎることもない。ちゃんと軽装扱いらしい。

私は何度もエビドリアンさんにはお世話になってるから、サイズもぴったり。

リールーは多少の手直しをしてもらってる。

「これなら雪山へ登っても大丈夫そうだね」

「うん。まずはパルクルールへ向かおう」

毛皮や角など必要の無いものを売って、路銀の足しにもなった。


ルディアさんに出発の挨拶をしてブラックランをでる。

門にはダルさんがいて、“気をつけていけよ“って声をかけてくれた。


ルートは前回通った平地を行く。

ダンジョンはあぶない。私覚えた。

(難易度の低いとこから行って見るんじゃな)

わかりました。でも今は山へ行かないと。

(ま、そのうちな?)



道中は色々な人とすれ違ったり、狼や野生動物を見かけたくらいで、特にイベントもなく無事にパルクルールに到着。

今日はまたここで一泊して、明日の朝から山登り。 


一応パルクルールの依頼掲示板も確認したけど、出来そうなのがなかった。だって…

「依頼を受けるためのランクが足りなくて、ボクたちが受けられる依頼がほとんどない…。というか、ランクってなんだよ!」

ごめん。リールー、多分私のせい。

(皆の安全のためにした処置じゃ。頑張ってランクを上げるんじゃな)

ランクはどうやったら上がるのです?

(依頼を受けて、達成すると依頼ポイントがたまっていくのじゃ!)

いいねポイントみたいですね…。

(似たような物じゃ。祠で我ら神へ祈れば、ポイントに応じてランクは上がるのじゃ。まぁそれだけじゃなく我らが強さや人となりをみて、ランク付けはしておる。お前達は今、素人じゃ)

私、結構依頼やりましたよ!?難易度は高くないけど…。

(依頼ポイントシステムの構築が終わったのが今朝じゃからな、それ以降に一度も祈っておらんじゃろ)

祈れば適応される?

(そういう事じゃ。今朝からみんなランク付けでてんてこ舞いじゃ。我もちと手伝っておる)

いつの間にそんな告知が…。 

(掲示板の隅っこに書いておいたはずじゃが?)


「リールー、依頼掲示板に、ランク付けに関して説明書きなんてある?」

「ん? ………これかな。”冒険者の安全を考慮しランク制度を導入した。己のランクを知りたければ祈れ。貢物も忘れるなよ? 最高神アリエル“ は?最高神様直々!? シルビア、お祈りに行かないと!」

ちゃっかりお供えを要求してる…。

(良いではないかそれくらい。一人ひとりの強さや、今までの行いを見た上で判断するんじゃぞ?我らにも張り合いがないとやっとれんわ)

それは確かに…。冒険者ってかなりの数がいそうだし。

(じゃろ?)


「リールー、ここって雑貨屋が市場ってある?」

「お供え様だね? 食べ物なら宿屋でもかえるよ。ただ…」

「ただ?」

「みんな同じことを考えたなら在庫があるかわからないよ」

「そっか…」

そうだよね。ゲームじゃないんだし、街の人や他の冒険者も同じことを考えるよな。


「一応確認して、無かったら今日は諦めよう」

「そうだね、私達はしばらく山登りだし」

(つまらんのじゃ…)

必ず行きますから。


宿屋の在庫は当然の様にすっからかん。

泊まり客用の食事しか出せないって言われた。

私達は元々ここで泊まる予定だったし、前と同じようにダブルの部屋をとり、食事もつけてもらった。


お供え何にしようかな。

私はやっぱり眷属として、ランク付けはロリ神様にお願いするべきかな。

(当然じゃ!)





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