第4話 15才 10年間の集大成
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"帰らずの森"、その地名を聞けば名だたる実力者達も思わず身震いしてしまう場所である
その森はその名の通り、帰還したものはほぼ限りなく0人に近い事から付けられたものであった
生きて帰ってきた僅かな人間達によると、
森内は常に弱肉強食であり、高レベルモンスターや魔獣、はたまた魔族などが住んでおり縄張り争いで常に何かしらの血が流れていることから、
別の名を"血海"とも呼ばれていた
しかし人間達は知らないが、森での縄張り争いは序盤まででしか行われていないのだ
森の奥は、圧倒的な力を持った生物たちが間隔を開けお互い不干渉で君臨し、それぞれ生活しているのだ。そのため奥に行けばいくほど静かであるのだ
そんな、日頃静かな最層部に大きな爆発音が響き渡り砂煙が立ち込める
そんな砂煙から1つの小さな影が飛び出したと思えば
「黒炎の百本矢!」
空中で身体をひるがえしながら一瞬で魔法を唱え放つ
矢先が炎に包まれた数百本の邪悪な矢が放たれる
矢の先には1人の巨大な魔族がいた
その魔族の口から青色の光線にも近い炎が放たれる矢は消滅していく
しかし、わずかながら残った矢はその巨体に突き刺さる
小さな影、ルークは思わずガッツポーズをする。ところがすぐに異変に気がつき
"空中歩行"を使って空中を後退する
当たったはずの巨体が揺らいでいるのだ
すぐにルークはあれが上位の影分身であると気がつく
本体はどこだ、俺ならきっと……
すると後ろから突如として現れた魔剣が伸びてルークの体を貫く
吐血しながら振り向くと巨大な魔族、サタンがニヤリと笑いながらこちらを見下ろし
「3648戦3648勝だな」
そう高らかに言い放つ
しかし、吐血して苦しんでいたルークが突然ニヤリと笑いサタンの腕を掴む
サタンは困惑し顔を歪める
ルークはあの一瞬で分身を作り、剣を回避していたのだった
「堕天、黒炎斬!!」
サタンの後ろからもう本体のルークが現れサタンに斬りかかる
コイツは分身か!!
サタンは気を抜いたことを後悔する
「くそっ、!!」
サタンは腕を掴む分身を振り払い、
背中から来るルークの剣を防ごうとする。
だが、分身の抵抗のせいで少しタイミングが遅れてしまう
カキーーーーーーーン
剣と剣がぶつかり合い高い金属音が響き渡る
しかし、サタンの持っていた魔剣の刃先は折れていた
「くそーーぅ、また一発も食らわせられなかった!」
ルークは悔しそうにそう言うと空中から落下していった
魔力が完全に切れたのだ
もう少しで地面に落ちると言うところで横から高速でそのルークの体を抱きかかえるものがいた
「アザエルさん……ありがとう」
ルークはろれつが回らない舌でさめてもの感謝を言う
「惜しかったねー、ルークくん。」
ルークを拾ったアザエルはサタンの元まで飛んでいく
「ルークよ、最終試験合格だ。」
サタンはルークにそう告げる
「え、でも一発も食らわせられなかった」
飛んでくるまでにアザエルによって少し回復させてもらったルークは驚きでそう答える
「ほら、ワシの魔剣、完全に折れちまってる。自慢ではないが、この剣は世界でも屈指の魔剣だ。その剣を折ることができたのだ、お前は合格だ」
ルークは素直に納得出来なかった
合格点を低くされた気がしたからだ
「まあとにかく今は休め、今夜大事な話がある」
そうサタンは言うとアザエルを見て無言で合図する
「ルークくん、悪く思わないでねー。"強制催眠"」
魔法をかけられルークはすぐに眠りに落ちる
「父上様、ルークくんはここ十年でとても強くなられましたね」
アザエルは父であるサタンがルークにしてきた拷問にも近い訓練を思い出し苦笑いをする
「あぁ、ワシもここまでとは思っていなかったわい。」
サタンは折れてしまった刀身を見つめる
この剣を折られたのも二回目か……
懐かしい思い出にサタンは浸る
「……様…父上様、どうかなさいましたか?」
サタンは我にかえる
「いいや、少し昔を思い出していただけだ。それよりアザエル、例のものちゃんと用意しておいたか」
「はい、例の書類ですね。既に準備はできております」
「ならよい」
「これで、別れになるのですね」
どこか悲しそうなアザエルの横で、ルークは幸せそうに眠るのであった
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