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まああの日から軽く療養的なことになってる私ですが、つい昨日父と母が私の部屋にやって来て軽く話した瞬間に軽く歓喜の声を上げたのは今まで我儘放題だった筈の五歳の娘の性格がいい方向に変わったからですよね。
私はゆっくりと自室のベッドの上でメイドが持ってきた甘いミルクティーを啜りながらほうっと息を吐く。
すると、そんな私の吐息を聞いてニッコリと微笑んだのは私専属メイドのリリー。
彼女も以前までは私がちょっとしたミスや八つ当たりで頻繁にボロカスに罵ってたから物凄く嫌われていたのだけど今やもう仲良しこよしですよ。
リリーはブラブラと足を揺らす私を見てクスクスと笑い声をあげるとそのまま空になったティーカップに紅茶を注ぎ口を開く。
「フォリナ様、本日は一体どのような事をする予定なのですか?」
「うーん、外に行って本でも読もうかと思ってるわ」
「あら、それはいいですわね!今日は天気も良く絶好の読書日和ですわ!!」
ニコニコと可愛らしい笑顔を浮かべて鼻歌交じりに仕事をする彼女。
彼女も私が変わって今ではこの仕事場を楽しい場所と思ってくれているようで何よりだ。
前までならばこんな風に話し掛けられもしないし、鼻歌交じりに仕事なんて以ての外、それに私自身が彼女にボロカスに暴言を吐いていたし。
そう思うと、変わって良かった。
私はパチリと目が合うなり嬉しそうにこちらに笑顔を向ける彼女に同じく笑顔を向けて、手に持っていた紅茶を飲み干して「これお願いね」とリリーに行ってその場を去る。
そして、やってきた書庫で私は適当に数冊本を手に取るとそれを持って屋敷内の庭にあるベンチ代わりにもなる噴水に腰掛けて本を読み始める。
主に私が読む本はフェリナには難しいと言われるけど、精神年齢を考えると普通に読める小説なので問題ない。
私はじっくりと本を読みながら耳に髪を掛けてページを捲る。
すると、突然目の前から聞こえたガサリという物音と子供の小さな悲鳴。
私はゆっくりとその場で顔を上げて、何やら目の前で尻餅を付いている小年に声を掛けた。
「大丈夫?」
そっとその場から立ち上がって彼に近寄れば、顔を真っ赤にして尻餅を付きながら何度も頷く彼。
あれ、あれ、あれ?
もしやこの少年って将来的にフェリナとフォリナの幼馴染でフェリナの攻略キャラになるレインでは?
私は彼に手を貸しつつも、じっくりとその整った顔を眺めながら首を傾ける。
途端にあわあわと忙しなく手を動かし始めた彼は聞いてもいないにも関わらず自己紹介を始めた。
「あ、あの、私はレイン・キャメロットです!」
「あぁ、はい。私はフォリナ・ヴィンセントですわ」
お互いに頭を下げる私とレイン。
すると、丁度そこへフェリナがやって来た。
「フォリナ、父様が客人の方が来るから屋敷に戻ってきなさ……って、誰っ!?」
フェリナはこちらへ走ってきてたと思うと、レインを視界に入れるなりそう叫んで私の腕を掴んでその場から私を守るかの如く私の目の前でレインを睨み付ける。
いやいや、待て待て。
フェリナってそんなキャラでしたっけ?
私はここ最近何かと自分に懐いてくれて、終いには今目の前で私を守るかの如くの行動をする妹を見て口元を引き攣らせる。
でも待てよ、確かレインとフェリナの出会いって噴水の前だったような……。
私は目の前で困惑するレインとそんな彼を問答無用で睨み付けるフェリナを見て小さく溜め息を吐く。
けどまあ何はともあれ、まずはフェリナを止めてレインを連れて父さんの元へ戻らないと。
私はフェリナに「一先ず彼を連れて屋敷に戻るわよ」と言ってそそくさと先に屋敷の方へ歩き出した。