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第7話 1人きりのエルフ

読んでいただきありがとうございます

主人の大切なお客様に突然飛び出したエルフを隠密兵達は揃った動きで小刀を向ける


完全なる敵対行動と認識したのだろう


「皆さん、武器をおろして下さい」


シリウスはそう周りに言い、同時にエルフも自分の元から離す


「君は少し精神が麻痺しているんだ。とりあえずゆっくり休んで体を回復させな」


シリウスは言い聞かせるようにそう言う

そして続けて


「君が居なくなった集落の人達もきっと君を心配しているだろうしさ。そこまでだったら連れて行ってあげるからさ」


ヒアテンを見ながらシリウスは言う、ヒアテンは頷き了解を出す


「違うんです、実は、私はハーフエルフなのです。父が人間で母はエルフでした。なので、村を裏切った形になった母は集落を追われ家族3人で些細ではありますが幸せに暮らして居ました。

ところが先日賊が襲ってきて両親は亡くなってしまい……」


そのハーフエルフは俯いてその先を黙る


「君はもう帰る場所もなく1人なんだ」

シリウスはこの少女の置かれた状況が昔の自分にとても似ていると実感し、哀れに思う


「じゃあ君はどうしたいの?」


「命も助けていただいた上に、こんなことお願いするのはおこがましいと承知ですが、私も王立学園に入学したいのです。お金は!卒業してきっと返済してみせます!どうか、どかお願いします、お願いします、お願いします……」


ハーフエルフの女の子はシリウス、ヒアテンのみだけでなく隠密兵達の方へもしきりに頭を下げお願いをし続ける


この子を助けてあげたい。心の底からそう思った


しかし、シリウスはこればかりは自分にはどうしようもないことであったため、頼みの綱であるヒアテンのみ方をそっと見る


「わかった、君の両親の命を奪ったのは、我が商会の傘下の者であったのは明白だ。そこで、君の学費は責任を持って我がグロウ商会が負担しよう。返済の必要はない。だがハーフエルフの……名はなんだ」


「あ、アリエルです」


「そうかアリエル、さっきの光景を見た通り、お前の両親の仇はすでに死んだ。お前は王立学園でなにを学び、なに得たいのだ」

ヒアテンは商会の理事にふさわしい堂々とした態度でアリエルに問いかける


「私は……、この国の法を変えてみせます。この国の奴隷法や、異種族排除の思考を改革したいんです。二度と私の家族のような人が生まれないように」

アリエルははっきりとそう答える


「そうか、悪かったな野暮なことを聞いて」

ヒアテンは安心したようにそう答える


「いえいえ!そんなことはないです!あの、ありがとうございます」

アリエルはまた深くヒアテンに向けて頭を下げる


気にするなと答えるようにヒアテンは手をひらひらとふった


ヒアテンさんはとてもいい人だ。アザエルさんの紹介する人が悪い人な訳がなかったのだ


疑っていたことを後悔しつつ、

シリウスたち一行は屋敷に入って一夜を過ごすことにした

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:

:

:

「……ウスさん、シリウスさん、シリウスさん!!」


誰かの大きな声で目がさめる。

昨日アザエルから強制催眠により強制的に昼寝をしてしまったため、目が冴えてしまい、屋敷でもらった王都の地図を見ながら色々調べていたら夜更かししてしまったのある


「お、おはよう。えっと……」

「アリエルです!」

「あ、あぁアリエル。」

「全くシリウスさん!夜更かしはダメですよ。今日は買い物にもいかないといけないのですから」

堂々と仁王立ちしたアリエルはそう怒りながら言ってくる


「ごめんって」

アリエルって意外とモノ言えるタイプなんだなぁ

昨日とは違い、とても元気な様子に驚きながらシリウスは着替えを始める


するとアリエルの顔がみるみる真っ赤になる

「な、なんで服を脱ぎ出すんですか!」


「え?」

シリウスはきょとんとしながらそう答える

昔、ヤビィがメイドとしていた時も目の前で普通に着替えていたためシリウスにはそういう常識がなかったのである


シリウスが混乱している中、アリエルは

「不潔!破廉恥!…」

など自分の知る限りの言葉をシリウスに投げかけていた


元気に動いているアリエルを見てシリウスは疑問が起こる


そして、チラリと見えたわき腹に昨日はあった痣がなくなっていたのである


「ケガ、治してもらったんだ。よかったね」


「い、いえ。これは自分で治しました。商会の方々はポーションを用意してくださったんですけど、そこまで頼るわけにはいかなかったので、ヒールという魔法を使いました」


「へぇ、ヒール使えるんだ」

シリウスは驚く

ヒールという魔法は神官などの信仰系魔法使いが得意とする魔法で、通常の魔法使いでも使えない人が多い系統の技であるからである


ちなみにシリウスもヒールは使えず、闇魔法にあるそれに近い魔法で回復をしている


「これからどうぞよろしく!」

シリウスはアリエルに握手を求める

アリエルの顔を依然として真っ赤であり、ぶるぶると震えながらではあるが手を握った

「よ、よろしくお願いします。」

そんな格好で言われてもなぁ……


手を差し出すシリウスはパンツ一丁であった




街に出た2人は人が賑わる大通りを歩いていた

「シリウスさん、最初はどこへ行かれるのですか?」

人混みに揉まれながらアリエルが聞いてくる


「最初に行くのはマイーラ防具店だ。グロウ商会と長い付き合いがあるらしく、急遽時間を取ってくれたんだ」


シリウスは昨日暗記するほど見ていた地図の通りに店に向かって行く


マイーラ防具店。王都屈指の鍛治職人マイーラの名を継ぐ7代目の店である。初代マイーラは魔王を討伐した勇者達の防具を全て作った人であり、この街の銅像にもなっているほどの有名人である


大きな銀色の縁の立派な扉を開けると、中はたくさんの防具が壁などにかけられ、高級感が漂う店であった。正面にいた1人の受付嬢が話しかけてくる


「いらっしゃいませ、マイーラ防具店へようこそ。今日はどう行ったものをご要望で?」


「ガイル商店からの紹介できました。」

シリウスはそういうと紹介文を受付嬢に渡す

受付嬢は丁寧に開封する

ちなみにアリエルは、緊張してシリウスの後ろに隠れるように立っていた


「了解しました。ご案内させていただきます。」

そういうと、個室に案内される

個室には4つのフルプレートが掛けられてあった

4つがさっきの店内にあった防具とは格が違うと思いつつも案内された席に座る


2人が座って待っていると、少しして、小柄な男が入ってくる

「ようこといらっしゃった、グロウ商会の者たちよ。ワシが7代目マイーラじゃ」


男の姿はこの店の雰囲気とは違って薄汚れていて、髪や髭はだらしないほど伸び、一緒にいてすこし悪臭すらするものであった


「おー、悪い悪い。つい鍛治に没頭すると徹夜や風呂に入らない日が出来てしまってな。許してくれぃ」


どうやらこの男は根っからの職人気質の男のようだ

談笑もほどほどにシリウスは本題に入る


「えっと、実は明日の王立学園の試験に向けて防具を揃えていただきたいんですけども」


すると、マイーラは困ったようにヒゲを触る


「んー、今から作ると最低でも2週間はかかるからのう。どう頑張っても明日までは不可能じゃ。防具は10人いれば10通りの完成になる。その者の骨格や戦いかたに準じたものにしなければならんのだ。それを考慮しなきゃ今日中にはきっとできるのだろうが、それはこのワシのプライドが許さん」


「そうですか…確かにその通りですね。」


「まあ、入学試験程度お主ほどの実力の持ち主なら防具なしでも余裕じゃろう。その年でその締まりきった筋肉と沢山の傷の数々。服の上からでもわかるわい。まあ、入学までに完成ができるようにしておこう」


シリウスは肌を見てすらいないのにシリウスの実力を見破ったマイーラは、続いてアリエルを見る


「嬢ちゃんはそれに比べて少し心配じゃ。体格からして魔法使いであろう、それなら魔法耐性のあるローブなどの防具を買っておくのが無難ではないだろうか」


そう、入学試験は戦闘によるもの、またそれに近いものであると言っていた。


戦士との戦闘の場合近接に持ち込ませなければ勝機があるが、相手が魔法使いの場合遠距離戦が多くなるため、耐性つきの防具は必要不可欠であった


「では、今から身体のはばを測っていく。お嬢ちゃんはモイ…って言ってもわからんな、受付の女のとこいってローブを選んでもらいな」


アリエルは言われた通り部屋から出て行く




採寸が終わったシリウスは早めに外で待っていた

しばらくして、アリエルが店から出てくる


「お待たせしました!」

透き通った真っ白の生地に何個もの耐性の紋章の入ったローブ、見るからに高級品のローブを着たアリエルが見せびらかすようにシリウスの前に立つ


「アリエル…それいくらした」

ため息混じりにアリエルに問いかける


「えっと、確か金貨50枚です!」

こいつ、やりやがった。


人(商会)の金とも関わらず躊躇いもない買い物をしたアリエルに少し怒りを覚えつつも、お金とは無縁のところで生活してきたのだからしょうがないなと心を落ち着ける


だが、もしこれが続くといけないのでシリウスは別の言い方をする


「アリエル、お前の昔住んでたところで釣れた魚で最も大きい魚はどんくらいだった?」


すると、アリエルは突然の質問に戸惑いながらも手を広げて大きさも提示してくる


「その魚が5000匹買えるほどの価値がそのローブにはある」


そういうとアリエルの顔がみるみると青くなっていく。


「ど、ど、ど、どうしましょう!まだ綺麗できたばっかりですし、今返せばお金は返ってきますかね!」

とても慌てて早口でアリエルはそう言う


「いや、今回はしょうがないさ。次から気をつけな」


「はい、ごめんなさい……」

アリエルはがくんと肩を下ろしシリウスの後ろをとぼとぼと着いていくのであった


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