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恋と愛のエトセトラ  作者: 藍川 海咲希
【玲子×紅華】第1章 First love for you.
1/16

恋をした日

入学式が終わり、鹿島玲子たち新入生は教室に戻った。

教室は同じ中学出身のグループの他愛もない話で満たされている。

玲子は息を吐いた。頭の中はこれから始まる部活についてのこと。中学時代は特にこれといった興味のある部がなく、結局無所属のまま卒業してしまった。

だから、高校では何かしらの部に入りたいと思っている。

(まぁ、どんな部があるかもよくわかってないんだけどね)

心中で自嘲気味に独り言を零しながら、玲子はチラリとクラスで唯一の同中出身で友達の川本由那の方を見た。

由那は既に他校出身の子と仲良くなったらしく、玲子の知らない子と雑談に興じている。

やはり、由那はすごい。中学の頃から友達が多くて、彼氏もいて、

(私とは正反対だな)

やがてこちらの視線に気がついた由那は手招きで玲子を呼んだ。

はいはいとそちらに向かう。

「どした玲子?元気ないぞ?」

「由那こそ、入学早々よくそんな元気でいられるね」

「だって高校生だよ、なんかワクワクするじゃん」

そんなものなのか?よくわからない。

「とにかく、新しい友達、縁と紗奈」

「あ、うん、よろしく」

由那の凄いところは初対面で名前呼びができることだ。私の時もそうだった。

由那は玲子を2人に紹介してから言った。

「今ね、部活の話してたんだけど、玲子は部活もう決めた?」

「全然。由那は?高校でもバスケ?」

「まぁそのつもり」

さすが、中学時代に1年生からレギュラーだっただけあってバスケ大好きだ。

「縁・・・・・・さんと紗奈さんは?」

ダメだ。やっぱり私は由那にはなれない。

「私もバスケだよ。玲子さん」

縁さんは答えた。

「ボクもバスケ」

紗奈さんは答えた。ボクっ娘なのか。かわいい。

なるほど、2人共バスケ部に入るのか。

だから由那はこの2人と仲良くなれたのだろう。

「玲子もバスケ部こいよ。きっと楽しいよ」

きっとなのか。

「無理でしょ。私運動苦手だし」

「玲子さん中学では何部だったの?」

「なんにもしてなかった。あんまり興味ある部活なくて」

「だったらさ、パソコン部はどう?ボクのお姉ちゃんが部長やってるんだけど、新入部員いないと廃部らしいし、体験だけでも行ってみなよ」

「パソコン部か・・・・・・」

1度だけ見学に行ってみよう。そう決めたところで教室に先生が入って

来たので、玲子は自分の席に戻った。


翌日。玲子は、早速パソコン部の見学へ向かった。

パソコンは家でたまに使うから、入部しても問題はないだろう。

部室は校舎の奥で、1年生の教室からはそこそこ遠い。

こういう事も部員が少ない一因になっているのだろうか。

そんなことを考えていると、部室が見えてきた。

『パソコン室』。ここで間違いはないだろう。

「あの、すいません、部活体験なんですけど」

パソコン室ドアを開けると、そこにはパッと見で約30台のデスクトップPCと5,6人の人、と言うアンバランスな景色が広がっている。

「あ、新入生2号?」

答えたのは『かわいい系の美人』という言葉がとてもよく似合う先輩だった。2号て。

「私はパソコン部の部長をやってる2年の佐久間彩加です。よろしくね」

「ええと、1年生の鹿島玲子といいます。よろしくお願いします」

「玲子ちゃんか。じゃあ、1号の子の隣座ってね」

1号さんもいた。当然か。

佐久間さんが示したのは後方窓際の席だった。窓から丁度いい光が差しているいい席だ。

1号さんはこちらに背を向けていて、顔は見えない。

玲子は席に座って1号さんの顔を何の気なしに見た。



瞬間、心臓が震えた。



そこに座っていた少女は、かわいいだとか美人だとかそう言った言葉で表せない程に可憐で、儚げで、美しかった。

この少女は天使だ。と誰かに言われたら多分信じてしまうだろう。

物憂げに細められた目をじっとパソコンのモニターに視線を注いでいるその姿に、玲子は見惚れてしまった。

やがてその少女はこちらの視線に気がついて、その表情に驚愕と困惑が走る。

「あの・・・・・・私の顔、なにか着いてますか・・・・・・?」

その顔で、その声で、その仕草で、

玲子は、恋に落ちてしまった。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

お気軽にご意見やご感想をくだされば幸いです。

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