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神様汚職事件

作者: この人は未来

───私はしがないサラリーマンの徳田 洋司


今日もロクでなしの上司にガミガミ叱られて帰宅中


全く、とんだブラック企業に入ってしまったものだ


社員たちには何ら説明することなく汚職や失敗を隠蔽し、


挙げ句の果てにはトカゲの尻尾切り


責任を末端に押しつけて逃げる始末


何てことを考えながら、横断歩道で信号待ち


「……ん?」


そこで気づく


フラフラしながら向かってくる一台のトラック


「……んんん?」


まずい、逃げなければ───


そう思ったのだが、逃げられない


慌てるあまり、腰をやっちまった


「うおおおおおおおおおおお!!」


猛スピードで突進してくるトラック


何ということか……衝突までの一秒がとてつもなく長かったが、


走馬灯が必要なほど充実した人生ではなかった


だから、そのまま何もなく死んでしまった




・・・




「……というわけでここにいるんですが、ねえ神様」


「んー、そうだね」


「責任取って異世界に転生させるなり何なりしてくださいよ

出来るんでしょ、そういうの……知ってますよ」


「……嫌だね、バレたら減給なんだよ

あのねえ、神様にも上下関係あるわけ

タダ働きしてるわけじゃあないの、ね、分かる?」


「でもあの事故は神様の手違いだったんですよね」


「そうだよ、だからバレたらヤバイんじゃん」


「いやいやいやいやいやいや、隠蔽する方がヤバイでしょ?

私は戦いますよ、隠蔽するような悪い神様とは徹底的に戦いますよ」


「あー、無理無理……君はここで殺しとくから」


「え?何?何それ?」


「ここで殺しとくから」


「はははは、嘘ですよねぇ」


「そう見える?」


「……うーん」


「悩まないで

即答して

あとがつっかえてるの

怒られるのは俺なの

ねえ即答してよ無能サラリーマン」


「人を無能扱いしないで……ってか無能はアンタでしょ

てか……私以外にも手違いで殺しちゃってたりするの?」


「うん」


「『うん』じゃなくてさぁ……」


「しょーがないじゃん、だって人間も同じようなことやってるでしょ?」


「だけど神様がやっちゃダメでしょ」


「何でよ」


「神様は人間の模範なんだからさ……」


「いやいや、それ人間の勝手な妄想じゃん

神様って別に全知全能でもなければみんなの救世主でもないからね?」


「えええ!?」


「こっちが驚きたいよ

全知全能なら人間みたいな失敗作生み出したりしないから

その時点で気づけよ底辺サラリーマン」


「新しい蔑称つけないで……ナチュラルにハードに傷つくから」


「本当さ、マジでめんどい」


「手違いしなきゃ良いだけの話でしょ」


「交通事故くらいで死ななきゃ良いんじゃん」


「それはやめた方が良いよ、ねえ神様」


「車とか人間が勝手に作っただけじゃん」


「そうですけど、でも……」


「何で人間って態々仲間を殺すような道具ばっかり作るの?

もう神様わけワカメすぎてまいっちゃう☆」


「キッモイなぁ……滅茶苦茶ぶりっ子じゃないですか神様」


「論点ずらすなよチンパンジー」


「サラリーマンですらなくなった」


「とりあえず死んでもらうから、ハイさよなら」


───バタン


「……というわけですよ」


「それは同じ神として許せんな」


「でしょ、やっぱそうですよね」


「手違いで殺して、その証拠隠滅のために殺そうとしたものの、手違いで私のもとに転送してしまったと……」


「そうです、酷いでしょう?」


「しかし貴様も悪いな」


「え、何で」


「いかに相手が外道であろうとも、正義ならば捩じ伏せられる

力なき者こそが『悪』なのだ

つまり私は貴様のことも許せん

二度と私の目の前に現れるな、喰らえたらい回しの術!」


「滅茶苦茶だぁぁぁ!」


───バタン


「なるほどなるほど、それはかわいそうに」


「今度は優しそうな女神様だ……銀髪だし滅茶苦茶かわいいし……」


「もォ、そんなこと言っても何も出ないぞ♪」


「あのー……それで私、その……異世界に転生させていただきたくて、ですね……」


「ちょっとお待ちくださいねー」


カタカタ……カタカタ……カタカタ……


「あ、検索結果出ました」


「え、パソコン?」


「いいえ、パーソナルコンピューターパソコンです」


「パソコンですよね、っていうかパーソナルコンピューターですよね」


「え?パーソナルパソコン?」


「はやくしてください」


「神様に対してその言葉遣いはいけません、ブチ殺します」


「すんませんでした」


「えーと……五千年待ちです」


「五千年待ち?」


「はい、只今予約が殺到しておりまして……」


「何でそんなラーメン店みたいなことになってんの?」


「人気だからですよ

最近はオンライン予約で死後楽々転生サービスが流行なんです」


「凄い時代だな」


「このままだと五千年待たなきゃダメになりますけど……」


「あの……五千年経っても私の体は老けたりしないよね?」


「分かりきったこと聞かないでくださいよ

滅茶苦茶に老けます」


「聞いておいて良かった……いや将来的に良くないか

老けるの?何で?もう死んでるのに」


「日本人の過労と老化は神の技術を持ってしても止められないんです……」


「くそ、日本のブラック企業は神をも唸らせるのか!」


「まあ諦めて待っててください、五千年ほど」


「嫌だ!転生する頃にはシワクチャじゃん!ハーレム作れないじゃん!」


「我が儘ですねぇ、じゃあもうどっか行っちゃえ」


「アアアアアアアアアアアア!!」


───バタン


「……ふ、踏んだり蹴ったりだ……あんまりだ……」


「フォフォフォ、苦労しとるようじゃな」


「あああまた神様だ……もう嫌だよぉ神様なんて……

フィリピンに出張して毎日バナナばっかり食わされてバナナが苦手になったのを思い出す……

バナナは甘いけど苦い思い出だよぉ、うわぁん」


「……お主は不幸か?」


「不幸以外の言葉が見つからないよぉ、うわぁん」


「そりゃお主の語彙力が貧弱なだけじゃな、

最近の若者はボキャブラ……ナントカが足りとらん

ワシでは面倒は見られんわ、よそに行け」


「ボキャブラリーだよお爺ちゃん!」


───バタン


「……は、今までで一番薄毛……じゃなくて幸薄そうな神様だ……」


「誰が幸薄そうじゃと?」


「そっちに怒るんだ」


「薄毛なのは認めるわい、じゃが……ワシが幸薄なわけがなかろう」


「どこからどう見ても貧乏神だよ」


「若者よ、ワシの話を聞け」


「それは間違いなく私のセリフだ」


「そうか、そうか、良いぞ……転生させてやろう」


「唐突だな、マジで人の話を聞けよお前……

てか予約いらないんじゃん」


「ぁぁぁ、誰が薄毛じゃ!」


「今更そこに怒るのかよ、お前さっき薄毛認めたじゃねーか」


「……転生先でも頑張るのじゃぞ……あ、でもチート能力はないから許しとくれや」


「情緒不安定かオイ

ってかチート能力なかったら転生する意味が……」


「秘技、ワープ!」


「ダッセェ名前だなぁ、捻れよ」




───ギュルルルルゥーン




「……やっと転生出来たな

でも……チート能力がないと何も出来ないぞ」




その後、原住民に捕らえられた私は牢獄にブチ込まれ、五千年の懲役刑を喰らった

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