初めての遠出
何日かかけて、闇神様、魔神様、戦神様、食神様、銭神様、あと何故か色神様のいいねポイントも貯めることができた。
そろそろ、少し遠出をしてもいい頃かもしれない。
(そうじゃな、ちなみに色神の”いいね”はお前がビキニアーマーを着てうろついたからじゃな)
どういう理屈!?
(何人かを、ムラムラさせたとかじゃろうな)
聞きたくなかったその情報。もう着ない…って言いたいけど、あれ性能いいんだよなぁ。
(じゃろ? まぁ、どうしてもと言うなら露出を減らしてやれんこともない)
お願いします!
(仕方ないの…前にも食べたベリータルトがまた食べたいのじゃ)
わかりました。買ってきますから!
(ほれ)
ロリ神様のその声とともに、着ていたビキニアーマーがスカート付、且つお腹も革製のコルセットで守るデザインに変わる。上半身はインナーを着たような状態に。脚はニーソックスに、ロングブーツ。
可愛い! ありがとうございます。
(うむ)
ルディアさんに、今日は少し遠出するかもしれない事を伝えて家を出る。
「あら、シルビアちゃん。今日も狩り?」
話しかけてきたのは鍛冶屋ワルキューレの女店主エビドリアンさん。弓を作って貰った後も何度もお世話になった。
切れ味の落ちた剣の研ぎ方を習ったり、集めてきた革の鞣し方を習ったり…弓の強化もしてもらった。
今や弓にスコープがついてる。
「まだ依頼は決めてなくて…ただ、少し遠出してみようかなーと」
「それなら丁度いいわ。武器をロリッコテッドへ届けてほしいのよ」
村の名前よ! ロリ神様のせいだよね?
(…ほっとけ!)
配達料金と共に受け取ったのは大きなグレートソード。
マジックバッグがなかったらきつかった。
「宿屋の息子さんが冒険者デビューするらしくてね」
あぁー! あの物騒な名前の人か!
街を出て、地図を開きロリッコテッドの場所を確認。
この地図はロリ神様のいいねポイントと交換してもらったもの。
普段はミニマップ状態で視界の端に見えている。
慣れるまでは違和感がすごかった。
ただ、ロリ神様からの”いいね”って今の所お供えした時くらいにしかもらってないんだよね。
(よいではないか。不満か?)
そうじゃないけど、他に条件ないのかなぁって…。
(そんなもの決まっとるじゃろ)
え?
(我の気分次第じゃ!)
めちくちゃやん…。キナエル様達のこと言えないと思う。
(やかましいわ。我は最高神ぞ? それより馬車で行くのか?)
うーん、売られた時に乗ってお尻が痛かったから、あんまり馬車は乗りたくない…。いい思い出もないし。
(それは仕方ないのじゃ。歩いても行けるからのんびり行くのはどうじゃ?)
うん。そうするー。あんな馬車に乗ったらお尻が割れちゃう。
(すでに割れとるじゃろ)
ナイスツッコミ。
この何日か毎日のようにロリ神様とやり取りをしてて、仲良くなれた気がする。
神様に対して不敬かもしれないけど…。
(気にする必要はないのじゃ。トモダチじゃろ?)
うんっ!
ブラックランの街を出て、ミニマップを見ながら街道沿いにまずは西へ向かう。
途中、猫獣人さん達のキャラバンとすれ違ったり、行商人とすれ違ったりと、記憶にあるゲームより人口が多い気がする。
(当然じゃ。街もゲームより大きくなっておるし、家や住人も増えておるのじゃ)
そうなんだ…。私のゲームの記憶がそろそろ役に立たなくなりそう。
(もうすぐ、前回衛兵が壊滅させた山賊共がアジトにしておった砦じゃな)
あそこに居たのかぁ。確かに山賊とかがいつもいたなぁ。
(む…また根城にしておる奴らがおるのじゃ。どこから湧いたんじゃ…まったく)
隠密姿勢で、少し遠回りしつつ砦をやり過ごす。
ゲームと大きく違うのはみんな生きているって事。
(当たり前じゃろ。何を分かりきったことを言っておるのじゃ)
そうじゃなくて。
ゲームなら予め設定されてる動きしかしないけど、生きてると複雑な行動もするから。
(ピンとこんのじゃが?)
例えば、この砦もゲームなら近くまで行かなきゃ襲われないけど…ほら見て?
(ん? あー、待ち伏せか…)
街道際の草影に数人隠れてる。
街道沿いの砦に住み着いてるのなら、当然旅人や行商人を襲うでしょ。
だから隠密のままやり過ごす。
(懸命じゃな…また神託で衛兵に退治するよう伝えておくのじゃ)
衛兵さん達が常駐しなきゃ同じことの繰り返しな気もするけど…。
私がどうにかできる問題でもないしなぁ。
遠回りして砦と山賊をやり過ごし、安全なところまで離れてホッとした瞬間に叫び声と剣戟の音に慌てて振り返る。
どうやら街道を普通に進んだ人と待ち伏せしてた山賊とがぶつかったらしい。
んーどうしたものか…。
(冒険者らしいから任せて大丈夫じゃろ)
ロリ神様がそう言うなら。
道端の草花を摘みながら歩く。
途中、単独の盗賊に襲われたけど返り討ちにした。
鎧や武器は貰っておく。亡骸を放置もできないから、いつもの様に処理。
人相手だと、なんかもっと抵抗感があるかと思ったけど、平常心過ぎて逆に怖くなる。
(我の加護があるからな。お前の心を守っておる)
なるほど。理由がわかればまだ安心。
知らないうちに残虐な人間になっていたのかと、不安になった…。
(そんなことはないのじゃ。安心せい)
のんびりし過ぎたせいで、ロリッコテッドに着いた時には、薄暗くなってた。
今日はここの宿屋で一泊しよう。配達もこの宿屋だし。
えっと…どの人だろ。
(その椅子に座っておるやつじゃ)
ありがとうございます。
「あのー鍛冶屋ワルキューレから武器をお届けに来ました」
「あぁ、やっとか! ずっと待っていたんだよ!」
グレートソードを渡して、配達料金と、受け取り票を貰う。
「貴女も冒険者ですよね? 次にあった時にはお互いの冒険の話をしましょう」
冒険者なの?私
(一応そうじゃな)
そっか。
「わかりました。またお会いしたときには…」
「僕の名前はエルクスレイヤー。よろしく!」
エルクって鹿の一種だよね?鹿殺し?
ただの狩人じゃん! 弓使えよ!
「し、シルビアです…よろしくお願いします」
部屋を借りるためにカウンターへ。
「食事や部屋が必要なら言ってくれ」
「一部屋お願いします。後…お風呂ありますか?」
「あぁ。地下にある。一泊100ゴールドだ。宿泊なら風呂代はサービスしとくよ」
「ありがとうございます」
「お部屋へご案内します、こちらへ」
宿屋の料金高くなってる…。
(もとが安すぎたからな。バランスおかしいじゃろ)
そう言われたらそうだけど。
案内されたのは二階の部屋。
この宿屋、二階建てだっけ?
(人が増えたからの。どの宿屋も拡張されておるのじゃ)
へぇー。
この村には聖堂がないし、市場もないからお供えが買えないし渡せない。ごめんなさい…。
(よいよい。夜が明けたらいい場所に案内するのじゃ)
いい場所?なんか不安だけど、楽しみにしておきます。
(うむ!)
さてと、お風呂入ったら直ぐに休もう。一日歩いたから流石に疲れた…。




