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Last Message  作者: びゅー
1日目
6/60

1日目-05 昼の休憩1

昼。

ブラウン「さっそくだが体力テストをする」

帰れると思ってただけに、ちょっと拍子抜けした。

とりあえず、集合場所は運動場。

どこそこという正確な指定はない。

つまり、運動場のすみにいても別にいいのだ。

窓から飛び出す。

学校の裏には、草むらが広がっていた。

{ここは、ある意味、運動場だな}

そう思い、ゆっくりと横になる。

{…これは…サボりというものだろうか?}

{…いや、休憩だよ、休憩}

自分なりに納得する。

疲れた疲れた。

リアン「ふああああ」

眠い。

しばらく寝ようか…。

そのときだった。

僕の視界を何かがさえぎった。

女の子。

さっき教室で見た…ローザとか言う名の。

ローザ「なにをしてるの」

聞いてきた。

リアン「いき」

答えた。

「…」

「…」

ローザ「体力測定しないの」

また聞いてきた。

リアン「動けない」

ローザ「なんで?」

リアン「金縛りにあった」

ローザ「なんでこんなところにいるの」

リアン「体がかってに動いたんだ」

リアン「そして後ろから飛んできた金縛りビームを受けたんだ」

ローザ「なんで普通にしゃべれるの」

…うるさい。

リアン「…この金縛りは低級みたいで、どうも口だけは動くみたいだ」

ローザ「目も動いてるよ」

リアン「…目も動くみたいだ」

ローザ「ふーん」

あからさまに怪訝な目をして、彼女が続ける。

ローザ「…くすぐっていい?」

リアン「ダメ」

ローザ「どうして?」

リアン「動けない相手をくすぐるのっておかしいと思う」

ローザ「おかしくないよ。

くすぐることによって金縛りから解放しようとしてるんだよ」

リアン「そんなことされたらおれ死ぬ」

ローザ「そんなぐらいで死なないよ」

リアン「おまえにおれの何がわかる」

ローザ「大丈夫、死なない程度にやるからさ」

リアン「おれ、昔から医者に言われてるんだ。

あなたは、くすぐられると死ぬ病気です、って」

ローザ「医者の言うことなんかどうでもいいよ」

リアン「なんてことを言うんだ」

ローザ「わたしも医者見習いなんだけどさ、

くすぐられると死ぬ病気なんてないよ」

リアン「それは、おまえが世間というものを知らないだけだな」

ローザ「とりあえずくすぐってみてから考えよう」

リアン「やめなさい」

……。

リアン「……」

ローザ「動いた」

ばたっ。

リアン「防衛本能……

それは、人間の脳に生まれながらにして刻まれている、

システムの一つである」

リアン「それはこのように、金縛りビームを受けたときでさえ発動する

特筆すべき一種の才能とも呼べるものであり……」

ローザ「……」

リアン「……ああっ、だが、もう……ダメ……だ」

ローザ「…ふーん」

女の子がすこんぶを取り出した。

俺の顔の前に持ってくる。

手を離す…

ちょっとマテ。

当たるだろうが!

間一発。

落ちてくるすこんぶをかわす。

リアン「ふっ…甘いな」

ローザ「動けるじゃん」

…。

リアン「そう。

身の危険を感じたとき、人は普段出せない力が出るという……」

ローザ「…じゃ、身体測定行ってきたら?」

リアン「…だ、だが…ち、力の限界が来たようだ……」

ローザ「じゃ、もう一回やるよ?」

リアン「おまえはそんなことして楽しいのか?」

ローザ「うん、楽しい」

リアン「うそつけ。心に深い傷を負うことになるぞ、

やめとけ」

ローザ「大丈夫大丈夫。わたし精神的に強いから」

リアン「ふぬっ!」

回避。

回避。

回避。

ローザ「ぜんぜん動けるじゃん」

リアン「おまえがそうしているからだ…」

ローザ「だいたい金縛りビームってなにさ」

リアン「知らないのか。最近割と飛んでるらしいぞ」

ローザ「聞いたことないよ」

リアン「それは、おまえが最近の情勢に疎いだけだな」

ローザ「……」


なんだかばかばかしくなってきた。

リアン「はあ」

先に沈黙を破ったのはこっちだ。

リアン「さぼってるんだよ」

ローザ「わかってた」

リアン「じゃあどっかいけ」

ローザ「やだ」

…。

リアン「そういうおまえはなにしてんだ」

ローザ「注意」

…。

ローザ「さぼってるひとに」

リアン「おまえもさぼってるじゃないか」

ローザ「注意係だから、さぼってるのとは違う」

リアン「…注意係って何だよ」

ローザ「そのまま。注意をする係」

リアン「……まぁ、注意するだけならもう注意し終わったわけで、

さっさと行っちゃいな……」

ローザ「だめ。注意をしつづけないといけない」

リアン「なんでだ。なぜそんなバカ正直に注意を繰り返す」

ローザ「それがわたしに与えられた使命だからだよ」

使命とか言い出した。

リアン「別にそんな与えられた責務を忠実に果たすことだけが

人間のすべきことじゃないと思うんだ」

ローザ「でも、私はいま私に与えられた役割をまっとうしようと思うの」

…。

この女、只者ではない。

この女、変だ。

おれが言うのもなんだが、何かがおかしい。

だが、ここで負けてはいけない。

リアン「そうか。だが残念だな。おれは今ここで寝るという使命を与えられたんだ」

ローザ「だれに」

リアン「それが誰なのかは分からない……だがいつか解き明かしてやる、必ずだ。

……zzz」

ローザ「起きるんだ」

ほっぺたを引っ張られる。

リアン「なんで起こすんだよ!」

ローザ「起こさないと……二度と起きない気がして」

リアン「おれは眠るという使命の下、堂々とこの空の下で眠るんだ!

邪魔をするな!」

ローザ「いやでも、与えられた使命をまっとうするだけが

人間のすべきことじゃないよね」

リアン「おまえがそれを言うか!?

おまえついさっきそれと真逆のことを言ってた気がするぞ!?」

ローザ「あなたに言われて気づいたの。

ただ与えられたことを与えられるままにこなすだけの人生じゃだめだって」

リアン「そんなことを言った覚えは無い」

ローザ「いやでも、どう受け取るかはわたしの勝手だし」

リアン「勝手すぎるぞ」

ローザ「えー。あなたに言われたくない」


……。


……。


ローザ「おもしろいね、きみ」

リアン「……おまえに言われたくないよ」


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