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最近、ノアナが毎日努力をして行っていたリハビリのお陰で漸くベッドの上から立ち上がって外へ行ったり出来るようになったらしい。
私はその報せを受けるなりフェリナと共に、彼らの住むテペルギュウス邸へやって来ていた。
そして、馬車から降りた私達が屋敷に足を踏み入れるなり、私達の目の前に現れたのはテペルギュウス家の執事であるアンデルさん。
アンデルさんは私達を見るなり優しげに微笑んだかと思うと、次の瞬間には「こちらへどうぞ」と私達をアイザック達のいる庭に案内してくれた。
私とフェリナはそれぞれそこまで案内してくれたアンデルさんに礼を告げると、背後から聞こえてきたそれはそれは嬉しそうなノアナの声に私達は思わず後ろを振り返る。
すると、そこには満面の笑みでこちらに手を振るノアナと、その背後で困ったように笑いながらこちらを見るアイザック。
私とフェリナはアンデルさんの「それではお嬢様と坊ちゃんをよろしくお願いします」の言葉を聞くなり、小さくそれに頷くと二人の元へ歩き出す。
その際に、つい先程まで庭の真ん中にある椅子に座っていたノアナが唐突に立ち上がったかと思うと、私達の方へと駆け寄って来た。
これには私もフェリナも流石に驚いて思わず同時にこう声を上げた。
「ノアナ、無理しなくていいから!!」
「走らないでちょうだい!!」
しかし、その言葉でノアナは足の動きを緩めることなく私達の目の前に来るなり興奮しているのか頬を桃色に染めながらこう言ってきた。
「フォリナ、フェリナ!お久し振りですね!!」
いや、お久し振りじゃなくて……。
私は内心で自身の頭を抱えたいのを我慢しながら、軽くノアナの頭を叩きながらこう告げた。
「ノアナ、貴女まだ完全な健康体になった訳でもないのに走るなんてことしないでちょうだい」
「そうだよ!こっちは気が気じゃなかったんだからね!?」
真っ直ぐにノアナを見つめる私と、そんな私の横でプンプンと腕を組みながら怒るフェリナ。
ノアナはそんな私達を見るなり少し肩を落としながらこんなことを言った。
「でも、少しぐらいなら走ってもいいってお医者様と兄さんが……」
私はチラリとアイザックにジト目を向けて、焦った様子で手を動かす彼に対して大きく溜息を吐いた。
「……だからといって何があるかまだ分からないのに軽くでも走るのはやめてちょうだい。私もフェリナもまだ貴女の事が心配なのよ」
「……ごめんなさい」
私は自身にフェリナが怒られた後によくしている悲しげな表情をするノアナの頭を優しく撫でると、隣で「分かってくれたならいいの!」というフェリナとノアナと共に、何やらこちらを見ながら胸を撫で下ろしているアイザックの元へ向かって歩き出した。




