命の恩人様だぜ!
ある日会社の面接を受けていた中村翔は、いきなり異世界に飛ばされた。
能力は『テレパシー』。戦闘系能力じゃないことに愕然とする。
しかし悩んでもしょうがないとパイプ椅子片手に戦います!
仲間の喋るドードー、トカゲと一緒に生き延びます!
「ふう。これからどうしようかなあ…」溜息が思わず吐き出される。
「わしらと一緒におれば安心じゃろ。」「ハハハ…」
本人の前で本音は言えないが、ホントのことを言うと全く安心できない。
『不死』とかいうチートで2人はいつでも逃げられるが、俺は違う。
人生一度っきり。しかも能力は『テレパシー』いったいこれを何に使えと。
頭を抱えたくなるような状況だ。やれやれ。
さて 目的もない、食料もない、カネもない。現在異世界召喚中の無職23歳はどうすれば…
「2人は食べなくていいんすか?」「わしらは霞だけで生きてけるからのお…」
仙人かお前らは!危うく叫びそうになったが、堪える。
「だが大丈夫じゃ。わしらは森の案内人。食料のことならトカゲが知っとる。」
「よっしゃ!ようやく俺の出番だぜ!」
途中巨大猪や象男に踏み潰されながらも、トカゲは案内してくれた。
10分歩いてやっとついたそこには、楽園が待っていた。
桃、柿、林檎、梨、葡萄。様々な果物が全て巨木に実っている。
疲れていた俺はたまらずかぶりつく。その様子を2人は笑って見ていた。
お腹にも果物がたまり、休憩しようと腰を下ろした時。
ふと視界に一本の木が入った。
木には見たこともない黄金色の果実がたわわに実っていた。
さっきまで満腹だったことも忘れ、俺はその木に近づいた。
1つもぎ取り、かじる。シャクっとした面白い歯応えだ。
俺は夢中になって食べた。
お腹がいっぱいになったら眠くなってきた…子供じゃないがホントにそう思った。
木の根元で横になる。視界がぼやけ、眠りの姿勢に入る。
2人が近づいてきた。ドードーはステッキを振り回し、トカゲは俺を揺すってくる。
せっかくの休息タイムなのに…そう思ったのもつかの間。
2人は地面から飛び出した根によってがんじがらめに縛り上げられた。
一気に眠気が吹き飛んだ。
「いかん、そりゃ眠黄金木じゃ!今すぐはな」そこまでいうとズブズブと地面に沈んでいった。
俺はひとっ飛びして木から離れ、パイプ椅子を持って臨戦態勢。
ハッと思いついた。こんな時こそ『テレパシー』じゃないか!
必死にドードーとトカゲに『テレパシー』を送る。
「わしらは大丈夫じゃ。なにせ『不死』じゃからな。」
「眠黄金木の弱点は火だ!火に弱いんだ」トカゲから応答がくる。
いや火って言われてもなあ…よし、こういう時は!
全力で数百m先まで走り、昔社会科見学で火を起こした記憶を思い出し、
道具を組み立てた。垂直に立った棒をひたすら回す。
数分後火が出た。長い木の枝に着火する。
またまたダッシュで眠黄金木まで戻り、着火する。
そりゃもうよく燃えたわ。眠黄金木は幹をよじって抵抗するけど、火からは逃れられない。
幅の広い木の枝で地面を思いっきり掘る。掘って掘って数十分後。
やっとドードーの帽子が見えた。2人を一気に引き上げる。
「いや、助かったわい。お主がいなければわしらは永遠に地の下じゃった。」
命の恩人様だぜ!
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チッ、仕方ーねーなーって気持ちでもいいので!