初めての仲間?
(シルビア、そろそろ起きるのじゃ)
「んぅ…もう眠れないよ…」
(ならとっとと起きんか! なんちゅー寝言じゃ…)
「ふわぁ〜…おはようございまふ…」
(うむ、昨日の約束覚えておるか?)
「はいー。いい場所に案内してくれるって…」
(そうじゃ。とっとと着替えて行くのじゃ!)
ロリ神様に急かされて着替える。
このまま出発する予定だし、武器類もしっかり装備。
宿を出るとまだ空は薄暗い。
眠ぅ…
(宿を出たら裏手にある山に登るのじゃ)
はーい…。
薄暗いから足元に気をつけつつ山、と言うか崖を登る。
めっちゃ急なんだけど…。
(登る価値はあるんじゃから頑張るのじゃ)
ようやく登り切ると、目の前にはドラゴンの骨。
でっか!! これってまさか…?
(うむ。勇者の倒したドラゴンじゃな。元々は村の真ん中にあったんじゃが、流石にな?)
よく移動できましたね、こんなサイズ。
(勇者が魔法で一瞬じゃったぞ?)
勇者やべー…。
リアルに見る初めてのドラゴン。骨だけど。
ぐるっと周りながらじっくり見てみる。
触れてみると、太くて…カタい…。 ”ピロン”
だからなんで!?
(色神が反応しとるようじゃな。お前がちぃーとも男も作らんから、業を煮やしておるんじゃろ)
知らんし…。か、彼氏とか欲しくないし!
(ほー?)
それより、ここにもロリ神様の像があるんですね。
(露骨に話しをそらしよったな)
そんなことないです!
手持ちにおやつが無いからお供えは出来ないけど、お祈りだけはしておこう。
跪いて祈る。
(律儀なやつじゃな)
感謝はしてますし。毎日楽しいですもん。
(照れるではないか…)
立ち上がり目を開けると、薄ら明るい。
日の出だ!
(うむ…よい景色じゃな)
はい…。今日も一日頑張ろうって思えますね。
しばらく日の出を見守ったあと、山を降りた。
今日は、ブラックランに帰らないと。
「シルビアさん!」
「はい?」
誰? あぁ…。鹿殺しさんか。
「どうかしました?」
「シルビアさんはブラックランから来たってオヤジに聞いて、もしかして今日帰ります?」
「はい。そのつもりです」
「よかったら案内してもらえませんか?」
「ブラックランへ?」
「はい。ここでは依頼も少ないし、ブラックランなら戦士ギルドもあるって聞いたので」
あったっけ?
(あるぞ?聖堂の近くにな)
あぁ…あれ戦士ギルドなんだ。そう言われたそっか…。
「いいですよ。このまま出発しますけど、大丈夫です?」
「すぐ準備してきます!」
(ついにオトコなのじゃな?)
ないない。タイプでもないし…。
(なんじゃ…つまらんの)
私はもっと中性的な美形の人がいいです。
(ふむ…なるほどなのじゃ)
あの人の外見を変えるとかしないでくださいね!?
(ダメか…)
今から変わったら違和感しかなくて気持ち悪いですって…。
「お待たせしました!」
ガッツリ重装に、グレートソードを背負って一端の戦士みたいなってる。
なんだけど…なんだろ。すっごく頼りない感じが拭えない…。
(農民スキルしかないしの)
元々畑を耕してたものね…。でも、農民スキルで最強! とか…
(あるわけ無いじゃろ。農民すら途中でほっぽりだしとるのに)
だよねぇ…。
街道を進むのならよっぽど大丈夫だろうし、のんびり行くかー。
隣を歩くエルクスレイヤーさんがめちゃくちゃ話しかけてくるから適当に相槌を打ちながら進む。
(ようしゃべるのーこやつ)
初めての冒険らしいですし…。
ただ、エルクスレイヤーさんの元気も、途中で絡らんできた山賊のせいで萎むことに。
私を小娘と見たのか一人のくせに襲いかかってきた。
エルクスレイヤーさんが、武器を構える暇もなく、あっさりと殴り飛ばされる。
「や、やめろ! やめてくれ!」
尻もちをついたまま後退るエルクスレイヤーさん。
「女連れで調子乗ってんじゃねぇ! あの女は俺が貰っておいてやるからよぉ」
私の意志は!? こんな奴に言ってもしゃーないけども。
スキだらけにコチラへ背中を見せてるから弓で一撃。
馬乗りで止めを刺そうとしてた所に矢が直撃した山賊は、エルクスレイヤーさんに覆いかぶさる形で倒れて絶命。
「ぎゃーーーー!」
(やかましい男じゃな)
「大丈夫ですか?」
「やめろ! はなせ!」
聞いてねぇですね。
仕方なく馬乗りの山賊を蹴りどかす。
「倒しましたから。落ち着いて」
「やめっ…は?」
「だから山賊は倒したからもう大丈夫です。怪我してません?」
「あ、あぁ…殴られてコケただけだから」
「そうですか」
「…助けてくれてありがとうございます」
「いいですよ。それより、余計なお世話かもしれませんけど、装備重たくないですか?」
歩くのも私が合わせて速度落としてたし、武器さえ抜けてなかった。
「中古で買えたのがこれだったらしくて…武器だけは良いものをってオヤジが頼んでくれたんです」
「合わない装備は戦いにくくて、かえって危ないですよ。その山賊の持ってる装備は軽装なので試してみたらどうです?」
「…死体から…?」
これが普通の反応だよなぁ…。
仕方ない、私が回収しますか。
装備品を一通り回収して、亡骸は魔法で弔う。
「バッチくて臭いですけど、試してみてください」
「わかりました…」
岩陰で着替えるエルクスレイヤーさんを待つ。
(世話の焼けるやつじゃ)
そうかもだけど…私は神様達のおかげで戦えてるだけですからね…。
戦えない普通の人を責める資格はないですよ。
(そんなことはないのじゃ! 頑張って戦って、いいねポイントを貯めてきたではないか)
そうですけど…。
「お待たせしました。確かにこっちのが動きやすいです」
革系の鎧は防御力は落ちるけど、軽くて動きやすい。ゲームの時はそうだった。
「武器は、ブラックランに着いたらいい鍛冶屋さんを紹介しますからそこで相談してみてください」
「ありがとうございます」
それ以降は襲われる事もなく、順調に街道を歩いてきた。
始めの元気もなくして大人しくなったから、道中は静かなものだった。
ただ、最初に手間取ったのもあって、ブラックランが見えてきたのは夜中近くだった。
この時間にダルさん達の家に帰るのも迷惑だし、今日は私も宿屋かなぁ…。
そんなことを考えながらブラックランの門を抜けたら、ルディアさんが仁王立ちしてた。
怒られる!?
「やっと帰ってきたわ! 心配したのよ?」
そう言って抱きしめてくれた。 あったかい…
「ごめんなさい。ただ今戻りました」
「おかえり。無事で良かったわ。 この人は?」
「初めまして! エルクスレイヤーと言います! シルビアさんのお姉さんですか?」
美人なルディアさんに緊張してるな…。だけど残念。その人、人妻だからね?
今からじゃ宿も取れないだろうって、ルディアさんはエルクスレイヤーさんも家に泊めてくれるらしい。
おい、変な期待してるんじゃねぇですよ。
(ザコのくせにそっちはいっちょ前なんじゃな!)
流石にそこまで言ったら可哀想。
自宅でダルさんを旦那様だと紹介されて固まってたのは笑えたけど。
(人妻で燃えるタイプじゃなかったのじゃ…つまらん)
物騒なこと言わないでください。修羅場とか勘弁ですから!
エルクスレイヤーさんはルディアさんとダルさんが勇者パーティのメンバーだと知ってめちゃくちゃ興奮して、話をせがんでた。
私は疲れたし、お風呂入って寝ます。
(あやつ、生意気にも弟子入り志願しておるぞ?)
がんばれー。私は関与しません!




