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第6話 王都のぼったくり娼館

読んでいただきありがとうございます

今まで一話ごとの長さをコメントで頂いたにもかかわらず、前回と違って少し長めになってしまいました

視界が明ると、シリウスは路地裏のようなところに転移していることに気がつく


無事成功したみたいでよかった

とりあえず先ずは商会を探さないと……


そう思いつつ辺りを見回し人に見られていないか確認する


よかった、どうやら誰にも見られてはいなかったみたいだ

転移した先に人がいた場合、


人間の目では普通見えないような暗さの所も、長年訓練してきたシリウスは

"暗視"というスキルを習得していたため、昼同様辺りを見ることができたのだ


とりあえず、人々の賑わった声の聞こえる方へと足を運ぶ


「キラキラしてる……」


思わず声に出して感嘆の声を出してしまう


生まれてこのかた一度も街に出たことがなかったシリウスにとって、視界に広がる活気のある街は新鮮そのものだったのだ


「ちょっとそこのフードのお兄さーん」

感動に浸っているシリウスの元に、

両耳にたくさんのピアスをつけたチャラそうな男、いわゆる客引きと呼ばれる男が話しかけてくる


「なんでしょうか」

久々の人間との会話に、少し緊張しながらシリウスはそう答える


通行客がなかなかつかまっていなかったのか、その男はシリウスに笑顔で勧誘を始める


「奴隷娼館、いかがっすか。値段は普通の娼館と同じなんすけど、奴隷なんでプレイはほぼほぼなんでもありっすよ。今なら1時間でたったの銀貨3枚のみで案内できますよ」

客引きの男は早口でシリウスに店のことを話し出す


「いや、そこがどういうところかはよくわかりませんが平気です」


早く商会にいかないといけないのに…

なんでこの男はついてきながら勝手に喋るんだよ


そう思いつつもシリウスは丁重に断りその場を離れようとする

しかし、その男はルークの右腕にしがみ付き離そうとしない


「まあまあそう言わず!のぞいて見るだけでも入ってくださいよ、見るだけならタダっすよ」


男は必死に食い下がってくる。


すると、近くから男と同じ店の客引きがやってきて更にしつこく勧誘を始めた


あまりにも大きな声に、シリウスの周りには少しづつではあるが人が集まっていた


あー、振りほどいてもいいけどここで何かして、問題起こしてしまったらダメだからなぁ…行くだけいってすぐに帰ろう


シリウスは心の中でそう決める


「わかりました、見るだけ見てきます」


「ほんとっすか!」

客引きが成功し喜んだのか、男達は シリウスを見せまで案内する


腕くらい離してくれてもいいのに……


笑顔で案内する客引きは逃げさせまいと未だに手を話そうとはしない


「ところで、今グラウ商会のヒアテンと言う人を探しているんですけど場所を知っていますか?」


シリウスは、ここの土地勘に詳しいであろう客引きに、ついでがてらでそう尋ねる


客引き2人の顔は一瞬ではあるが真顔になっていった


何か悪い質問でもしたのか?


「どうして探しているのです?」

いつのまにか元の笑顔に戻っていた客引きはそう聞いてくる


んー、何か知ってるようだけど怪しいから隠しておくか


「いえ、まあちょっと野暮用でして」

そう言ってシリウスは誤魔化した


「そうでしたか、いやっ、申し訳ない、ちょっとそんな人は聞いたことないっすね」


「そうですか、ならいいです」


嘘だな。何かしらこの2人隠している

そう確信しつつも深く詮索すると怪しまれるのでそれ以上の質問はやめておくことにした


「あっ、ここっす。」


どうやら店に着いたようだ

地下で営業しているようで、男に連れられ階段を下る


するとそこには

"多種族BAR シックネス"

という看板がかかっていた


ん、さっきこの男、娼館とそういってなかったか

少し怪しみつつも男たちに急かされ扉の中に連れていかれる


中は紫やら赤などのスポットライトの光に包まれた大きなフロアになっていた


大音量のBGMに対し、店内に客は全く入っておらずどこか異様な雰囲気を放っていた


フロントと書かれた所に連れていかれ、受け付けの男に話しかけられる


「当店のご利用ありがとうございます。当店は、人間の奴隷のみならず人気のエルフやその他たくさんの種族が店員としてお客様にサービスしております。

お好みの娘などはいらっしゃいますか?」


「エルフも働いているのか?」


シリウスは驚く。エルフとは森の奥でひっそりと独自の集落を作り自給自足の生活をしていく民族であり、人語を喋り魔法を使うこともできるからだ。


「お目が高い。先日とあるルートから手に入れ、今日入店したばかりなのですよ。一目でも見ていかれますか」


そういうと、受付の男がパチンと指を鳴らし合図をする


すると、後ろの暗幕から1人のエルフが連れてこられた


見た目の年齢はシリウスとたいして変わらなかった

しかし、首には首輪がはめられ両足には重りがつけられていた

服装は安っぽい派手な赤色のドレスでその服の隙間から紫色のアザがいくつもあるのが見受けられた


よほど酷いことをされたんだろう


このエルフの少女の姿はまるで昔の自分のよう、いやそれ以上に酷い状況に悪い


すると、シリウスはフツフツと怒りがこみ上げてくるのを感じる


ダメだ、ここで暴れてしまったら全てが水の泡、なんとかこんな気分の悪いところから抜け出してしまおう


「すいません、用事があるのでもう帰らせてもらいます」

シリウスはそういうと出口のほうへと歩みだす


「お帰りですか、それなら金貨10頂戴致します」

受付の男が後ろからそうシリウスにを呼び止めるようにそう告げる


シリウスは足を止め、もう一度受付の男をまじまじとみる


「なぜそのような金を払わなけらならないのです?俺はサービスはおろか、腰を下ろしてすらいませんよ」


「いえ、注文されたではないですかエルフの娘が見たいと。いわば指名料ですよ。」

受付の男はやれやれといった顔でシリウスに言う


「それはそっちが勝手に連れてきたんだろうが」


「おー、そんな怖いことおっしゃらないでください。なら金貨8枚ではいかがでしょう」


「金なんて持ち合わせねぇよ」


シリウスが丁寧語をやめそう言い放つと受付の男は本性を現したのか口調を悪くしシリウスの腰を見ながら


「金がないならしかたねぇな、その腰に付けてるお高かそうな剣だけおいてけ。そしたら代金チャラにしてやる」


そう、元々客引きが声をかけたのはシリウスが高そうな剣を腰に下げていたからである


「断る。いますぐ出さないと痛い目に合わせるぞ」

すると受付の男の眉間にシワがよる。


「調子に乗ってんじゃねえぞくぞがき……

野郎ども、無銭飲食野郎だ!身ぐるみ剥いでしまえ!!」


その合図とともに客引きだった男たちは各々の武器を持ってシリウスを取り囲む


その目はまるで死骸を漁るハイエナのような目であった


そっちがその気なら正当防衛だ

見た所、ここの男達は武器の扱いに慣れてない

全員見せかけの奴らだ


男たちはシリウスに一斉に飛びかかる

「"影捕縛"」


ところが、結果は一瞬のことであった


飛びかかった男達は何かに操られているかの如く突然動きを止めたのだ


唯一、シリウスが故意的にかけなかった受付の男は驚愕の顔になる

「なんだこれ……お前、もしかして魔法使い…なんだこの魔法、聞いたこともないぞ」

男の顔は真っ青であった


あれ、珍しいものか?


シリウスは自分の知っている捕縛系の魔法で最も下級のものをかけたのだ

雑魚だけでも制圧するためにかけたのにみんな捕まり少しシリウスはガッカリしていた


「おい、お前、もう一度聞くぞ。料金はいくらだ」


シリウスは先程よりも圧をかけてそう聞く


「く、くそ野郎。この店はな!グロウ商会傘下のインディ商会お抱えの店だぞ!こんなことしてタダで済むと思うなよ。死ぬまで追い続けるからな!」


「ん、今グロウ商会って言ったか」

自分の探している商会の名を耳にし思わずそう呟く


これは詳しく話を聞く必要がありそうだ

えっと、誰だっけな


動きを完全に捕縛され動けなくなっている男達の中から自分をここまで連れてきた男1人を見つけ魔法を解く


前足を出したまま停止していた男は、急に自由になった体を上手く使えず派手に地面に転がる


「ぐはっ」

大きく額を打ち付けられたにも関わらず受付の男に必死に叫ぶ


「ニッケルさん。こ、こいつ来るまでにグロウ商会に探りを入れようとしてたんすよ!」


「なに?」

ニッケルと呼ばれた受付の男の動きが止まる


ガランッ


すると、出口の扉が開いた

入ってきた人数は6人。

小柄な男と、大柄な男その周りを守るように屈強な兵士のような体をした大剣を下げた男が2人と大きな杖を持った男が2人であった


「おい、ニッケル。これはどういうことだ」

小柄な男がニッケルに問いかける


「イ、インディさん。こいつが突然やってきて店の売り上げを巻き上げようとしてきたんです!しかも、グロウ商会さんをどうやら狙っているようです」


はぁ?なにを言ってんだこいつは


事実無根のことを堂々と話す姿に怒りを通り越して呆れてしまった


インディという男はみるみる顔が真っ赤になっていく


「おい、そこのフードの小僧。お前ここがインディ商会と知ってのことだろうな。生きては返さないぞ」


すると警備の男達4人が臨戦態勢に入る


「待ってくれ、俺はグロウ商会のヒアテンって人に用事があるだけなんだ。別に探りを入れようとしたわけでもなければ、金を奪おうともしていない」

シリウスは弁明を述べる


「こ、小僧なぜ今日ここにヒアテン様が来ると知っている」

インディは驚き目を見開く

男は左の大柄な男の方をちらりと見る


「ヒアテン様、我が店の情報が漏れてしまったこと、本当に申し訳ありません。この後、責任は取らせていただきますのでどうかよろしくお願いします」


この人がヒアテンっていう人なのか

「あ、ヒアテンさん。俺実はあなたに用があっ」


「うるさいこのクソ野郎。お前ら、半殺しにしろ。情報を聞くまでは絶対に殺すんじゃないぞ」


言葉を遮られ大剣を持った男達2人がシリウスに飛びかかる

男達は大剣を軽々と振り回す

シリウスは剣さばきを冷静に見極め避け続ける


お、遅すぎる……


サタンの振り回していた剣と比べるとまるでハエが止まれるような動きに見えたのだ


「火を司る神よ、我に力を授けたまえ、喰らえ!"火の玉連弾"!」

横から大きな杖を持った2人が火の玉三個をシリウスに向かって飛ばす


「"豪炎の壁"」

シリウスはその火を更に強い火の魔法で打ち消す


「う、嘘だろ。詠唱なしにその威力……ありえない」


魔法使い2人は驚愕の顔に変わる


そろそろ動きを止めるか


「"悪霊縛り"」

4人の実力をじっくりと見極めたシリウスは彼らを捕縛するに適した魔法を放つ


かかった4人は動きを止めその場に倒れこむ

"悪霊縛り"、闇に潜む悪霊によって相手を捕縛する技で、捕縛されたものは悪霊によって精気が少しずつ奪われていくのだ


「ひ、ひぇ。上級闇魔法……」

インディは腰を抜かす


「やっと、動きが止まった。おたくの護衛を無力化させてしまってからいうのもおかしいが、俺は本当にたまたまここに連れてこられたんだ。それでぼったくられそうになって帰ろうとしたら襲われたってわけ。」


インディはこくこくと頷く

「でも、ここにきたおかげで会いたかった人にも会えた。あなたヒアテンさんだよね?」


大柄な男に向かってそう話しかける

さっきインディがそう話しているのを確認したからだ


「なぜ、俺の名前を知っている。表名ではグロウと呼ばれるこの俺の裏の名を知ってるとは。お前も裏の稼業を営むものなのか」


大柄な男、ヒアテンが初めて口を開けそう答える


「実はね、アザエルさんからあなたにこれを見せれば面倒を見てくれるって言われてね」


そう言い、シリウスはポケットからアザエルからもらった赤い魔石をヒアテンに見せる


「そ、その魔石は……!?」


そう言うやいなやヒアテンはその場で即座に跪いた

頭を地面に強く打ち付け土下座を始めたのだ


「その紋様の魔石は。あのお方のもの。しかもその大きさ、あのお方の側近、またはそれに近いかたでいらっしゃったのですね」


土下座した状態でヒアテンは懐から小さな赤い魔石を取り出す

紋様はシリウスと同じものであったが大きさは10分の1程度であった


「あ、あぁ」

シリウスは自分より30以上も年が離れているであろう男に突然土下座をされ戸惑いつつもそう答える


「そうとは知らず、多大なご無礼を。誠に、誠に失礼いたしましたっ!!」

地面にこすりつけたまま謝罪をヒアテンは述べる


横にいるインディはわけもわからずキョロキョロとしている

「あ、あのヒアテン様。この小僧となにかご関係でも?」


インディがそう聞くと一瞬でヒアテンはインディの頭を掴み地面に何度も叩きつける


「クソ野郎はお前の方だインディ。あのお方の側近様になんて無礼な真似を、その罪はお前の死をもっても償うことはできん」


すでに気絶したインディに対して手を止めることなくヒアテンは叩きつけ続ける


「まあまあ、ヒアテンさん。俺は怪我をしてないですし気にしないでください」


その言葉でようやくヒアテンは手を止める

そして投げ捨てるようにインディを放り投げ、またシリウスの前で跪く


「ヒアテンとお呼びください。

寛大なお気持ち感謝いたします。しかし、ご無礼に対しなにも罰がないのは我々のルールに反します。しかも、あのお方の名を聞いたここのもの達を生かしておくわけには生きません。即刻この商会は取り潰し、二度と王国に足を踏み入れられないように処置させていただきます」


ヒアテンはそういうと合図を送る。すると店内の隅から何人もの隠密兵達が飛び出す


もちろんシリウスは気がついていたが、殺意が向けられていなかったため無視していたのだ


どうやらさっき倒した4人がインディの部下で、隠密兵達がヒアテンの部下のようだ


隠密兵達達は躊躇なく店員の男達を絶命させていく


店員達を絶命させたあと、隠密兵の1人が先ほど連れてこられたエルフの娘の前に立つ

そして、同じように絶命させようとする


「あ、ちょっと待って!」

シリウスがそういうと隠密兵は手を止め、ヒアテンの方を確認をする


「ここにいらっしゃる方の言葉は俺の言葉以上の力があると思え」


ヒアテンは隠密兵達にそう告げる

隠密兵は了解し、シリウスに敬意を払いながらエルフの娘の元から離れる


「この娘も連れて行きたいんだけどいいですか?」


「勿論でございます。」

シリウスの提案にヒアテンは跪いたままそう答える


他に、店の裏で働かされていた人間の女1人と他2人の種族の女は解放するということで話がまとまった


全ての準備が整いヒアテンが店への放火を命令する

インディや他、店員達の死を隠蔽するためだ


馬車の上座にシリウスは案内される


「ところであのお方の側近様、お名前を伺ってもよろしいですか?」

ヒアテンがそう聞いてくる


「あ、あぁまだ言ってなかったですね。俺の名前はシリウスと言います。実はあの方にここへきて、ヒアテンという人に明後日開催される王国の試験に必要なものを揃えてもらえと言われまして」


シリウスはアザエルの名前をあえて伏せる。

さっきのことからして、アザエルの名前はタブーなのであると察したからだ


「そういうことでしたか。了解致しました。我がグロウ商会の力を持って、シリウス様に全身全霊で協力させていただくことを誓います。ちなみに、先ほどの無礼の件は……」


ヒアテンが口を籠らせる


「ああ、もう気にしていません。勿論アザエルさんにも言いませんよ」


そう言うとヒアテンは安堵したのか大きく肩をなでおろす


「ところでヒアテンさん、先程の受付の男がインディ商店はグロウ商会の傘下であると言っていました。つまり、あのような営業を以前から許可しているので?」


シリウスは目を細めてそう聞く


もしそうであるならこの男に対する評価も大きく変わってくる


「いえ、それは違います。これも全てあのお方の指示なのです。裏でも力を握り、あのような下賤な店を取り潰すことが目的なのです。しかし、我が商会も真っ白な店かと聞かれればそれはノーです。他人を騙しましたし、闇に葬り去った数は数しれません。ですが、あのお方に言われた、"薬"、"人身売買"に関しては決して手を出したことはございません」


ヒアテンは真っ直ぐと瞳を見てそう宣言する


この人、相当アザエルさんを慕っているんだな

シリウスはその言葉を信じて疑いの目を解く


「そうですか、なら結構です。」


「ところでシリウスさん、王国の試験に出場されるんですよね、必要なものはこちらで用意しておきます。ですが、やはり武器や防具などは明日ご自身で見て回った方がいいでしょう」


「そうですね、そうさせてもらいます」



しばらくすると馬車は泊まり、とても立派なお屋敷に着いた


グロウ商会、本当にすごい所なんだなぁ

ここのトップの人からも尊敬されるアザエルさんって一体……


そんなことを考えていると、別車両に乗っていた1人の少女が俺の元に抱きついてくる


それは、さっきの娼館にいたエルフの少女であった


少女は涙を浮かべながら

「私も連れて行って下さい!」


どうやらまた何か起こるようだ


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