1日目-03 自己紹介②
…。
リアン「みなさん、よく聞いて下さい。
おれはアホです」
レモラ「はい?」
思わず声が出た。限界だった。
リアン「どのくらいアホかというと、
もうどうしようもないぐらいアホです」
ぶっ!
クラスのあちこちで小さな笑い声が起こった。
レモラ(えー……)
リアン「この教室で困ったことが起きるとしたらそれは十中八九おれのせいでしょう。
みなさんもおれには充分気をつけてください」
レモラ(なに言ってるの、この子……)
頭が痛い。
リアン「では、最後になりますが、
アホが悪いなんて、そんなこと、誰が決めたんだ!」
おおう。
リアン「終わります。よろしく」
そういって、そいつは私の前に来た。
レモラ「へ?」
リアン「よろしく」
レモラ「よ、よろしく」
リアン「せっかくなのでひとつ質問していい?」
レモラ「せっかく??」
答えは聞かずに、質問が来た。
リアン「その姿勢はなに?」
まさにぐうの音も出ない、とはこのことだろうか。
自分の立場を客観的に見て、私は固まってしまった。
慣れというものなのだろうか、
体が勝手に、突っ込みポーズを決めてしまっていた。
レモラ{なにしてんの、わたしーーーー!?}
ブラウン「つ、次の方!」
私の前の男が立ち上がった。
しかし、私は恥ずかしくて、まともに前が向けなかった。
{死にたい……}
基本的に、アホの相手をするのもアホだろう。
前なんか見てられなかった。
ブラウン「次の方」
げ。わたしか。
レモラ「えー、あー、先ほどは、大変の見苦しい所をお見せしました。どーも突っ込まずには入れない性分なんです。レモラといいます。皆さん、よろしくお願いします」
ペコリ、と頭を下げた。
あーあ…最悪…
それもこれも2つ前のこのアホの…
ちなみに、私がピエールに絡まれるようになったのも、この癖が原因だ。
なおそうなおそうと思っているのだが、全然なおらないのだ。
ピエール「ネバーマイン!気にするなマイハニー!」
レモラ「…」
久方ぶりに、死にたくなった。
{ぬわあああああああああああああ}
席について…
?
他の人たちは苦笑いしたり冷笑をくれたりしているが、
私の後ろの彼女は、全くの無表情だった。
初めて、正面から向き合ったが、
表情が、まるで読み取れなかった。
かたん。
音を立てて最後の女の子が自己紹介にいった。
動揺やら緊張やら期待やら失望やら、そう言った色は一切なしに。
足音は…しない。
でも、雰囲気的に…次第に周りは静まり返っていった。
彼女の雰囲気に、会場全体が飲まれていった。
ゆっくりと、機械的に動いて前まで行く。
無表情。
とにかく、一言で表すなら、それだった。
一人だけ列からはみ出しているのに、そんな事など気にもとめていないのだろうか。
彼女が、前を向いた。
いたって、無表情。
しつこいくらい、無表情。
彼女は、うつむいて、ポケットを探り始めた。
ごそごそ…。
{何を、探してるんだろ}
しばらくして、何かを取り出した。
それは…
…すこんぶ。
きゅっきゅっ。
黒板に丁寧に字が書かれていく
“すこんぶ”
女の子「すこんぶ」
{…}
「よろしく」
てくてく。
{それだけ!?}
{ま、まてえ!すこんぶの紹介をされてもこまるっ!お前の紹介をしろっ!}
ぽかーん。
またしても会場は、時が止まっていた。
ブラウン「え、えっと、ローザちゃん、でいいのかな?」
ローザ「女王様とおよび」
ぽかーん。
ローザ「…なんちゃって」
…
…
笑う所なのかもしれないが、誰一人笑わなかった。
私の頭はパニックに陥っていた。
処理できない事柄が多すぎます。
ブラウン「え、えっと、それでは自己紹介を終わります」
先生はそそくさと去って行った。
しかし、20分ぐらい、誰一人として動くものはなかった。
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頭の悪い子、リアンの登場回。
彼が一応主人公です。