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第9話 娘、友達が増える

 「えっと……私の部屋は……ここかな?」


 サリエルは自分に宛がわれた部屋に向かった。

 そこには……


 「あ! サリエル!! 私と同じだね!!」


 そこには嬉しそうに笑うカリーヌがいた。

 サリエルは首を傾げる。


 「私は最初に出来た友達のサリエルと同じ部屋になれて、嬉しいよ!」

 「カリーヌ……うん、そうだね!」


 サリエルとカリーヌは互いに手を握り合った。


 「じゃあ、よろしくね、カリーヌ」

 「私もよろしく、サリエル」


 と、二人で友情を確かめ合ったところで……


 「あのさ、この部屋って一応三人部屋だよね? もう一人は?」

 「それならあそこだよ」


 カリーヌが指さした先には……

 小柄なエルフの少女が本を読んでいた。


 「シャルロット!! 久しぶり!! 無事に合格したんだね、おめでとう! 同じ寮だなんて、奇遇だね」

 「……うん、とても幸運」


 エルフの少女……

 シャルロットはそう言って、再び本に集中してしまう。


 「じゃあ、取り敢えず誰がどこに寝るかを決めない? 私、三段ベッドは初めてなんだけど……」

 「私は寝相に自信がないから下が良いかな?」


 カリーヌは少し恥ずかしそうに……一番下のベッドを望んだ。


 「じゃあ私は……一番上が良いかな。シャルロット、一番上は私で良い?」

 「お構いなく。じゃあ私は真ん中」


 あっさりと寝る場所が決まった。

 

 寝る場所が決め、サリエルは自分用の引き出しに衣服を詰め込んでいく。

 それが終われば……食事をして、風呂に入り、今日は終わりだ。


 「ご飯って、どこで食べれるんだっけ?」

 「えっと……確か……」


 サリエルの問いに、カリーヌが『オルデール学園案内所』という資料を開いて答えようとすると……


 「食堂がある」


 シャルロットが答えてくれた。

 サリエルとカルーヌの視線がシャルロットに集まる。


 「後は学園の外に出れば、お店がたくさんある。……食堂が一番安いし、楽だと思うけど」

 「シャルロット、詳しいんだね」

 「全部書いてある。あなたたちが読んでないだけ」


 サリエルとカリーヌは目を逸らした。

 二人とも説明書は読まないタイプだ。


 「じゃあ、食堂に行こうか!!」







 基本、学園では食事は自由に食べて良いとされている。

 食堂の営業時間内であるならば、自由に出入りして食べても良いし、当然食べなくても良い。


 マリベルは校則は絶対、といったがその校則そのものは緩かったりする。

 

 まあ、レベルの高い学校ほど校則が緩く、低いところほど校則が厳しいというのはよくあることだ。

 

 オルデール公立学園には、世界中から良家の子女だったり地域の英才がやってくるので、マリベルもそこまで校則を厳しくしていない。


 自分たちで判断出来るでしょ? ということだ。


 だからこそ最低限の校則は厳しいのだが。


 さて、食堂には大勢の生徒たちが集まっていた。

 多くは新入生だ。


 取り敢えず最初は食堂で済ませるか。

 という思考はみんな同じのようであった。

 

 「えっと、何が食べられ……」

 「基本的に日替わりで、朝昼晩あるから一日に三回変わる。その日の食事が気に入らなければ、外で食べるしかない。あと、予め予約が必要だけど生徒用の調理室が借りられるからそこで自炊もできる」

 「物知りだね!」

 「全部書いてある」


 などとやり取りしながら、三人は料理を受け取りテーブルに向かう。

 幸い、三人分の席が丁度空いていた。


 本日のメニューはビーフシチューだった。


 「えっと……取り敢えず、自己紹介でもする?」


 席に座って、数秒の沈黙の後にサリエルが切り出した。

 二人は黙って頷いた。


 取り敢えず、言い出しっぺの自分からとサリエルは思い……

 口を開いた。


 「サリエル・ド・ヴァロワです。えっと出身地は……勇者アレクシオス村? あ、これは別にお父さんが自意識過剰なんじゃなくて、嫌々だから……私もあまり名乗りたくないかな。知っている通り……勇者アレクシオスと聖女アニエルの娘だよ。ま、まあ私自身は何か凄いことをしたわけでもないから、あまり持て囃されると……その、恥ずかしいから止めて欲しい」


 一先ずサリエルが名乗る。

 すると、シャルロットが眉を顰めた。


 「ド・ヴァロワ? 母方の姓を名乗ってるの?」

 「う、うん……何か分からないけど、お父さんは私の姓をそっちで登録したみたい。詳しく聞いたんだけど、そっちの方がいろいろ便利だとか、何とか……」


 アニエルはアレクシオスのところに嫁に行ったわけで、ヴァロワ王国では通常嫁に行った側は姓を夫に合わせて変える。

 しかしどういうわけか、アニエルは姓を変えず……サリエルは父親ではなく母親の姓が与えられた。


 普通ならばこれでは結婚は成立しないのだが……

 どういうわけか、通ってしまっている。

  

 「私は国王陛下の圧力が掛かったのか、それともお父さんが国王陛下に頼んだのかのどっちかだと思ってるんだけどね……」


 今更な話だが……

 この国はヴァロワ(・・・・)王国である。


 ヴァロワ王室は巨人族の家柄で……

 現在の国王の弟と天翼族との女性との間に産まれた姫がアニエル・ド・ヴァロワなのだ。


 つまりサリエルは国王の又姪であり、サリエルにとって国王は大叔父ということになる。


 と、そこでカリーヌはサリエルに言い忘れていたことを思い出す。


 「そう言えば、サリエル首席だったよね、おめでとう」

 「え? あ、そうだね。うん、ありがとう」


 首席合格者は入学式で新入生代表のあいさつをすることになっている。

 よって、サリエルが首席であることは周囲に知れ渡っていた。

 

 ついでに……


 「試験会場を壊したらしいね」

 「あ、あれはニコラスさんがやれって……」


 ジト目のシャルロットに対し、サリエルが弁解した。

 すでにサリエルが試験会場で暴れたことは噂になっている。


 「噂に聞いたけど、あの壁……強力な理術が掛けられているから……破壊したのは聖女アニエルが最初で、サリエルが二番目だってさ」

 「……それは喜べば良いの?」


 確かなのはサリエルが将来有望な騎士の卵である、ということだ。


 基本的に戦争は騎士の数と、その戦闘能力で決まる。


 アレクシオスやマリベル、ニコラスのような最高戦力はいわば戦略兵器のような存在で……通常の地域紛争では送り込まず、また国境付近にも近づけさせてはならないということが紳士協定で決められている。


 「いや……でも……まあ、良いか。取り敢えず、私も自己紹介するよ。名前はカリーヌ・ド・ディアノール。父はディアノール公爵。見ての通り、巨人族だよ。よろしくね」

 「ディアノール公爵は……人族だけど、入り婿だったっけ?」

 「うん、戦争で活躍した功績が認められたらしいよ。まあ、今は見る影もないけれど……」


 シャルロットの問いにカリーヌは答えた。

 今は太ったおじさんだが、昔は騎力二十万を誇るヴァロワ王国の理術師だったのだ。


 最後はシャルロットの番だ。


 「シャルロット・アルザース。アルザース地方出身、見ての通りエルフ。身分は平民」


 ヴァロワ王国では基本的に平民には姓がない。

 そのため多くの平民はシャルロットのように……『アルザース地方出身の』という意味で、出身地を姓の代わりにする。


 「平民か……優秀なんだね!」

 「……首席様に褒められるとは光栄」

 「いや、それほどでも」


 シャルロットはサリエルに皮肉を言ったが……

 サリエルには通じず、肩透かしを食らうことになった。

 

 オルデール学園では自国の貴族、自国の平民、外国の貴族・平民の比率がそれぞれ一:一:一になるように生徒を取っている。

 当然だが、貴族よりも平民の方が多いので……合格は平民の方が難しくなる。


 とはいえ、一概に貴族よりも平民の合格者の方が優秀とは限らない。

 というのもやはり貴族の方が受けている教育の質が高いからである。


 「そう言えば今思い出したけど、私って貴族だったね」

 「何を今更……」

 「私、住んでたのド田舎だし……しかもお父さんと二人で小さな家だったから、あまり意識したことないんだよね。礼儀作法とかはお父さんに一通り教わったけど、あまり実戦したことないなあ」

 

 アレクシオス自身は今は貴族だが、平民の出である。

 そして……アレクシオスの生家で暮らしている以上、サリエルの暮らしは多少裕福な平民と変わらない。


 「貰っている年金の額を考えると、豪邸に住めるはずだけど」

 「それがね、お父さん……最低限の額を残して殆どを国に貸し付けてるみたい」


 アレクシオスからすればサリエルの養育費と最低限の貯蓄と娯楽で使う金を除けば、要らない金である。

 とはいえ使わないで腐らしておくのは勿体ない、ということで国に貸し付けている。

 

 半分寄付しているようなものだ。

 

 「あと、孤児院とかにも多額の寄付金を出したりしているみたいだね。さすが、お父さんって感じかな……別に私、贅沢な生活がしたいと思ったことないし」

 「へえ、勇者がね……」


 シャルロットは何故か、複雑そうな表情を浮かべた。

 それには気付かず……カリーヌはサリエルに話しかける。


 「そう言えば、社交界にも出てないよね。招待状は出てると思うけど……」

 「うん、まあでもお父さん過保護みたいで……」


 どういうわけか、アレクシオスはサリエルを人目に晒したくはないようだ。

 と、サリエルは語る。


 「まあ……堅苦しそうだし、私は良いんだけどね」


 そう言ってサリエルは笑った。


 「あのさ……」

 「何? シャルロット」

 「……そろそろ食べない?」

 「「あ……」」


 二人は自分のビーフシチューを見下ろす。

 すっかり冷めてしまい、膜が張ってしまっている。


 「じゃ、じゃあ食べようか! 話はお風呂と寝る前にすることにして……頂きます!」

 「「いただきます」」


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