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宿屋の夜



「見られた…」

「それはボクも同じ」

リールーとお風呂に浸かりながら、私は羞恥に震えてる。


「だからいいの?って聞いたのに」

「だって、誰が男の娘だと思う?」

「ボクって言ってたじゃん」

「可愛い顔して、華奢で、フワフワのゴスロリ着た子だったら女の子だと思うよね!?」

「勝手にそう判断したのはシルビアでしょ…」

「しかも! 一番腹立つのがこの状況で動じないリールーだよ!」

「…ふっ」

「オイコラ。今どこを見て笑いやがりましたか!」

くっそ…。

……いやちょっと待てよ?


ロリ神様、知ってましたよね?

(…なんのことじゃかわからんなぁ?)

絶対そうだ。

(ほう?なぜそう言い切れる?)

だって神様は万能なんでしょ?!

(ふむ。じゃがちと違うの)

なにがですか!

(万能ではなく全能じゃ!)

問題はそこじゃねぇんですよ!! 知ってたなら教えてほしかった! 

(はて…)

全能とかいっといて、しらばっくれやがりますか!

(まぁ、良いではないか。今更じゃろ)

そうですけど…。

納得いかねぇ!!


「シルビア…」

「ひゃいっ!」

「襲ったりしないから、落ち着いてよ」

「その心配はしてないけど…」

「それはそれでなんかムカつくけど。 今はいいや。 ボクの秘密を知った以上、一心同体。これからはパートナーだからね?」

「はい?」

「だから! このままパーティ組んで!」

「それはいいけど…。色々経験済みとか言ってなかった?その相手はどうしたの」

「……」

「あー…。はいはい。見栄張ったのね?」

「うーるーさーいー! こうなったら…」

「ちょっ…やめっ! 洒落ですまないやつ!」

「シルビアはボクのモノー!」

「いやぁーー」 ”ピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロンピロン……”

色神様、いいねしてないで助けて!


……………

………



宿屋の二階、ダブルの部屋。今更だけど別々の部屋にしたほうが良かったんじゃないか?

(それこそ今更じゃろ) 


「酷いよ、リールー無理やりなんて。痛かったよ…」

「うるさい。元はといえばシルビアのせいでしょ」

何故かリールーに首に歯型をつけられた。

リールー曰くマーキングしたってことらしい。

歯型が消えるまでにお互い気が変わっていなかったら、そのままパートナーとしてやっていこうっていう約束みたいな物なんだとか。

「だからっていきなり噛まなくても…」

「キャラバンのネコに教わったんだよ。物心ついたときからボクはネコのキャラバンにいたから」

「そうなの? そういえばキャラバンと一緒にブラックランに来たって言ってたね」

「うん。でもボクも大きくなったし、そろそろ自分で仲間を見つけて旅をしたかったからね」

それでキャラバンと別れたのか。しっかりしてるなぁ…。


「さてとー、シルビア。行くよ」

「へっ?」

お風呂も入ったし、朝にリールーが取ってくれた鮭も、お店の人に頼んで塩焼きにしてもらって夕食に食べた。

あとは寝るだけだよね?

「吸血鬼退治!」

「あっ…」

「完全に忘れてたでしょ?」

「リールーに襲われてそれどころじゃなかったから…」

「人聞きの悪いこと言わないで。噛み付いただけじゃない」

「傷物にされたー」

「はいはい。責任は取るから早く仕度して」

「はーい…」

着替えて、装備を整えて一階へ降りる。


「夜は宿屋にいることが多いから、さり気なく探して」

「うん」

これ、ロリ神様にもらったミニマップの表示で見つけられるんじゃ…?

(そんな甘いわけないじゃろ)

でも敵は赤くなるって…。

(あくまてもお前に対して敵対したら、じゃからな)

潜んでて敵対してこなかったら分からないって事?

(うむ)

使えねぇですね…。

(今日のダンジョンのように、即敵対する状況ならわかるんじゃから贅沢言うでない)

そうですね…。



冒険者風の人、吟遊詩人、商人と護衛…。みんな吸血鬼の特徴はない。

後は…宿屋の従業員。それにこの街の人かな?街の人がよく着てる服だし…ん…?あれ?

隣で蜂蜜酒を飲みながら周りを見てるリールーに伝える。

「ねぇ…あの女の人」

「ん? 正解。取り押さえるからトドメお願い」

「ここで?宿の中だよ!」

「大丈夫。騒ぎになっても吸血鬼だって分かれば問題ないから」

そういうものなの!?


お酒の瓶を持ってふらふらと吸血鬼へ近づいたリールーは、そのままよろけた風を装い押し倒して取り押さえる。

「吸血鬼!! シルビア!」

「はいっ!」

私が素早くつがえた矢は、リールーの取り押さえる吸血鬼に吸い込まれる様に刺さり…嫌な光を発しながら灰になっていった。

リールーは素早くそれを回収。


「吸血鬼がいたのか! 助かった」

「嬢ちゃん達やるじゃねぇか!」

いや、その子男の娘…。

宿にいた人に感謝されて、店主には飲み物を奢ってもらえた。

街の人にこういうリアクションをされるとゲームじゃないなって実感する。

「助かったわ。あのままにしていたら大変なことになっていたわね」

「いいよー。これも仕事だからね」

リールーは慣れたようにそう言う。

私はまだドキドキしてる。ダンジョンでやられたのも吸血鬼だったから…。

ちゃんと倒せて良かった。


「シルビア大丈夫?」

「うん…」

「もう休もうか?」

「そうだね」


二階のベッドに二人でもぐりこむ。一人じゃなくてよかった。リールーがいてくれて。

「大丈夫だから、ゆっくり休みなよ」

「ありがと、リールー」

しばらく眠れなかったけど、リールーが手を繋いでくれて、その温かさにいつの間にか眠ってた。

”ピロン”







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