責任はだれにあるか
家に帰るとリールーも流石に起きてて、武器の手入れをしてた。
「ボクをおいてどこに行ってたの?」
「聖堂にお参りとお供えをしに行ってたよ。起こしたのにリールー起きないんだもん」
「起こされた記憶ないけど」
「何度も起こしたんだよ?」
「そうなの?それはごめん…」
「いいよ。今日は領主様のお屋敷に行くんだっけ?」
「そうそう。よく覚えてたね、えらいよー」
「バカにした?」
「前科があるしね?」
それを言われたら言い返せない。
出かける準備をして、ブラックランの領主邸へ向かう。
市場から階段を上がり、聖なる木の公園を通り抜けて、演説してるおじさんの近くにある階段を更に登る。
「私初めてなんだけど、簡単に入れるものなの?」
「それは大丈夫。私室とかじゃなければ自由に出入りできるよ」
「そうなんだ」
リールーの言うとおり扉は開いてて咎められることもなく入ることができた。
ゲームの主人公じゃなくても入っていいんだ。
(問題ないのじゃ。ロードもないしの)
気を使って、あえてそこには触れてこなかったのに!
「バルコニーってどこだろう…あの上?」
リールーが見上げているのはホールのロフト部分。あれもバルコニーなのかな?
「バルコニーになにかあるの?」
「そうらしいんだけど、上がってみていい?」
「うん。怒られないかな」
「へーきへーき」
領主様の玉座みたいなエリアの右横にある階段を登る。
衛兵さんにも特に咎められたりもしなかったしいいんだろう。
下から見上げてたロフト部分を見て回るけど何もない。
「おかしいなぁー」
反対側も見てみたけど収穫はなし。
「バルコニーってここじゃないの?」
後思いつくのは、ドラゴンを罠にかけるところくらい?
もう一つは領主様の私室エリアだから入るわけにはいかない。
「リールーこっち」
「知ってるの?」
「この大きな扉から外へ出られるんだけど、そこかなーと思って」
「ふーん…」
扉を開けて外へ出ると真正面に空が見える。
(何をしとるんじゃ、お前たちは)
リールーが、多分グライダーを探してるんだと思います。
(そんなところにはないぞ?)
え?でも本を見ながらここにあるって…。
(山の上にしかないんじゃ)
じゃあリールーは何のために本を読んだんだ…。酷い馬車に揺られながら読んでたのに!
本を見てない私がここにはないって言っても、説得力なんてないし…ここはリールーの気が済むまで付き合うか。
(無駄じゃとおもうがのー)
「バルコニーの高いところって言うと、両脇の階段を上がればいいのかな。よし! シルビアはそっちをお願い」
リールーはそう言うと左側の階段を駆け上がって行った。
あんなに楽しそうなのに邪魔したくないよ…。
私は右の階段を上がる。
ここアレだ。捕まえたドラゴンを逃がすための、罠を解除するスイッチがあるんだよね。
グライダーね…あるといいな。
「あったーーー!」
リールーの叫び声。
(嘘じゃろ…?)
これはリールーの粘り勝ちだね!
(おかしいじゃろ!)
(私が置きました)
(なんじゃと!?)
その声はキナエル様!
(はい。面倒なことを全部丸投げしてくる誰かの代わりにちゃんと仕事しましたから)
ありがとうございます!
階段を降りてリールーと合流するとキレイなグライダーを抱えてた。
「これでボクも飛べる!」
「よかったね。でも本当に気をつけてね?」
「なになにー?ボクの事心配なんだー?」
「当たり前でしょ!」
「あ、ありがと。気をつける」
(安全対策もしっかりしましたから大丈夫ですよ)
ありがとうございますキナエル様!
「もう一つ手に入れて一緒に飛ぼうシルビア!」
「私も!?」
嬉しそうなリールーに逆らえず、山の上にあるっていうグライダーを取りに行くことになった。
領主邸をでて広場まで戻る。
「雑貨屋で防寒具買っていこう。山は寒いからマフラーだけじゃダメだからね」
雑貨屋…雑貨屋って言うと
(閉店しておるのじゃ)
あっ! 私を売ったおっさん兄の…。
「リールー、ごめん。この街に雑貨屋はもうないんだよ」
「宿屋の向かいにあるでしょ?」
「潰れた…」
「はぁぁ?なんで雑貨屋が潰れるの?」
「ごめん、私のせいなんだ」
(お前のせいではないじゃろ)
でも…
「シルビアのせいってどういう事?」
「…話すと長くなるんだけどね」
「理由がありそうだし、ちゃんと聞くよ」
公園のベンチに座り、店主が兄だったこと、売られて連れて行かれる所を衛兵さんに助けられたことを話した。
「それ、シルビアは何も悪くないよね。妹を売るとか最悪じゃんソイツ」
「でもそのせいで潰れたから…」
「売っちゃいけないものを売って、罪に問われたなら自業自得。シルビアは被害者だよ」
(リールーもそう言うておるんじゃ、気にするな)
はい…。
「鍛冶屋でも扱ってるかもだし! なくてもリバーサイドに雑貨屋はあるから、そこに行けばいいよ」
「うん」
「まったく! シルビアが無事でよかったよ。じゃなかったらボク達出会えなかったんだし」
「そうだね」
「とりあえず鍛冶屋に行くよ」
リールーは私の手を引くと、市場への階段とは違うルートで鍛冶屋さんへ向かう。
気を使ってくれたのかな。市場を通ると雑貨屋跡地の前を通るし。
意識してなかった時は気にせず通りすぎてたけど…潰れたせいで困る人もいるんだよね。
(それがお前のせいじゃとでも?)
ちゃんとスタートを選ばなかったし、雑貨屋の妹として役に立ってなかったみたいだし、いろいろ要因が…
(あの店主の性格は元々じゃ。お前が居ても居なくても結末はさして変わらん)
そうでしょうか…。
(遅かれ早かれ、金欲しさに何ぞやらかしたじゃろうな。だからな?あまり気にするでない)
わかりました。
鍛冶屋のエビドリアンさんは毛皮でコートを作ってくれるって言って、私とリールーのサイズを測ると作業に取りかかってくれた。
「手持ちの毛皮も引き取ってもらえて、ぴったりサイズを割安で作ってもらえるんだから雑貨屋より良かったね」
「そう、だね…」
「まだ気にしてるの?」
「リールーは嫌じゃない?私、身内に売られたような人間だよ?」
「じゃあ…ボクがもらってもいいよね。シルビアを」
「え?」
「それで、大切にする。ずっと一緒!」
「リールー…」
「ほら、コートが出来上がるのは明日なんだし、今日は準備するよ! 長旅になるだろうからね」
「うん。 あ、でもテントなら持ってるよ」
「じゃあ食料品とかだね。午後は狩りにでも行く?得意でしょ」
「わかった! リールーの分も仕留めるよ」




