13
今日のほぼ一日をフェリナと母と一緒に過ごして夜になった。
私は手に持った笛を暫く見詰めると、ゆっくりと笛の口を付けて軽く息を吹き込む。
すると、笛から出た音はヒューッというただ単に穴から息が吹き出たようななんとも情けない音。
私はこれに思わず「本当にこれで来るんでしょうね……」と小さく呟いて肩を落とす。
そして、ギノが来るのを待つこと約三分。
自室の窓がいきなり開いたかと思うと、そこには蹲踞の姿勢でこちらを冷ややかな目で見ているギノがいた。
ギノは引き攣った笑みを浮かべた私を見るなりこう一言。
「何……?」
「いや、ちょっと言いたいことがあって……」
「言いたいこと、って何……?」
あからさまに目で「さっさとしろ」と急かしてくる目の前のギノ。
私はこんなやつに妹を任せてもいいのかと思いつつ、今日決めたことを彼に告げた。
「言い難いんだけど近々うちの妹がとあるパーティーに出席するんだけど、その先でその子ったら誘拐されてしまうの。だからその時にあの子を助けて欲しいからあの子にこの笛を渡してもいいかしら?」
途端にきょとんとした顔をした彼は無表情ではあるものの、不思議そうに首を傾けた。
「……それも、未来予知?」
「まあ、そうね」
「君は、パーティー行かないの……?」
「できればね。どうせ行ったところで妹が攫われてパーティーどころじゃなくなるのは目に見えてるし」
「……そうなんだ」
じっと太股で頬杖を付きながらこちらを見詰めてくる彼。
次の瞬間、彼はまたしても無言で私に何かを投げてきた。
そして、私が慌ててキャッチして開いた手の平には自身の持つ笛とそっくりの笛。
彼は私の手にある笛を指さしてこう言う。
「妹に、それ渡して……」
私はポケットの中から彼に先に渡されていた笛と、先程渡された笛を見比べながら思った事を告げた。
「この二つ、少しだけ模様が違うのね」
「……まあ、うん」
そこからギノはそっとこちらから目を逸らしたかと思うと、そのまま黙り込んでしまった。
私は少し悲しげな彼を見ながら不思議に思いつつも、これから先に起こるであろう妹の危機を救ってくれるであろう様子の彼に胸をなで下ろしつつ目の前の彼に感謝の言葉を告げる。
「ありがとう、ギノ」
ふわりと出来るだけ優しく微笑めば、ほんの少しだけ彼は大きく目を見開いてそのままその場から消えてしまった。
「……小さくてもギノはギノか」
私は恐らく照れてその場から逃げたであろうギノ少年に対してクスクスと笑うと、そのまま自室の窓を閉めてベッドへと潜り込んだ。




