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古代兵器ミリア  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)
プロローグ
5/19

魔王バグス

 魔王バグスは覚悟を決めて待っていた。玉座の間は天井が高く、20メートルの魔物が入れるように作られていた。広さも十分で、幅は200メートル、長さは500メートルもある巨大な空間だった。この場所で6人の刺客を迎え撃つつもりでいた。

 玉座の入り口の前には神龍ラグナロクが立ちふさがっていた。ラグナロクは全身が真銀ミスリルの鱗で覆われた。体長20メートルの龍だった。全身が白銀に輝き、細身の体の背中に巨大な翼が生えていた。尻尾が体長の半分を占めて居るため、立ち上がった時の身長は10メートルほどだった。

 事前に強化魔法と防御魔法をかけて万全の態勢で待ち構えていた。初手はラグナロクに伝えてある。効くかどうかわからないが、炎のブレスを浴びせる予定だった。

 だが、その予定はいきなり変更を余儀なくされた。ドーンという爆音と共に玉座の間の扉が破壊され、ラグナロクに12.7mmの弾丸が撃ち込まれたのだ。しかし、ラグナロクの腹部に向かっていた弾丸は、見えない障壁に激突し地面に落ちた。

 それは、バグスの防御魔法『アンチマテリアル・アブソリュート・バリア』の効果だった。

 ミリアはアンリマテリアルライフルAMR6の徹甲弾でも貫通できないことを冷静に分析し、魔法の効果だと断定した。

「ミリアの武器でも倒せない敵はいるのね」

 魔女メアリが驚きつつもバグスはやはり強いと思った。そして、ラグナロクに使用されている魔法の解説を始めた。

「あれは、障壁魔法よ。どんな物理攻撃も防げるけど、回数制限があるはず。何度も攻撃していれば突破できるわ」

 メアリの解説を聞いて、ミリアは障壁が無くなるまで撃ち込もうと思った。だから、AMR6のボルトを引いて次弾を装填した。薬莢が排出され次弾が装填された。そして、ラグナロクに銃口を向けて再度弾丸を撃ち込もうとした。

「待って、ミリア。ここは私たちに任せて!障壁が無くなった瞬間を狙って!その武器、回数制限があるんでしょう?」

「回数制限はあるけど、そんなすぐには無くならない」

 ミリアは実際に保管庫に残っている残弾を知っている。約600発はある。なので、ここで多少無理しても問題ないのだ。

「それじゃあ、どっちが先に障壁を破壊するか競争にしましょう」

 そう言って、メアリは玉座の間に入っていった。勇者アベル、聖騎士ジャッカ、破壊者カノン、聖女フランが中に入っていった。

 ミリアは再度、遠距離射撃で、ラグナロクを射撃した。しかし、この攻撃も障壁に防がれた。

 予想外の先制攻撃に最初は面食らったバグスだったが、すぐに思考を切り替えて反撃に移る事にした。まずは、簡単に倒せないミリアは捨て置いて、ラグナロクと連携して『5つの希望』と呼ばれているアベル、ジャッカ、カノン、フラン、メアリを始末するつもりだった。

 バグスはミリアと『5つの希望』が自ら距離を置いて戦う事を選択したのを喜んだ。ラグナロクに張った物理障壁は全部で10枚だった。『5つの希望』がラグナロクの物理障壁を破壊する前に『5つの希望』を始末する。その為に、バグスは魔法を唱えた。

「エグゼ、エクスプロージョン」

 魔族は、魔法を使う時、人族のように魔法を使う前に精霊への祈りを必要としない。さらに魔法を使う為の触媒も必要としない。人族と違って魔族は自然現象に直接介入できるのだ。だから、魔法戦になった時、魔族の方が圧倒的に有利だった。

 小さな火の粉がアベルたちに高速で向かって行った。そして、ラグナロクを避けてアベルたちを飲み込む大爆発が起こる。轟音の後で、アベルたちはダメージを受けたが生きていた。

 フランが詠唱を開始した。

「水の精霊よ、我らの傷を癒した給え。エグゼ、ヒーリングウォーター」

 5人の頭上に水色の魔方陣が出現し、魔方陣から水滴が一滴落ちた。水滴が5人に頭に落ちると、5人の火傷は治っていた。

「フラン、助かる!」

 アベルは礼を言いつつ、ラグナロクに肉薄していた。カノンも続いている。

「お礼は~良いですよ~」

 フランは戦闘時でも間延びした返事をしていた。ジャッカはフランとメアリを守る為に二人の側に残った。ラグナロクが5人に向けて炎のブレスを吐いた。その炎は高熱の青い炎だった。

 まともに浴びれば人族は即死する程の高熱の炎受けても5人は無事だった。それは、フランが予めかけていた魔法防御の魔法のお陰だった。だが、それでも全員火傷を負った。

 炎のブレスの後で、ミリアはラグナロクに3度目の狙撃を行った。だが、それも防がれた。ミリアは再度ボルトを引いて次弾を装填した。

 メアリは『魔女の杖』をマイクのように両手で持った。左右の手の甲に口が現れる。そして、精霊への祈りが3つ同時に始まった。

「闇の精霊よ、我に力をお貸しください……」

「炎の精霊よ、我に力をお貸しください……」

「風の精霊よ、我に力をお貸しください……」

 黒と赤と緑の魔方陣がメアリの前方に三角形を形作るように三つ展開した。

「エグゼ、エクスプロージョン」

 バグスが再度魔法を使い。爆発が起こった。5人はダメージを受けるが、まだ倒れなかった。

 ミリアがラグナロクに4度目の狙撃を行ったが、やはり障壁に阻まれた。魔王城の入り口から戦闘を始めて合計6発の銃弾を撃った。アンチマテリアルライフルのマガジンは6発入りだった。丁度マガジンが空になったので、ミリアはマガジンを転送で入れ替えて、次弾を装填した。

 その間に、カインとアベルがラグナロクに肉薄していた。まずは、カインが白銀に輝く『破壊の斧槍』を振り回して吼えた。

「砕け散れ、『アースクラッシュ』」

 カインが『破壊の斧槍』を両手で大上段から、ラグナロクの腹に向けて振り下ろした。鉱石人こうせきびとの特徴は頑丈な肉体と人並み外れた腕力だった。その一撃は文字通り地面を割れるほどの破壊力を持っていた。

 ガキィンという音が響くが、それはカインの一撃が障壁に阻まれた音だった。そこへすかさずアベルが攻撃を重ねる。

「打ち砕け、『ヘヴィースラッシュ』」

 アベルは白銀に輝く『森羅万象の剣』を大上段に構えたまま飛び上がり、落下と共に全体重を乗せた一撃を放った。

 その一撃も障壁に防がれていた。

「くそ!ダメか」

「いったん退くぞ」

 カインとアベルはラグナロクの反撃に備えて距離をとった。ラグナロクは、肉薄してきた二人を吹っ飛ばすために体を反時計回りに回転させて長大な尻尾を鞭のようにしならせ薙ぎ払おうとした。ジャッカは、その攻撃を察知して、尻尾が来る左側に前進し白銀に輝く『守りの盾』を構えて吼える。

「守れ、『マテリアルシールド』」

 ジャッカの『守りの盾』が光り輝き、巨大な半透明の盾が出現した。その盾にラグナロクの尻尾が激突する。10メートルの尻尾の一撃を2メートルの獅子人ししびとが受け止められるはずは無いのだが、ジャッカはラグナロクの攻撃を受け止めた。

「深淵なる闇の力で空間を圧縮し給え。エグゼ、ブラックホール」

「燃え盛る炎の力で全てを薙ぎ払い給え。エグゼ、エクスプロージョン」

「流れゆく風の力で水素を発生させ給え。クリエイト、ハイドラジェン」

 メアリは詠唱を完成させた。それは、メアリが使える究極の合体魔法『ニュークリアフュージョン』だった。ラグナロクの目の前で、高熱と水素がブラックホールで圧縮され、核融合反応が発生した。エクスプロージョンとは比べ物にならない程の大爆発が起こった。

 神龍ラグナロクは、その一撃を受けても立っていた。だが、全身の鱗は剥がれ落ち、重度の火傷を負っていた。だが、死んでは居なかった。

 メアリは舌打し、小さな声で独り言を言った。

「悔しいけど、やっぱりミリアに任せるしかないわね」

 自分の魔法に絶対の自信があった。だが、やはりミリアのように一撃で殺せるほどの威力は出せなかった。

 バグスはメアリの魔法に肝を冷やした。危うく盾であるラグナロクを殺される所だった。だが、死んでいなければ回復できるのだ。

「エグゼ、アルティメットヒール」 

 魔王バグズは回復魔法を唱えた。ラグナロクは白い魔方陣に包まれ火傷も鱗も回復した。

「水の精霊よ、我らの傷を癒した給え。エグゼ、ハイヒーリングウォーター」

 フランも味方を回復した。互いに魔力を消費し、戦いは振出しに戻った。ただし、ラグナロクの物理障壁は残り4回まで減っていた。バグスは焦っていた。まだ、誰一人として倒せていなかった。

 回復したラグナロクにミリアから5回目の狙撃が命中するが、障壁がそれを防いだ。その後、カインとアベルが連携して再度『アースクラッシュ』と『ヘヴィースラッシュ』を当てた。これで、ラグナロクに残された障壁は1枚になってしまった。バグスはすぐに魔法を唱えた。

「グラント、アンチマテリアル、アブソリュート、バリア」

 ラグナロクの物理障壁は復活した。それを見て、メアリがミリアだけ分かるように古代アトランティス語で話しかける。

「ミリア、私、魔法、合わせる」

「了解した」

 ミリアはボルトを動かして空になった薬莢を排出し次弾を装填して、アンチマテリアルライフルの銃口をラグナロクの心臓に向けた。射撃体勢は相変わらず半身になり立ったままで右手一本で長大なライフルを持つ体勢だった。左足の床には無数のヒビが入っていた。

 メアリは、魔法の詠唱を開始した。

「闇の精霊よ、我に力をお貸しください……」

「炎の精霊よ、我に力をお貸しください……」

「風の精霊よ、我に力をお貸しください……」

 黒と赤と緑の魔方陣がメアリの前方に三角形を形作るように三つ展開した。バグスはメアリがもう一度、同じ魔法を使おうとしていると思った。それに合わせるようにフランも詠唱を開始した。

「光の精霊よ、我に力をお貸しください……」

 バグスは、ラグナロクが殺されると思った。だから、フランが魔法を使えないように手を打つ事にした。

「エグゼ、マジック、ディスピアレンス」

 フランに付与されている魔法の効果を消滅させる魔法を使った。フランは即座に魔法防御を上げる魔法に詠唱を切り替えた。

 ラグナロクはフランから防御魔法が消失した事を確認し、高熱のブレスを吐いた。まともに受ければフランは即死するが、ジャッカがそれを許さなかった。ジャッカはフランとラグナロクの間に割って入り吼えた。

「守れ、『ファイアシールド』」

 今度は青い半透明のシールドが出現し青い炎のブレスを遮断した。フランは熱を感じつつも防御魔法を完成させる。

「我らに奇跡の守りの加護をお与えください。インクリメント、マジック、デフェンス、マキシマム、オール」 

 メアリが魔法を完成させた直後にメアリも魔法の詠唱を終える。

「深淵なる闇の力で全ての魔法を打ち消せ。エグゼ、マジック、ディスピアレンス」

「燃え盛る炎の力で全てを薙ぎ払い給え。エグゼ、エクスプロージョン」

「流れゆく風の力で切り刻め。エグゼ、エンプティブレード」

 ラグナロクに付与されていた魔法が全て消失した。そして、エンプティブレードが胸のあたりの真銀の鱗を剥がした。エクスプロージョンはバグスに向けて放っていた。バグスは爆炎に包まれた。

「ミリア!今!」

「了解」

 抑揚の無い声でミリアが答えて、引き金を引く、爆音と共に銃弾が発射され、ラグナロクの胸を貫いた。そして、ラグナロクの背中に赤い花が咲いた。

 バグスがエクスプロージョンの爆発から視界が開けると、そこにはラグナロクの死体があった。そして、こちらに迫ってくる6人を確認した。距離は400メートル。バグスは覚悟を決めて、一人でも多く道連れを連れて行く事にした。それが、自分を殺しに来た人族への復讐だった。

「エグゼ、マジック、ディスピアレンス」

 バグスは再度、フランの防御魔法を打ち消した。フランは再度、防御魔法を唱え始める。

「光の精霊よ、我に力をお貸しください……」

「エグゼ、エクスプロージョン」

 フランが魔法を完成させる前に、バグスはエクスプロージョンを完成させた。その瞬間、ジャッカはスキルを発動させる。

「守れ!スケープゴート!」

 ジャッカがスキルを発動した直後に大爆発が起こった。フランが受けるはずだったダメージをジャッカが全て引き受けた。結果、ジャッカは動かなくなった。ミリアの視界にジャッカの体温が表示されていたが、それが死亡ラインまで低下していた。

 ジャッカはフランの身代わりになって死んだ。だが、それはジャッカが望んだことだった。5人でバグスを討伐すると決まった時から、ジャッカは誰かの身代わりになって死ぬのが自分の使命だと知っていた。だから、ジャッカは笑って死んだ。

 バグスは勝利を確信した。次はフランを仕留めればバグスに敗北は無いと思っていた。不死者である自分を殺せるものは聖女フランだけだと思っていた。だから、フランを殺す為に魔法の詠唱を開始した。

「エグゼ、マジック……」

 バグスの詠唱はそこで途切れた。止めたのはミリアだった。アンチマテリアルライフルでバグスの頭部を撃ちぬき吹き飛ばしたのだ。

 ミリアは射撃が終わると走り出した。そして、ドンという衝撃音を発生させ、時速200キロメートルで駆け出した。その間、バグスの頭部が3秒で復元する。ミリアはバグスの頭部が復元した事を確認すると奔ったままでアンチマテリアルライフルを構え、そのまま頭部を撃ちぬいた。

 走ったままの状態で撃ったため、反動で少し速度が落ちるが射撃姿勢を崩すことは無かった。そして、走りながらボルトを動かし、次弾を装填した。その為、ミリアがバグスに肉薄するまでの間、バグスは何も出来なかった。

 バグスに肉薄するとミリアは月読に話しかけた。

(不死者を殺すには?)

(オリハルコンブレードで、魂を斬ってください)

(魂の位置は?)

(不明です)

(分かった。転送要請、オリハルコンブレード、月光)

(要請受諾、オリハルコンブレード、月光 転送します)

 アンチマテリアルライフルが消えて、白金に輝く刀、月光が出現する。ミリアはそれを両手で持ち、縦横無尽に振り回した。

 結果、バグスは塵となり消え去った。魔王バグスを倒したミリアの元に5人が駆け寄ってきた。アベル、カノン、ジャッカ、フラン、メアリの5人だった。

「ジャッカは、死んだはず」

 ミリアが無表情のまま、聞いた。

「わたしわ~、聖女だから~、蘇生魔法を使えるんですよ~」

 フランは相変わらずのんびりと答えた。

「そうか、良かった」

 ミリアは無表情のまま抑揚の無い声で、そう答えた。

「ありがとう。ミリア」

 メアリがミリアに礼を言った。メアリの眼にはジャッカが殺された事に憤慨してバグスを瞬殺したように見えたのだ。他のメンバーも、そう思っていた。

「これで、世界は平和になるの?」

「そうね。これで、魔族との戦いは人族が優位に進める事が出来るわ」

 メアリは嬉しそうに答えた。

「そうじゃな、これで前線を押し返せるわい」

「でも、早く戻らないと『5つの絶望』を止める者が居ない」

 アベルは勝利の余韻に浸る事なく、次にすべきことを考えていた。

「そうだな、魔王は死んだ。俺たちは前線に戻って『5つの絶望』を退けねばな」

 ジャッカもアベルに同意した。このまま勝利の余韻に浸る事は許されなかった。それが『5つの希望』と呼ばれている自分たちの役目だと思っていた。

「そうですね~。メアリの転移魔法で移動しちゃいましょう~」

 フランの発言で、全員がある事実に気が付いた。だから、メアリが代表してミリアに告げる。

「ミリアとは、ここで一旦お別れね」

「私には魔法が効かない。だから、一旦お別れ」

 ミリアも理解していた。

「ねぇ、ミリア。あなたはこの先、どうするの?」

(月読、次の目標は?)

(土地を手に入れて国を作りましょう)

「土地を手に入れて、人族の国を作る」

「国を作るの?何で?」

「人族の文明を復活させる為」

「それって、あたしたちの国で出来ないの?新しく国を作ると色々ともめそうなんだけど?」

(月読、なんで国を作る必要があるの?)

(結論から言うと、彼らの王はあなたの提案を受け入れない。どれほど譲歩しても彼らは自分たちの権利を捨てる事は無いでしょう。なので、自分で国を作るのです)

(交渉はしてみても良いの?)

(どうぞ、実際に彼らの王がどういう者か知っておくことは良い事です)

「分かった。一度、あなたたちの国に行ってみる」

「場所は分かるの?」

(月読、地図はあるの?)

(もちろんです。アーカイブは全てを記録しています。国名と目的地の街の名前が分かれば案内いたします)

「国名と首都を教えてくれれば行ける」

「じゃあ、あたしから、あたしの国はシャドーフォーレスト、黒樹人くろきびとの国よ。首都はブラックガーデンよ」

「僕の国はダイヤモンドキングダム、平野人へいやびとの国だ。首都はアヴァロンだ」

「ワシの国はアイアンキングダム、鉱石人こうせきびとの国だ。首都はアイアンメイズだ」

「俺の国はビーストキングダム、獅子人ししびとの国だ。首都はプレジャーガーデンだ」

「私の国は~ライトフォーレストで~、白樹人しらきびとの国で~、首都は~ホワイトガーデンなの~」

 全員の国名と首都が分かり、ミリアの視界に地図が表示され、現在地と各国の首都が表示された。地図には人族の国が、魔王城から西の方に2千キロメートル移動した場所に固まっているのが分かった。横長の大陸の端の方に人族の国があり、他は魔族の支配領域だった。

 人族は絶滅の一歩手前といった状況だった。だが、『5つの希望』はここから逆転する気でいた。そして、ミリアも人類を復興させるという使命を果たすつもりだった。

「教えてくれてありがとう。私は歩いて行く。首都に着いたら、あなた達の王と話をさせて」

「分かった。魔女メアリがあなたを王に紹介するわ」

「おっけ~。勇者アベルが君を王に紹介する」

「いいぞい。破壊者カノンがヌシを王に紹介しよう」

「受けよう。聖騎士ジャッカが貴殿を王に紹介する」

「いいですよ~。聖女フランがあなたを~王に~紹介します~」

「ありがとう」

「こちらこそ、ありがとう。あなたのお陰で使命を果たせたわ」

 メアリは笑顔でそう言った。

「いいや、あなた達ならば私が居なくても使命を果たせたと思う」

 ミリアは本気で、そう思った。核融合を引き起こし、蘇生魔法も使える。そして、他人のダメージを身代わりするという奇跡の様な技を使えるのだ。まだ、ミリアは彼らの全てを知らない。だが、不屈の闘志と実力を兼ね備えた強者だと認識していた。

「実力を認めてもらえて嬉しいわ」

 メアリは素直に喜んだ。そして、ミリアに手を差し伸べた。それを見て、ミリアはメアリの手をとり握手した。

「じゃあ、先に帰って待ってるわね」

「ええ、必ず会いに行く」

 アベルも手を差し伸べた。ミリアはアベルと握手した。

「僕の国には色んな店があるんだ。国に来た時は案内するよ」

「ありがとう、楽しみにしている」

 カノンも手を差し伸べた。ミリアはカノンと握手した。

「お主、酒は飲めるのか?」

(月読、飲めるの?)

(燃料として、飲むことは出来ます)

「飲める」

「では、良い酒があるんじゃ、一緒に飲もう」

「分かった」

 ジャッカも手を差し伸べた。ミリアはジャッカと握手した。

「待っている」

「分かった」

 最後にフランが手を差し伸べた。ミリアはフランと握手した。

「気をつけて~歩くんですよ~。疲れたら~休んでくださいね~」

「分かった」

 フランの天然発言にミリア以外の4人は苦笑していたが、ミリアは無表情のままだった。

「じゃあ、またね」

 メアリはサヨナラの挨拶が一通り済んだと思い。魔法の詠唱を開始した。

「風の精霊よ、我に力をお貸しください。思い描く場所へお連れ下さい。エグゼ、メタステイサス」

 5人は消えた。そして、ミリアだけが残された。魔王城の最深部、玉座の間からミリアは歩いて城の外に出た。そして、ここから伝説が始まる。大概の物語は魔王を倒して終わる。だが、この物語は魔王を倒してから始まるのだ。

 この物語は、古代兵器神威、通称ミリアが世界の全ての国を亡ぼすまでの物語。ここまでは、その序章に過ぎない。


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