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雨上がりの宝物  作者: 人生依存
第6話:私と彼女の思い出

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36/55

第七節

 こうして、私たちの京都旅行は終わりを迎えた。

 朝になり朝食を食べ終えると、直ぐに私たちは帰路についた。

 もともとそういう日程だったから。


 帰りの電車の中、私たちはほとんど喋らなかった。

 楽しい時間が終わりを迎えようとしているのだと受け入れたくなかったから……だと思う。

 本当のところはわからない。


 できればもっとたくさんの場所に行きたかった。

 伏見稲荷だとか清水寺だとか、もっともっとたくさんの場所に行きたかった。

 ただ、高校生の財力ではそれは叶わなかった。

 その事実に、悔しさやもどかしさを感じる。


 乗る電車が線路を叩き鳴らす走行音が、何かのカウントダウンに感じた。

 最寄駅に着き、私たちは待合室のベンチに座って少しばかり旅行の思い出話をした。


「本当に楽しかったね。……本当に」


 溜めて吐き出された里咲の言葉には、やけに感情がこもっていた。


「また行きたいね。次は冬休みに行こうよ」


 私がそう言うと、里咲は戸惑いながらも「うん」と返してくれた。

 その返答があまりにもぎこちなくて、私は少し不安になる。

 この不安がただの気のせいだったら良い。


「本当、楽しかった。燈と旅行に行けてよかった。…………思い出を……作れてよかった」


 きっと、誰が見ても里咲の様子が異常であったことは理解できただろう。

 私は一層不安になる。

 この不安が気のせいだったら良い。


「ねぇ、死んだりしないよね」


 いつかと同じ質問を投げかけた。

 里咲は優しく微笑んだ。


「死なないよ。私は生き延びてやる。寿命が尽きるまで」


 その言葉は以前とは異なる意味合いに感じられた。

 けれど、私が以前と異なる捉え方をしているのだと悟られないように、私は頷いた。

 喉の奥に何かの言葉が突っ掛かったけれど、それを飲み込んで頷いた。


「……うん」


「ずっと…………ずっと、私の友達でいてね……燈」


 何故、今このタイミングで里咲がそんな事を聞いてくるのかわからなかった。

 まるで崩れそうな関係を維持する為にくさびを打とうとしているみたいで、私は居た堪れなくなる。

 更に一層不安が大きくなったが、私はその不安を飲み込んで頷く。


「……わかった」


「じゃあ……帰ろっか」


「…………うん」


 ただただ、嫌な予感がした。

 駅から歩き、私の家の方向と里咲の家の方向の分かれ道にたどり着くなり、私は「また明日」と言った。

 うまく言葉にできないけれど、先手を打つ必要があると思ったから。

 里咲は優しく微笑んだ。


「うん。またね」


 そういって手を振り、里咲は私に背を向けた。

 私には正しい選択肢がわからなかった。


 去り際、里咲は「次に会った時、必ず全部を話すから」と言い捨てた。

 その言葉はきっと、正しい言葉が吹く風に歪められて私に伝わったものだ。

 里咲は虹の麓にたどり着けたら私に全てを話してくれるのだから。



__________



 翌日、夏休み明け初日の学校に里咲は来なかった。



 担任の先生からは何の説明もなかった。






 この日から、里咲は姿を消した。


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