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第4話 勇者、まだ若者には負けない

9時、12時にあと二話投稿する予定です

 アレクシオスとサリエルが悲鳴のしたところへ駆けつけると……

 そこには酷い惨状が広がっていた。


 瓦礫が転がり、何人もの人々が怪我で呻き声を上げている。


 そして瓦礫の中央には目を血走らせた一人の男。 

 そしてその周囲を警吏が囲んでいる。


 「投降しろ!! ブノワ・スペルダー!!」


 警吏の代表格の男……

 一人の騎士が剣を向けた。


 「貴様は包囲されている。 お前に勝ち目は無いぞ!!」


 アレクシオスはブノワと呼ばれた男を観察する。

 どこかで見たことがある顔だ。


 あの顔は……


 (ああ、似顔絵か!!)


 警吏に見せられた似顔絵の男にそっくりだった。

 大方、騎士崩れの犯罪者だろうとアレクシオスは推測した。


 

 この国に於いて騎士とは国家に忠誠を誓う、戦闘能力に優れた戦士のことを指す。

 ちなみに領地を貰った騎士のことを、騎士侯と呼ばれる。


 だが……全ての騎士が領地を得られるわけでもなく、そして雇ってもらえるわけでもないので……

 犯罪者に堕ちる者も少なくない。

 特に……アレクシオスが魔王を討ち果たし、騎士の必要性が薄れた近年では。


 「ふふふ……はははははは!!!」 

 「な、何がおかしい!!」


 ブノワは高笑いをする。

 そしてニヤリと笑みを浮かべた。


 「掛かって来いよ。 じゃあ俺を倒せるよなぁ?」

 「……良いだろう」


 騎士は腰から剣を引き抜いた。

 アレクシオスはその剣が業物であることを一目で理解した。


 それによく手入れされている。


 「はあぁぁぁぁ!!!」


 騎士は剣を振り抜き、一気に肉薄してブノワに斬りかかった。

 カン!!

 大きな金属音が響き……


 騎士が握っていた剣が根元から切断された。

 刃が弧を描き、地面に突き刺さる。


 「それで終わりかよ!」

 「ぐわぁぁ!!」

 

 ブノワは騎士の腹に蹴りを入れる。

 騎士の男は遥か後方に飛ばされ、住居の壁にめり込むようにしてようやく止まった。


 「ははははは!! まるで鉄が紙みたいだ!! この宝具『斬鉄剣クリファノオール』のおかげさ!!」


 ブノワは自慢気に『斬鉄剣クリファノオール』を振り回して見せる。

 なるほど、辺りに散らばる瓦礫の山はブノワは『斬鉄剣クリファノオール』で暴れた後なのだろう。


 宝具。

 それは騎士の力を高めるための特別な武器だ。

 ミスリルやアダマンタイトなどの希少な鉱物で製造されたその武器は、一種の兵器である。

 使用するには契約が必要で……宝具に血を吸わせ、宝具に実力が認められれば使用できる。


 戦術、時には戦略レベルの兵器になるので……本来は国が厳重に管理している。

 当然、犯罪者が持ち歩くようなものではない。

 いや……


 (盗んだから、犯罪者なのか。しかし……ありゃ、完全に暴走してるな)


 宝具は強い自我を持っている。

 無論、会話できるほどの自我を持つ宝具は少ないが……


 実力が足りない人間が使用すると、精神に干渉され、暴走することがあるのだ。

 

 よく見ると、ブノワの体から血が滴り落ちている。

 実力不足の人間が宝具を無暗にしようしたことで、体が悲鳴を上げているのだ。


 「サリエル、お前は怪我人の介抱をしていなさい」

 「お父さんは?」

 「少し若者を教育してくる。まあ、すぐ終わるさ」


 アレクシオスはそう言って進み出た。

 ようやくアレクシオスの存在に気が付いたのか、ブノワは『斬鉄剣クリファノオール』をアレクシオスに向けた。


 「何だ? おっさん」

 「最近の若者は出会い頭に『何だ? おっさん』などというのか。まあ、おっさんなのは否定しないが……挨拶というものがあるだろう」

 「うるせえ爺!!」


 おっさんから爺に出世?させられたアレクシオスは苦笑いを浮かべた。


 「ブノワ君、だったかな? 君はまだ若いだろう。見たところ……二十代半ばじゃないか? 投降したまえ。……まだ若いんだから、やり直せるだろう」

 「うるせえ!! クソ爺!!」

 

 ブノワはアレクシオスの静止も聞かず、斬りかかって来た。

 ブノワの斬鉄剣クリファノオールがアレクシオスの首筋目掛けて振り下ろされる。


 警吏や周囲に集まった野次馬たちは思わず目を瞑った。


 「な、何で……斬れないんだ!!」

 「別に不思議なことでもないだろう。斬鉄剣クリファノオールというからには鉄は斬れるが……それより硬い物は斬れない。簡単なことだ」


 ブノワの剣は確かにアレクシオスの首筋に振り下ろされた。

 しかしアレクシオスの首は宙を舞うどころか……血の一滴も流れていない。


 「っぐ、この、死ね! 死ね!!!」


 ブノワは何度もアレクシオスの首に剣を振り下ろす。

 アレクシオスは避けることなく、それを受け止め続ける。


 しかし何度斬りつけてもアレクシオスに傷一つ付かない。


 アレクシオスは溜息をついて、片手で剣を掴んだ。


 「どんなに優れた宝具を使っても、実力が伴わなければ意味がない。分かったかね?」

 「っく、何なんだよ!! 俺の宝具は無敵だ!! 俺に勝てる奴なんているはずが……」


 そんなことを喚くブノワの首根っこを、アレクシオスは掴んだ。

 そしてあっさりと持ち上げる。


 ブノワは何度も足でアレクシオスを蹴るが……

 ビクともしない。


 「威勢が良いのは元気が良いと褒めてやれるが……自惚れは良くない」


 溜息混じりにアレクシオスは言った。


 「君がやり直せるのを祈っているよ」


 そう言ってアレクシオスはブノワを地面に叩きつけた。

 

 その一撃でブノワは意識を失った。

 


 

 



 その後、怪我人の多くは遅れて駆けつけてきた理術師の治癒理術によって治療され……

 幸い、死者は一人もいなかった。


 「いやはや、まさかあの『勇者』様だとは思いませんでしたよ!! あ、サイン頂けますか?」

 「いや、まあ構わないが……」


 アレクシオスは騎士の男からペンを手渡される。

 騎士の男は自分の鎧の胸の部分を指さした。


 「ここにお願いします!」

 「……本当にここで良いのか?」

 「是非!!」


 アレクシオスは溜息をついてから、サラサラと鎧に自分の名前を書きこんだ。

 この自分の名前が書きこまれた鎧をこの騎士は一生着て戦うのか……

 と考えると、アレクシオスは何だかとでも恥ずかしい気分になった。


 「ところで、勇者様」

 「あー、いやアレクシオスで良い」

 「ではアレクシオス様!」

 「『様』じゃなくてせめて『さん』に……あー、もういいよ。うん、アレクシオス様だ。どうした?」


 騎士はアレクシオスの隣にいたサリエルに視線を移して問う。


 「もしかして……このお方はあの『聖女』アニエル様の?」

 「ああ、忘れ形見だ」

 「サリエルと言います!」


 サリエルは騎士に挨拶をした。

 騎士はサリエルにペンを持たせる。


 「えっと、これは……」

 「サインをお願いします!」

 「……」

 「書いてやれ」

 

 アレクシオスに促され、サリエルは複雑そうな表情で鎧に自分の名前を書きこんだ。

 サリエルの母である聖女アニエルと、勇者アレクシオスが英雄であり、サインを求められるのは分かるが……何一つ功績を残していない、ただの子供にサインを求めるとはどういうことだ?


 とでも、言いたげな顔である。


 「サリエル様はこれから受験ですか?」

 「さ、様? え、ええそうですけど……」

 「では、私の後輩……ということになりますね! 頑張ってください!!」


 騎士はそういうと嬉しそうに去っていく。

 勇者と聖女の娘からサインを貰ったことは彼の生涯の自慢話になることは確定的に明らかだった。


 「取り敢えず、宿に帰るか」

 「うん、そうだね……」

 

 二人が帰ろうとした、その時だった。

 

 「あの……勇者様、お願いがあるのですが……」

 「サリエル様、どうか、どうか一生に一度のお願いが……」

 「「「勇者様!!」」」

 「「「サリエル様!!」」」


 いつのまにか、手にサインペンを持った群衆に二人は囲まれていた。


 「……」

 「……」


 この後、二人は日が暮れるまでサインを続けることになった。

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