1日目-07 昼の休憩③
…。
しばらく沈黙。
はやくどっかいけよ…
さすがに鬱陶しくなってきた。
彼女をちょっと観察してみる。
最初の印象と同じく、おとなしそう。
口調も外見に合っているというべきか。
そして、結構綺麗な瞳。
…しかしさっきの一回以外、この女は表情をひとつとして変えていない。
自己紹介のときもだ。
普通ああいう場合は、もっとおおっぴらに笑ったり動揺したり緊張したりするものだ。
…俺も人のことは言えないが。
ちょっと試してみたくなった。
{…よし、あまりの面白さに腹が痛くなるほど大爆笑させてやる。くっくっく}
よし…ここは…ファンキーなしゃれで…
リアン「ドーナツでもどう?夏」
ローザ「…」
あれ?
リアン「何故笑わない」
ローザ「…笑う所じゃないから」
ぐさっ。
リアン「…大爆笑して、膝抱えて笑うところ」
ローザ「そうなの?」
いかにも不思議そうにそう尋ねる。
ローザ「じゃあ…ははは」
まるで感情のこもらない笑い方。
そしてうずくまる。
…。
ローザ「はは」
…。
リアン「もういい」
見てて悲しくなってきた。
確かに、大爆笑できるギャグではなかったのは認める。
リアン「傷ついた」
ローザ「落ち込んじゃダメだよ」
落ち込ませたのはおまえだ。
リアン「…はあ…」
…。
…。
しばらく時間がたつ。
一向に少女は行こうとしない。
何故ここにいるのだろう。
リアン「何でここにいるんだ」
ローザ「あなたがいかないから」
…。
どうしろというのだ。
…行けと?
…行きたくないんだって。
…。
…。
またしばらく時間が流れる。
リアン「ふう…」
溜息が漏れた。
意図したものか、それとも自然に出た物なのかは、分からない。
リアン「…あえて言うなら、おれは、兵隊になんてなるべきじゃなかったのかもしれない」
ローザ「?」
リアン「本当はもっと自分の進むべき道みたいなものがあって、
そこでそうしていたほうが幸せだったのかもしれない」
ローザ「ほう」
リアン「しかし、おれは、今こうして兵隊になっている」
そして、サボっている。
ローザ「だから?」
リアン「きっと、その意味がわかる時が来るはずなんだ」
ローザ「どういうこと?」
リアン「さあな、自分でもよく分からない」
考えたくなかった。
考えるのは、苦手だった。
ローザ「そろそろ時間だし、行こうか」
リアン「ああ…」
仕方なく立ち上がる。
そして歩き出す。
わからない。
結局何をしたかったんだ?
…少しして気づく。
リアン「そういや…お前も測ってないんだよな」
ローザ「うん」
リアン「いいのか」
ローザ「一人よりは二人」
やっと意図がわかった。
…サボってたのか…
リアン「…それもそうだな」
最初から言えよ、バカ。