26
両親とミリアーナ叔母さんがあれから暫くして部屋を出てきたかと思うと、今まで私に構っていなかった分の反動か叔母さんは私をそれはそれは可愛がってそのまま屋敷を後にした。
私はフェリナと手を繋ぎながら屋敷から去って行く馬車に手を振り終えるとそれぞれ顔を見合わせる。
すると、フェリナがそれはそれは可愛らしい笑顔を浮かべながら私の両手を取りながらこう言った。
「叔母様と仲良くなれて良かったね、フォリナ!」
もう心から嬉しいですと言わんばかりに私の手を取ったまま手をゆらゆらと揺らす彼女と、それに対して微笑ましい目を向ける私とその背後にいる両親。
私はそれを確認するとそっと自身の目の前にあるフェリナの額に自身の額を引っ付けながらクスクスと笑みを浮かべた。
「……そうね、本当によかったわ」
正直な話、記憶を取り戻す以前の私はミリアーナ叔母さんの事を個人的には好いていた。
でも、王妃であるミリアーナ叔母さんは自分達よりも地位の低い者や他人を思いやることの出来ない自己中心的な私に好感を持てなかった。
その為に本来ならば二人に与えるはずの愛情をミリアーナ叔母さんはフェリナばかりに注ぎ続けた。
その結果、私の性格は捻くれに捻くれてしまったのだ。
心の中ではフェリナのように自分も甘やかして欲しい、けれどフェリナにしか興味の無いミリアーナ叔母さんは大嫌い。
だから絶対にいうことなんて聞いてあげない。
なんてまあ子供にありがちな事を考えていた訳だ。
私だって前世で五つ下の妹がいて幼少期には沢山あの子にヤキモチやらなんやらを焼いた。
でも、結局の所は両親からの愛情はそれなりに受けていて妹もそれなりに大きくなると同時に両親からの愛情は平等なものになったし私からしても妹に愛情を注ぐことは当たり前になった。
だけど以前の私は前世の私ほど成長してなかったが故に「はい、そうですか」とそう簡単に物事を納得出来なかったのだ。
私は頭の中で色々と考えながらも、背後から「中に入るか」という父さんの声にフェリナと同時に返事を返すと、家族四人で手を繋いでそのまま屋敷内へと足を向ける。
ただ、その際思ったのはここにいる両親だって以前の私が「はい、そうですか」と簡単に全てを納得できなかった理由の一つでもある。
前までのこの二人といえば娘である私に説教という名の教育をする訳でもなくただひたすらに片や頬に手を添えて、片や目元を抑えながら溜息を吐きながら、ただ無言で以前の私を傍観していた人達だ。
確かにフェリナは勿論のこと、私の事も大事にしていたとは思う。
けれど以前の私からすると自身の両親は遠くから自身を眺めてそれはそれは悲しげな顔をしたり困った顔ばかりして余り今のように明るい微笑みや笑顔を見せてはくれなかった。
それもまた私が捻くれていく原因でもあった。
フェリナには笑顔を向けながら頭を撫でてあげると言ったスキンシップを取る。
だけど私にはどう?
父様も母様もきっと私なんてどうでもいいのね。
全て、全てそれもこれもフェリナのせい!!
とまあ、こんな事を以前の私は思っていた訳だ。
これに関してはこれからも誰にも話す気もないし、これからも私が私である以上はこれまでのこと全てを心に秘めたまま今の私を可愛がってくれている両親達に許容の範囲内で甘えるつもりだ。
でもまあ、前世の頃から思うけどやはり子育てには沢山の愛情は勿論だけど子供にきちんと怒るってことも大切なんだなとわが家庭を見てみて再確認した。
「……子育てには気を付けよう」
私はボソリと頭の中で今知り合いのフェリナを含めた六人を頭に浮かべると、そのまま今から仕事をするという父と別れて母さんと私とフェリナの三人で庭のテラスへ向かうことにしたのだった。




