なし
Colors
プロローグ
「まずい・・・このままじゃ・・・」 あちこちで悲鳴が聞こえてくる。
この世の終わりのような現実である。辺り一面は焼け野原だ。
「せめてこいつだけでも・・・なんとか・・・」
男は何かを手に持ち崖から投げ落とした。
「俺たちの意思はいつまでもアイツの中で生き続けるから・・・」
その直後、辺りにはただ静寂の音が虚空をこだまするだけだった。
かつて、物質を構成する4大元素は、火、水、風、土といわれた。
これは世界が4大元素の国に分かれ、戦争をしていた頃の物語。
その中で、4大元素の国の一つ火の王国にこの戦争を止めようと立ち上がった
一人の少年がいた!
第1色 戦乱の幕開け
「ふぅ・・・今日も平和だねえ」
クリムゾン・スカイウォーカーが疲れた表情で言う。
身長170cm、赤茶色の短髪と大きな二重の目が特徴の16歳の少年だ。
「そうだね!いい天気だね!」
フローリア・アリス。彼女は穏やかな表情で言う。
黒のカールがかったロングヘアと二重が特徴の16歳の少女だ。
ここは火の王国、アランの街、辺りには中世を彷彿とさせる景色が広がっている。
この国は火の加護を受けており、大抵の国民は自分で火を起こして色々なことが出来る。
料理や風呂沸かしなど、色々と便利である。クリムゾンは火の王国を守護する騎士団の
1人で、アリスは騎士団ではないがクリムゾンの幼馴染みである。
クリムゾンは大事そうに首に掛けているペンダントを触る。
「そのペンダントいつも触ってるよね」アリスが言った。
「俺にとってお守りみたいなもんさ」とクリムゾン。
「いらっしゃーい!出来立てのアップルパイはいかがかい?」街の商店街には賑やかな声が
飛び交っている。
「おばちゃん!アップルパイ2つちょうだい!」クリムゾンが言う。
「あいよ!いつもありがとね!兄ちゃん!」
「おばちゃん!ありがと!」そういうとクリムゾンはアップルパイを頬張る。
「うっめーーー!やっぱここのアップルパイは最高だぜ!これアリスの分な!」
クリムゾンはアリスにアップルパイを差し出した。アリスはすぐに一口アップルパイをかじり
満面の笑みを浮かべている。2人ともここのアップルパイは昔からのお気に入りだ。
表面はサクサク、中のもっちりした感じがものすごく素材の味を引き立てている。
「よお、ウォーク!今日もお疲れさん!」町人がクリムゾンに話しかける。
「ありがとな!おっちゃん!」返すクリムゾン。クリムゾンは皆に「ウォーク」と呼ばれている。
クリムゾンはこの街の唯一の騎士団の人間で街の人からは大人気だ。
「さっきの話に戻るんだけどさ・・・何か最近別の王国の人間がこの国を襲っているっていう噂を聞いたよ・・・」とアリスがいう。
「そうなの?まあただの趣味の悪い悪党なんじゃないの?なんだかんだで4国とも政治的には中立だしね!今までの歴史で敵対してたことはないはずだよ!」
4国とはここ火の王国と水の王国、風の王国、地の王国の4国を指す。いずれの国も中立であり、
加護を受けている人々が暮らしている。水の王国なら、住んでいる人々は水を起こして、
洗濯、入浴等をすることを1人ですることが出来ると言った具合だ。
「じゃあ俺そろそろ騎士団に戻るわ!じゃあなアリス!」とクリムゾン
その時だった。「助けてくれぇ!」男が逃げながら悲鳴を上げている。
「どうしたんだ!?」クリムゾンが聞く。「あんた、騎士団の人間か?助かった・・・」
「水の王国の騎士が攻めて来て殺されそうなところを必死で逃げて来たんだ!」と男。
「何で水の王国が!?4国は中立じゃないのか!?」どこか腑に落ちないクリムゾン。
「とりあえず分かった。ここは俺に任せてあんたは逃げろ!」
すると、「おかしいなー?俺の獲物がここにいたはずなんだが・・・あんた知ってるか?」
男がいう。
「お前は!!水の王国騎士団のハイドロベルグ!!!何でお前が・・・」クリムゾンが言う。
「うん?お前俺の名前知ってるのか?ああ、思い出した。お前火の王国のクリムゾン・スカイウォーカーか・・・面倒なやつに当たっちまったなああ!!!」とハイドロベルグ
「火の王国から立ち去れ!!さもなくばお前を斬るぞ!!」クリムゾンがハイドロベルグを威嚇する。
「やだね!!!戦いの火蓋はたった今切って落とされたのさ!!これから俺たち4国は領土や資源を奪い合うバトルロワイヤルを始めるのさ!!何せ帝様の御命令だからなあ!!今頃各王国では帝様達が演説されているところだろうよ。」
「そんなバカな・・・帝様達がそんなことを言うなどあり得ない・・・」クリムゾンが言う。
この世界は各王国に国王がおり、各国王は国の象徴として存在している。そのため政治に関与することはできない。その代わりとして政治を行なっているのが各王国の騎士団の頂点に君臨する
帝である。つまり、帝の意向は絶対的なものであり、逆らうことはできない。仮に逆らえば処刑されることになる。
「とまあそう言うわけだから、そこを退け」
「退けと言われて退く奴はいねえよ」クリムゾンとハイドロベルグの応酬が始まる。
「しゃあねえな、・・・霧の劫略」
すると突如目の前が白い霧で覆われ見えなくなった。
「お前のダチを貰ってくぜ、これでお前は俺を通すしかねえ」
「助けて!ウォーク!」何とアリスが人質にとられてしまったのだ。
「俺の能力は「霧」自身の波動が干渉できる範囲内に霧を発生させたり、目に見えない
水の粒子で構成した剣で敵を斬りつける能力だ。なおかつ水の加護を受けているから水の基礎能力は使える。つまり火の王国のお前に勝ち目はねえんだよ!」ハイドロベルグが説明する。
「そうだな。普通の火の王国の人間はな・・・」とだけクリムゾンはいい、その刹那彼の両手にはアリスが抱き抱えられていた。
「お前!いったい何をした!」
「何って・・・ただアリスを助けただけだけど?」クリムゾンが言い返す。
「まあいい。人質が解放されたところでお前の負けは絶対的なんだよ!!」
ハイドロベルグは意気揚々と叫ぶ。
「アリス。ここで待ってろ」
「うん!ありがとう!ウォーク」アリスはほっとした表情で言う。
「分かってないねぇ・・・お前、もう負けてるよ」クリムゾンが呆れた表情で言う。
「これでお終いだ。水霧!!死ね。」ハイドロベルグがクリムゾン目掛けて剣を振るった。
その刹那、辺りにものすごい電撃が走った
「て、てめえ・・・何をしやがった?」ハイドロベルグはボロボロの様子だ。
「何ってプラズマでお前の霧の水分を電気分解しただけだけど?」
「さて、ここで問題です。今、水を電気分解した状態で、この炎をぶつけるとどうなるでしょう?」
そう言うと、クリムゾンは剣先に炎をまとわせ剣を振るった。
「ま、まさかぁぁ!!!」ハイドロベルグの断末魔が聞こえる。
「俺が相手だったことを悔いるんだな・・・あばよ・・転火」
次の瞬間、ハイドロベルグを囲うように大爆発が起きた。ハイドロベルグは完全に意識を
失っている。
「火ってのは極限まで高温にするとプラズマになって水をも制することが出来るんだよ。
俺は火及びプラズマを自在に操ることが出来る。
ってかもう聞いちゃいねえか。」
「アリス!無事だったか!怪我はないか?」
「本当に助かったよ、ウォーク」アリスがクリムゾンに抱きつく。
「ああ、とにかく無事でよかった・・・」
「それにしても、帝様はどう言うつもりだ?中立の条約を破ってまで自国の繁栄のために
戦争を行うとは・・・これは何としても止めねえと」
「俺は騎士団本部に戻って状況を確認してくる。アリスは気をつけて帰れよ!」
「うん・・・気をつけてねウォーク・・・」アリスがそう言うとクリムゾンは騎士団本部へ
戻って行った。
セイクリッドの街、騎士団本部のある街でクリムゾンは考えていた。
「何としても炎帝様を説得しないと、この世界に未来はねえ、何かしら戦わずに済む
方法があるはずだ・・・」
「ああ!!こんなに考えるのは俺らしくねえ。騎士団本部に殴り込みだ!!」
クリムゾンは騎士団本部の扉を開けて中に入って行った。
「やはりこの王国もか・・・嫌な予感がする。ウォークも動き出したようだし
俺もそろそろ動かなければ・・・」
謎の少年が騎士団本部のルーフで物哀しい表情を浮かべていた。