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第6話 勇者、性教育をするべきか悩む

一応本日で最後の予定ですが

作者の気分?によっては、あと一話、二話程度投稿するかもしれません

 試験二日前、サリエルとアレクシオスは学園都市を散歩していた。

 というのも、前日はやはり勉強したい。

 しかし息抜きも大切である。


 というわけで、二日前に息抜きのために学園都市の散策をすることになったのだ。


 「ふふ、お父さん! こういうの、デートって言うんじゃない?」

 「バカ! やめろ……手を絡めるな! パパ活おじさんと勘違いされたらどうする!!」


 アレクシオスは周囲の目を気にして、甘えてくっつこうとするサリエルを引き離そうとする。

 アレクシオスとサリエルは正直、似ていないので……

 親子に見えないのだ。


 「あれ……あの人は……おおい!!」

 「おい、サリエル!! いきなり走り出すな!!」


 突然サリエルは走り出してしまう。

 慌ててアレクシオスはそれを追いかける。


 サリエルが追いかけた先には……

 エルフの少女がいた。

 以前宿屋でサリエルが出会った無口な少女である。


 「久しぶり!! また会ったね!」

 「……お久しぶりです、サリエル様」

 「様、っていうのはやめて欲しいかな。あと、敬語もやめて欲しい。……というか、何で私の名前を知ってるの?」


 サリエルはグイグイと少女との距離を詰めていく。

 サリエルは相手の顔に自分の顔を近づき過ぎてしまう癖があるのだ。


 少女は戸惑い、後ずさりながら答える。


 「あれだけ騒ぎになればね……そちらの方は『勇者』アレクシオス様ですか?」

 「うん、まあ、そうだな。あー、俺のことは構わなくていいぞ」


 アレクシオスは一歩下がる。

 後は若いお二人でどうぞ……

 などとアレクシオスは脳内で言ってみたりする。


 (サリエルの友達になってくれないかな……)


 アレクシオスとしては、生徒側にサリエルの暴走を止めてくれる戦友を求めていた。

 そう、昔のアニエルに対するアレクシオスやニコラスのようなポジションの生徒だ。


 「えっと、あなたの名前は?」

 「シャルロット。えっと、よろしく。その……サリエル」


 シャルロットはサリエルに手を伸ばした。

 サリエルはその手を強く握りしめた。


 「うん、よろしくね!!」

 「うん、頑張ろう……じゃあ私は用事があるから」


 そう言ってシャルロットは去っていく。

 サリエルは再び街に散策に戻ろうと、アレクシオスの手を引っ張った。


 「ほら、行こう? お父さん」

 「サリエル……ついに友達が!! ああ、そうやって俺の手から離れて行くんだな……お願いだ、いなくならないでくれ!! ……あ、すまん。少し考え事をしていた」

 「……全部口に出てたけど」


 そんなこんなで二人は再び街の散策に戻った。







 「誰かと思えば……クロンドール侯爵ではないか!!」


 サリエルとアレクシオスが仲良く歩いていると、道中声を掛けられた。

 振り向くと、そこには恰幅の男性がいた。

 低い背と髭の量から、ドワーフ族であることが分かる。

 

 「あなたは……ディアノール公爵!! これは……お久しぶりです」

 「卿はもしかして……娘さんの受験かね」

 「ええ、そうです……この子がサリエルです」

 「始めまして、サリエルです。ディアノール公爵」


 サリエルはディアノール公爵に頭を下げた。

 ディアノール公爵は上機嫌だ。


 「うむ、母君にそっくりだ。……まあ、卿にはあまり似てないがね」

 「はは……それは良く言われます」


 アレクシオスは苦笑いを浮かべた。

  

 「ところで、卿は今どこで生活しているのかね?」

 「生まれ故郷の村ですね」

 「そんな辺境に……いや、今のは決して君の生まれ故郷を蔑もうとしたわけではないが……君なら引く手数多だろうに」

 「俺には責任ある立場や、領地なんてものはいりませんよ。この名誉侯爵の肩書も重いくらいです。まあ、金はいくらあっても困らないので年金は貰いますけどね」


 魔王を打ち倒した勇者に、国は広大な領地とその領地に見合うだけの爵位、及び職務を与えようとした。

 しかしアレクシオスはそれらを全て断ったのである。


 曰く、自分に与えるくらいならば戦死した者たちに報いてやって欲しい。彼らこそが、本当の功労者なのだから、と。

 まあ領地経営とか面倒くさそうというのが本音なのだが。

 とはいえ英雄をそのまま放り出すわけにもいかないので、国は名誉侯爵の地位と定額の年金をアレクシオスに与えているのだ。

 そちらに関しては貰っても特に困らないので、ありがたく受け取っている。


 「ところで……公爵ももしかして……」

 「ああ、そうだ。娘が受験でな……もし合格すれば、サリエル殿と同学年になる。サリエル殿、我儘な娘だが……どうか友人になってやって欲しい」

 「は、はい……ところで、その娘さんは?」


 サリエルが問うと……

 公爵は悲しそうに首を横に振った。


 「気が散るから出ていけと言われてな……部屋で勉強しているよ」

 「ああ、なるほど……辛いですよね」


 アレクシオスとディアノール公爵は男親の辛さを分かち合う。

 

 ちなみにディアノール公爵もこの学園の卒業生で……アレクシオスの先輩に当たる。

 在学中はアレクシオスも随分とこの公爵の世話になったのだ。

 

 「そう言えば、公爵の奥方はヴァロワ家の……巨人族ですよね? 娘さんはその、どちら似ですか?」


 ディアノール公爵はドワーフ族だが、彼の妻は巨人族である。

 ヴァロワ王国の王族は巨人族で……その王族と結婚したからこそ、彼は公爵の地位を得ているのだ。


 「顔は母親似だが……背は人族の平均くらいかな? 上手く、私の血と妻の血が混ざったみたいだよ。君の娘、サリエルは……うん、そちらも母親似のようだな」

 「ええ、そうです。母方の……天翼族の血と巨人族の血が色濃く出ていますよ」


 巨人族はその名の通り、非常に体の大きい種族で怪力を誇る。

 そして天翼族は背中に白銀の翼を持ち、高い理力を持つ。


 サリエルは天翼族の理力と肉体、そして巨人族の怪力を母親から受け継いでいた。

 ちなみにアレクシオスは人族で……人族はこれといって特徴のない種族だったりする。


 「それはまた……大変そうだな。大丈夫かね?」

 「……正直、かなり心配しています。あのアニエルの娘ですから、何をやらかすか分からない」

 「お、お父さん!! こ、公爵まで!! 私はそんなことをしませんよ!!」


 サリエルはあまりの扱いに頬を膨らませ、抗議の声を上げた。

 そんなサリエルを見てディアノール公爵は笑い……サリエルの頭を撫でながら言う。


 「ふふ、そうだね。では、受験頑張るのだぞ? サリエル殿。あと……くれぐれも受験会場を壊さず、試験管に重症を負わせないように!」

 「そんなことはしません!!!」





 その夜のことである。


 「ふう……あのディアノール公爵の娘さんが入学、か。うん、そうだよな。俺も四十だし、サリエルも入学するし……時は経つのは早い。はあ……」


 アレクシオスは宿屋に備え付けられている風呂で体を洗い流しながら、呟いた。

 何とも言えない寂しさを感じる。


 もう二度と、あの頃……青春時代には戻れないのだ。


 「アニエル……安心しろ、絶対にサリエルは、お前の娘は俺が守り抜くからな……」


 アレクシオスは決意を新たにし、体を洗い終えて……湯舟に浸かろうとした。

 すると……


 「お父さん、一緒に入ろ!!」

 「うわぁ!!! ば、バカ!! お、お前、入ってくるな!!」


 アレクシオスは突如全裸で現れたサリエルに驚愕の声を上げる。

 サリエルはなぜアレクシオスが戸惑っているのか分からない様子で、首を傾げた。

 

 「良いじゃん。昔は一緒に入ったし……」

 「それは十二歳までの話だろうが!! ダメだ、絶対にダメ!!」

 「何で、良いじゃん!! 親子でしょ?」

 「親子だからダメなんだよ!!」


 などと頬を膨らませるサリエル。

 相変わらず、我が娘ながら可愛らしい。そしてその大きな胸と尻は誰に似た?

 けしからん……

 

 と、アレクシオスは娘の成長を感じつつ……

 肩を掴み、強引に後ろを向かせた。


 「ほら、服を着なさい! すぐに上がるから!!」


 アレクシオスは強引にサリエルを風呂場から追い出した。

 サリエルは文句を言いながらも、外に出る。


 サリエルが去ってから、アレクシオスは溜息をついた。


 「全く……思春期なのに、なんでそういうところは無頓着なのやら。ちゃんと性教育するべきだったか? でもなあ……はぁ……学園でマリベル様にでも頼もうかな?」


面白いと思って頂けたら、評価、ブクマをよろしくお願いします

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