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上って下って



井戸の近くでウロウロしてる鶏にパンくずをあげながらリールーさんを待つ。

ハッキリとした時間を決めておかなかったから仕方ないけど、遅いなぁ。

(もうちょっと待つのじゃ。そろそろ来るじゃろ)

なんでわかるんですか?

(神じゃからな!)

神だからって言葉万能ですよね。

(実際そうじゃしの?)

それもそっか。


「お待たせー!」

「リールーさん、おはようございます」

相変わらずゴスロリ姿なんだ。この姿で返り血浴びたりするのを想像したら怖すぎる。

「おはよう。どこへ向かうかとか決めてるの?まだなら掲示板見にいくけど」

「パルクルールっていう街をお勧めされたのでそこへ向かおうかと思って」

「うん。いいよ。じゃあそこへのお届け依頼とか無いか見てみよう」

すぐ側にある依頼掲示板を確認するも、パルクルールへの配達依頼はなかった。


「これならどう?」

リールーさんが取ったのは吸血鬼退治。ここへ来た初日からあるやつかも。

「私、戦ったことないけど大丈夫かな…?勝てるかわからないけど」

「へーきへーき! これでもボク強いからね。それに、これって、民間人に偽装して、一人でウロウロしてるから見分けることさえ出来たら簡単」

「目の色とか?」

「そうそう。達成報告も退治した街ですればいい。吸血鬼は倒すと灰になるからそれを証拠として届けるだけ」


さすが先輩冒険者。

足を引っ張らないように気をつけよう…。

 


ブラックランの門を出て振り返る。

しばらく帰らないだろうから見納め。

「よしっ行こう」

「待って、ルートはどうするの?」

リールーさんが地図を広げて見せてくれる。私はロリ神様のマップがあるけど、普通はないのか。

(当たり前じゃ。眷属特権じゃな)

お世話になります。


「パルクルールへ行くなら、平地を使うけど遠回りなルート、山越え、ダンジョンを抜ける、と色々あるけどどうする?」

「リールーさん詳しいですね」

「それ、やめない?」

「うん?」

「ボクの事はリールーでいい。ボクもシルビアって呼ぶから。あと普通に話して」

「わかった。リールー」

「ん。で、ルートだけど、どうしたい?」

「オススメは?」

「安全なのは平地かな。楽しいのはダンジョン」

「じゃあダンジョンで!」

「いいね、好きだよそういうの」

道はリールーが知ってるって言うからついていく。


「まずはリバーサイドへ行くね」

「わかった。そこは少し前に、荷物を届けに行ったから知ってるよ」

「近いもんねー。ところでシルビアって何歳?女の子?」

「女だよ! ほら!」

「可哀想に…」

「うっせぇですよ! そっちだって似たようなものでしょ!」

「これはステータス!」

「私のだって!」

(醜い争いじゃな)

貴女も同類ですからね?ロリ神様。

(我は姿は変えられるしのー)

そんなん私だってキャラクリし直せば…

(やるのか?)

やんないけど…


「それで年齢は?12歳くらい?」

「15だよ! 成人済みだよ! なんなら、はちみちゅしゅだってのめ…る…」

「あはははっ!」

「そっちこそ何歳だよ!」

「16だけど何か?蜂蜜酒も飲んだことあるし、色々と経験済みだけど?」

「くっ…別に負けたわけじゃねぇですから!」

「はいはい。置いてくよー」

くっそ…なんだか楽しぃじゃねぇですか…。

(よかったのぉ。 それが素か?)

え?

(話し方じゃ)

わかりません。記憶ないですし…

(そうじゃったな…)

気にしてませんから。

(そうか?ならいいのじゃが)

はいっ!




道中はほのぼのしたもので、嘘つきのホライクって猫にリールーがうざ絡みしてた。

「ねぇねぇ、なんで嘘つくの?」

「ホライクは何でも知っている」

「それも嘘だよね?ねぇ?」

「ホライクはもう疲れた」

「嘘つく事に?じゃあやめなよ!」

いやリールーがやめてやれよ…。ヒゲがテローンってなってんじゃん。


まだ絡み続けそうなリールーを引っ張って進む。

「面白いよね、あの猫」

「可哀想になってきたよ?」

「見つけると毎回話しかけるのはお約束!」

「本気でやめてあげて」

「大丈夫! 次に会ったときには忘れてるから」

「記憶力やばいな…アレだけ絡まれて忘れるのか」


今回はリバーサイドも素通りして進む。


「リールー。待って…多分狼がいる」

「わかるの?」

「なんとなく…」

「…ふーん、わかった」

リバーサイドを過ぎてしばらく行くと案の定、狼。しかも三匹。

遠距離から私が一匹を矢で仕留めてるうちに、リールーは走り込んで…片刃の刀みたいな両手剣であっさりニ匹を仕留めていた。


「ふぅ…ほんとにいたね」

そう言いながらもきっちり毛皮等を回収しているあたり手慣れてる。

私も仕留めた狼から矢を抜き、毛皮を取る。

「おっ、ラッキー。宝石付きの指輪ゲットー」

リールーの嬉しそうな声が聞こえる。ゲームでもたまにあったなぁ。

拾い食いでもしてるんだろうか。

(宝飾品をか?)

だって狼が装備はしないでょう。


「そうだ、報酬の話ししてなかったね」

「それはいいけど、まず血を流さない?ホラーじゃないんだから」

「おーそだね」

近くの川で手を洗う。

血みどろのゴスロリどーすんだろ…。 は?

「今、なにしたの?」

「ん?」

「いや、一瞬で服の血が消えた…」

「あぁ、早着替え!」

「えー…」

ゲームでも一瞬服を脱いで着れば消えたけども!

(くくっ…お前はほんとに面白いの)

だって!

(仕様じゃ!)

あ、はい…。


「報酬はきっちり半分! これは譲らないからね」

「いいの?私のが新米なのに…」

「いいの! 嫌なら解散!」

「それはヤダー! それでお願いします!」

「よし! じゃー行くよー」

「待って、置いていかないでよー」


坂を登ると大きな三つの石塔。

それぞれ触れると効果が…

(ないぞ?)

成長速度の上がる効果が…

(じゃから、ないと言うておる)

バグ?

(まぁ。そのようなものじゃ。神の統合をした時に、その辺の物がパーン! とな?)

大丈夫かこの世界…。

(キナが、修復中じゃ)

キナエル様、可哀想…。ロリ神様の尻拭いを…。

(我の配下なんじゃからそういうものじゃろ)

知りませんよ?そんな事ばかりしてて愛想尽かされても…。

(…我ちょっと手伝ってくるのじゃ)

はーい。可愛いとこあるよねロリ神様。



「よっと…」

「そっちへ降りていくの?」

「近道なんだよ、川の横を通るから少し濡れるけどね」

「へぇー」

「ちっ…狩人がいるな…居なかったら箱の中身貰えたのに」

「ナチュラルに盗っ人しようとしないで!?」

「知ってる?バレなきゃ賞金はかからない!」

「知ってるけど!」

狩人のキャンプ脇を通り抜け、湖のギリギリを歩く。


「うわっ…」

「シルビア、池ポチャする」

「ブーツだからヘーキだし!」

リールーは器用にギリギリを歩いて濡れることなく通過。

私は水没。ブーツなのに…。


「んぁ…? 戦ってる音がするな」

「ほんとだ。んーあれ、熊だね」

「よく見えるね?」

「弓使い舐めないで」

本来なら弓を構えてないとズームできないはずだったのだけど、普段から使えるんだよなぁイーグルアイ。


「助けは必要そう?」

「多分大丈夫。四人組の冒険者っぽいし」

「そう。手を出したらトラブルになりそうだね。ちょっと待とう」

「わかった」

リールーは湖の近くまで行きパシャパシャと遊びだした。

ここキレイだよなぁ。この湖のそばって、人気な建築スポットじゃなかったっけ…。

(そうじゃな、パルクルールで名を売れば土地を買えるやもしれんぞ?)

買ってもなぁ…家を建てられる気がしない。

(それもそうじゃな。イリタマゴ湖は人気スポットなんじゃがなぁ)

ちょっと待って…名前よ! 朝食ですか?

「あっ、鮭だー!」

そう言いながら素手で鮭を取っていくリールー。

「いやクマかよ! 朝食が豪華になったわ!」

素手でパシッと鮭を仕留める人間初めて見たし。

「イクラはなしかぁ…」

「それ、遡上中のしか持ってないよ?」

「え?」

「だから、川を上ってる鮭しか持ってない」

「マジで?」

「うん」

「いつかとりにいこう!」

「わかった。 取り敢えずその鮭は夕飯にでもしよう」

「んだねー」


リールーがクマやってる間に、冒険者の熊退治は終わったようなので前進する。


進み遅くないかな?

(こんなもんじゃろ)







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