2話 いつも通り
高校生活2日目。僕はある事実に気が付いてしまった。
「なんか…、グループが既に出来上がっている?」
まさか僅か1日の間で、それもオリエンテーション終わりの放課後の時点で彼らは意気投合したというのか!? 僕は周りにいる生徒たちの様子を注意深く観察した。
「いや、これはまさか…」
彼らが話しているのは、友達になりたての人がよく行う趣味の紹介などではなく、中学での思い出話や新しい学校にある部活動の話ばかりのように聞こえる。
そう、彼らは皆少なからず1人は中学からの友達を持っていたのだ。皆おそらく新しい学校生活はあまり緊張していないんだろう。
ほら、今陽キャっぽいまあまあなルックスの青年が女子に話しかけに行って……意気投合したのかすぐに仲良くなってしまった……。
「このままではまずい! 誰かと話をしなければ!」
そう意気込んだは良いものの、その一歩が踏み出せない。長年培ってきたその臆病な性格が僕に勇気を振り絞らせることを邪魔するのだ……。
失敗したらどうしよう、ここで意味不明な事を言ってしまうと気持ち悪がられるぞ……などと考えているうちに、4時間目が終わってみんなが席を立ち始める。
しばらくすると教室の後ろのドア近くに位置どっている僕の席に男子の一行が近づいてきた。今がチャンスだぞ!がんばれ僕!
「……あ」
僕が50音の最初に発音される最も言いやすい1語をやっとの思いで絞り出した時には、すでに彼らは教室を出て食堂へと向かっていた。
僕は大きなため息をついて母が作ってくれた弁当箱を開き、すっぱい梅干しを口に放り込んだ。
「結局こうなってしまうのか……」
その後、努力もむなしく2日目が終わり、次こそはいける!と思い続けて気づいたころには、すでに入学から2週間が経っていた。クラス内はすでに皆が和気藹々としており、あたかも卒業前ような確固たる信頼関係が彼らの間で既に出来ているように感じる。
クラス内で僕は一人浮いた存在ーーすなわちボッチとなっており、彼らからは僕はいないとして扱われてしまっていた。
「皆友達がいるんだな……。くそう…」
最後の希望であった部活動も、部室の扉を開ける勇気が無かったために無事帰宅部になってしまったのである。
そんな自分の不甲斐なさを噛みしめて僕はいつも通り1人ぼっちで自宅へと帰宅した。
晩御飯を食べて自分の部屋に戻った僕は、おもむろに左手にある押し入れの中から美術の授業で使うスケッチブックを取り出し、そのうちの1枚を切り取った。
そして油性ペンを取り出し自分のこの感情を紙に押し付けるかの如き勢いでペンを紙上に走らせた。
【深友高校トモダチ研究部】
この部活は『真の友人』とは何かを研究し、『真の友人』を作ることを目的としています。あなたも〈トモ研〉に入部して友達を作り、華のハッピー高校ライフを楽しみましょう!
〇部員数:現在1名
〇入部条件:誰でも大歓迎
あなたの入部を心よりお待ちしています!
「ハハハ…… 何を書いているんだろう、僕は。」
その意味不明なポスターの内容を見た僕は乾いた声でそう呟き、改めて自分の狂気度を確認した。
まだ長文を書くことに慣れていないので、だいたい1000字を目安に更新しています。ご了承ください。