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駆け足展開で、最後の四天王が登場

いつもご覧いただきありがとうございます。

ブックマークいただきました。重ねて御礼申し上げます。


ついに? 最後の四天王が登場です!

「ご迷惑をおかけしやした! アッシらはこれで失礼いたしやす!!」

 ずいぶんと低姿勢になったモウモウは、ノルンにへこへこと頭を下げ、昏倒していたドラゴンのゴンゴンを引きずりながら帰って行った。意識が無い状態で、あの爆風を受けても無事なあたり、さすがドラゴンである。


 何度も頭を下げながら去っていくモウモウ。それを見送るヴェントとノルンとイヴイヴ達。なお、イヴイヴとリスリスは、未だに放心状態である。

 

「ノ、ノルン、さん? 先ほどの攻撃は、その……、よかったので?」

 既に戦闘モードを解除し、白いワンピースを着た緑髪の美少女へと戻っているノルンに、ヴェントは恐る恐る問いかける。

「"よかった"というのはどういったことでしょうか?」

 ノルンは不思議そうな表情で首をかしげる。

「いや、"未成熟文明への接触は最小限"っていう原則に抵触するんじゃないかなぁって」

 ノルンの行った"砲撃"により、森と小さな山が一つ消滅し、巻き上がった塵が空を覆い、今にも雨が降りそうである。

「この星における"魔法"の威力を参考にしました。過去にこの規模の魔法が行使されたという情報がございましたため、問題ないと判断しました」

 ヴェントがイヴイヴとリスリスに視線を向けると、二人は取れるんじゃないかと思えるほどに首を横に振った。

(ノルンさん、たぶん伝説とか神話に語られるレベルの"魔法"を参考にしてるよね……)



 ここに新たな伝説が生まれた……。



 伝説の誕生に立ち会えたことに、ヴェントは感慨深げな表情で曇天を見上げた。

 つまり、現実逃避である。




 伝説的な魔法の行使を、"勇者パーティー"が行ったということで、ゼンゼン砦は大層盛り上がった。ついでに天候は大層荒れ、酷い嵐に見舞われたために、一行は大盛り上がりのゼンゼン砦に1週間ほど缶詰状態となった。

 1週間後、幾分落ち着いたゼンゼン砦の駐屯兵が、新たに魔物情報を収集すべく、あちこちへと斥候を放った。が、近場には魔物が居なくなっていた。さすがは伝説である。


「ボクもリスリスも、かなり力を付けました。なので、最後の四天王に挑もうと思います」

 イヴイヴは、次の目的として、三人目にして最後の四天王である"青の四天王"へ挑むことを宣言した。別に、近場の魔物が居なくなったので"レベル上げ"できなくなったからではない。ないったらない。


 青の四天王は、元人間領であり、港町でもある"港湾都市カイカイ"に居る。一行はゼンゼン砦を出て、港湾都市カイカイへと向かった。




「あれが、港湾都市カイカイです」

 イヴイヴが丘の上から指し示す、"港湾都市カイカイ"を見下ろす一同。人が住まなくなって久しい都市は、建物は半壊し、石畳の道もあちこちが抉れ、荒れ放題となっていた。不思議なことに、街のあらゆる物は青一色に塗られている。

 

「結構遠かったね。途中、いろいろなことがあったけど、なぜか一瞬で到着したような気もするよ」

 ヴェントの独り言は、独り言として処理され、イヴイヴは気にせず先を続けた。

「都市の中央にある元領主の館。そこに"青の四天王セイセイ"が居るはずです」

 イヴイヴは聖剣の鞘を握る手に、ギリリと力を込めた。

「カイカイにセイセイって、パンダのカップルみたいだよ……」

 再びヴェントの独り言は、独り言としてスルーされた。


「セイセイは、元々人間だった。でも人族を裏切り、魔族に転生した……」

 憎々し気に述べるリスリス。二人は、睨みつけるような視線を元領主の館へと向ける。

「この先は、どれだけ魔物が出るか分かりません。慎重に進みましょう」

 そう言ってイヴイヴが先陣を切って歩き出す。リスリス、ヴェント、ノルンも、彼女に続いて、丘を下って行った。




「お待ちしていましたよ、皆さん」

 港湾都市カイカイの街はずれ。一人の男が、イヴイヴ達一行を待ち構えていた。

 その男の肌は蒼く、さらに青い髪を短く刈上げ、側頭部からは濃紺色の牛のような角が生えていた。青い全身鎧を身に纏い、群青のマントをはためかせており、とにかく何もかもが青かった。

「ここまで青いと、疑い様がない……」

 ヴェントはしみじみ述べる。


 イヴイヴとリスリスは、武器を取り出し、無言で臨戦態勢をとる。

「やれやれ、ただ挨拶をしただけだというのに……」

 男は額に手を当て、やれやれと言いながら軽く首を振る。


「では改めて、ワタシは四天王筆頭、青のセイセイ……。ワタシ以外の四天王を倒したようですが、あの程度の者たちを倒したくらいで、調子に乗ってもらっては困りますな」

 ククっと小さく嗤いつつ、セイセイは続ける。

「"四天王"などと嘯いていても、所詮は雑兵。魔王様の側近は、ワタシ一人いれば充分……」

 両の手を掲げ上げ、そこに何かを幻視しているかのように恍惚とした表情でセイセイは述べた。


「トップダウン型の組織であっても、中間管理職は複数配置することが一般的であり、望ましいです。現実的な問題として、複数部署の異なる職務を一人の管理職が管理することは困難であり……」

「……」

 ノルンのツッコミに、閉口するセイセイ。イヴイヴ達はふんふんと関心するように聞き入っている。

「組織の規模に応じて、業務は対応する部署に適切に振り分けされるべきであり、それに応じた管理職を配置すべきです。管理職の数は多すぎず、かつ少なすぎない、適切な人数を配置すべきですので、"四天王"という名称で、人数を固定してしまうのは管理上望ましくありません。更に……」

 手を掲げたまま静止しているセイセイは、そろそろプルプルと震えてきている。

「あ、ノルンさん、その辺で……」

 ヴェントが止めると、"わかりました"と述べ、ノルンはあっさり説明を中断した。



 数瞬の静寂。



「ワタシは青の四天王セイセイ。勇者イヴイヴ一行には、ここで死んでいただきます」

 再起動したセイセイは、余分な説明を省略し、さっさと戦闘を開始した。


 セイセイはバサリとマントを広げる。マントの内側には、青一色の細剣が何本も隠されていた。


 セイセイがパチリと指を鳴らす。


 マントの内側にあった細剣が飛び出し、まるで意思があるかのようにイヴイヴ達へと襲いかかる。

 イヴイヴは突進してくる細剣を次々と聖剣で叩き斬る。が、切断されても細剣は止まらず、バラバラになった状態で突っ込んでくる。

 リスリスはメイスで細剣を破壊しているが、こちらも同様にひしゃげた状態でも細剣は止まらない。

 ヴェントとノルンに襲い来る細剣は、ノルンが全て素手で叩き落している。が、やはり叩き落されても細剣は再び浮き上がり、二人を襲う。


「き、キリがない!」

「……」

 ヴェントが戸惑いの言葉を上げ、ノルンは一瞬黙考した。


 ノルンの瞳がキラリと光る。


 何かを思いついたらしいノルンは、迫る細剣を回避し、ガシリと柄をキャッチした。彼女の手の中でブルルと震える細剣。ノルンはそれを力でねじ伏せ、そのまま近くの木へ突き刺した。鍔部分まで深々と刺さり、幹の反対側へと飛び出した細剣の切っ先、そこへ蹴りを入れて折り曲げると、前にも後ろにも抜けなくなった細剣は、そのまま身動きが取れなくなった。


 ノルンは襲い来る細剣を次々捕獲しては、ことごとく木に突き刺して動きを封じていく。

 それを見たイヴイヴとリスリスも、ノルンと同じことを始めた。


「その速度を掴めるの!?」

 二人がノルンと同じことが出来ることに驚愕しつつ、ヴェントは観戦に徹した。


「"四天王"などと嘯いていても、所詮は雑兵。魔王様の側近は、ワタシ一人いれば充分……」


「というか、ワタシ一人しか仕事をしておらん。奴らは"四天王"という役職にありながら、自分たちの部下をまともに管理もせぬ! 牛頭は頭の中身まで牛レベルで、暴力しか入っておらん! トカゲなど食うことしか考えていない!!」

「あ、なんか同僚の愚痴だ」


「奴らが何もしないがために、ワタシが奴らの部下まで管理しておるのだぞ!?」

「相当にうっぷんが溜まっているようです」


「魔王様も魔王様だ! 奴らに言ってもダメだからとワタシを叱責するのだぞ!?」

「あ、なんか上司の愚痴だ」


「そもそもが、奴らの部下が無能すぎるのだ! 牛頭の部下は牛頭同様に脳筋ばかりで、暴れるばかり。トカゲの部下なぞ、言葉も通じない!! 何でワタシがあんな阿呆どもの管理をせねばならんのだっ!!!」

 ガンガンと地面を蹴りつけるセイセイ。

「うわぁ……」


「貴様らにはわかるまい! 部下が無能を晒し、同僚は役立たず! そのために魔王様から叱咤される者の気持ちが!!」

「あ、中間管理職の悲哀だ」

「このような場合、往々にして部下からも"無能な上司"と思われている場合が多いです」


「ワタシはもっと評価されるべきなのだぁぁぁ!!」


↓↓ 悲しき中間管理職に、是非愛の手を ↓↓


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