第3話 悪魔の子とよばれる所以
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視界が明けると、目の前はさっきまでいた裏門とはうって変わっていた
しかし、どれだけ離れてしまったのだろうか
さっきまで夕方だったら空は、曇天に変わり、辺りは紫色の妖気が一面に漂っていた
「ふぅ、ついたみたいだね。」
隣を見るとこの魔法を放った魔法使いが立っていた
「あ、あのここはどこですか?」
素直な疑問を打ち明ける
「ここはね、帰らずの森最層部だよ。」
すんなりと教えてくれた
「うん、わかるよその顔。何のために君をここに連れてきたかだよね」
ルークはコクリとうなづく。
「じゃあそれを答えるよりまず先に、君はなぜ家門のみんなから嫌われて牢獄なんかにいたのかな?」
「そ、それは…」
思わず俯いてしまう、自分の短所を堂々と打ち明けると言うことはとても難しいことだ。
「ぼ、僕は悪魔の子だから」
喉からやっとの事でこのことを打ち明ける
「ふーん、でも僕から言わせてもらえば君は全然人間見た目は人間だよね。あそこまでされる理由あるのかなー?」
「そ、それは僕の家門は代々髪がとても綺麗な金髪なのに僕は黒色で、黒色っていうのは魔族や平民の人達の色だからで…」
ルークは自分が悪魔の子と言われている理由の1つを答えた
本当に言いたいほうは隠して
「そっかそっか、でもそれならなんていうのかな。覚醒遺伝子?的なのでもあり得るよね、本当にそれだけかな?」
魔法使いの様子はまるで全てを見透かしているようであった
ルークは観念して本当の理由を答える
「僕の目が…僕の目は感情が極度に変化した時に今の白の部分が黒になって、黒のところが赤く変化するの。それはまがん?といって魔族のみの特徴なんだって…」
「おー、そりゃ確かに魔族のみの特徴だ。例えばだけど今すぐにとかはできるの?」
「たぶん、できないです。なったのは母様が亡くなったときだけなので…」
「うん、よく君のことがわかったよ。そのまがんっていうのはこういう眼のことかな?」
そういうと魔法使いは被っていたフードを脱ぎ、ルークの方を見る。
「ま、魔族!」
ルークは腰が砕けたようにその場に座り込む。
魔法使いの見た目は白髪で頭から角が一本生えていて眼も黒と赤に染まっていた
「何を怯えているんだい。君と僕は同じもの同士だろう」
魔法使い、もといその魔族はしゃがむとその恐ろしい姿に似合わずニコリとはにかんでルークの頭を撫でた
自然とさっきまでの恐怖は亡くなっていた
「えっと、魔族さんはなんで僕をここに連れてきたんですか?」
「んー、ある方に呼ばれてかな。あと、魔族さんじゃなくてアザゼルと呼んで欲しいな」
「わかりました」
ルークは一先ずは、このアザゼルという魔族が自分を殺すつもりはないとわかると一安心する
「ところでルークくん、君と転移した時になにか投げてきた人がいたね。」
地面を見ると、剣と何重にも巻かれた熱い封筒が転がっていた。
「見てみるかい?」
無言で頷く
しかしアザゼルが剣を拾おうとすると
バチバチバチッ!
剣から伸ばした手にかけてレイザーのようなものが飛ばされた。受けたアザゼルの手からは湯気のようなものが出ていた
「ほぅ、この僕でも抜けない剣か…」
アザゼルは不気味な顔でニヤリと笑っていた。どこか嬉しそうな様子にルークは首を傾げていると
「どうやら君にしか抜けないみたいだ、だけど今の君にこの剣は危ないから、もう一個の方から見てみようか」
そういうと封筒に包まれたものをルークに手渡した
「あ、あのこれはさっきみたいに爆発しませんか?」
心配でアザゼルに確認をする
「どうだろーねー」
アザゼルはニヤニヤとしている。どうやらからかっているようだ
ルークは包みを一思いに思い切り破って開けてみた。すると、
「これは母様に昔読んでもらった絵本!」
そうこれはさっき夢で見た本そのものであった。"王様と悪魔"という絵本だ。
ルークは嬉しさのあまり絵本に抱きつく。
「んー、よくわからないけどよかったね」
アザゼルはあまり本には興味がないようでまた剣に悪い顔で近寄っていた
「あ、あの!この2つを投げてきた人はどんな人でしたか!」
「んー、見えなかったなー、眩しかったし。」
アザゼルは振り向きもしないでそう答える。
そっか、でもよかった。
母様との思い出がたったひとつではあるが残っていたことがとても嬉しかった
ルークが喜びに浸っていると、剣を観察していたアザゼルがいつのまにか自分の目の前で足をついて跪いていた
わけもわからず立ち尽くしていると
ゾクゾクゾク
なにかがくる。
辺りが急にさっきまでよりさらに暗くなる
まったく戦闘などをしたことがなかったルークにもわかるほどの威圧であった。
気がつくと、目の前に青色の炎の壁がそびえ立っていた
その中から、一歩、一歩とゆっくりと歩み寄る影が映る。影は次第に大きくなっていき、近づくものの大きさを物語っていた。
すると、炎から真っ黒な巨大な身体がついに露わになった。
「ようこそ、いらっしゃいました」
アザゼルが初めて丁寧な口調で迎えていた
ルークも跪かなければと思うが、身体がまったく動かない。
これは恐怖からくるものだとルークはまだ知らない。
その巨体が全て出てくると炎はかき消え暗くなっていた辺りはまたさっきと同じように戻っていた
「待たせたな、アザゼル。」
現れたのは"死"そのものであった
「父上、もうすぐそちらに向かおうと思っていた所でしたのに」
アザゼルが跪いたままそう言った
「嘘をつくでないアザゼル。お前がワシとの約束を忘れその剣に没頭していたのは天鏡にしっかりとうつっておったわ」
父上と言われたその巨大な魔族?はため息をしながらそう答えた
「わざわざ覗くなんてお父上もお人が悪い」
「報告をよこさん貴様が悪いだろう……そんなことよりコイツか。ワシの食事は」
アザゼルは一瞬動揺したのか体を揺らしたが、またすぐさっきのように戻り
「その通りでございます」
そう答えた
「ふん、ちと小さいがいいだろう。小僧、なにか最期に言うことはあるか」
ルークは確信した、自分は確実に殺される、と。
そっか、僕はもう結局死ぬのか
せめて母様の近くで死にたかったな
ルークは諦めそんなことを考える
そして、力が緩み本を思わず落としてしまう。
それを見つめはっと我に帰る。
本当にいいのか。母様の仇を返さなくていいのだろうか。
いつでもかかってこい、その言葉を思い出す。
絶対に復讐してやる。復讐しないと死ねない。
ルークは心を決める
「あなたのそのお力を僕にも教えてください!!」
ルークは生まれから一番とも言えるほどの大声でそうお願いする
巨大な魔族は、しばらく無言でいたが急に何かが切れたように笑い出した
「そうか、ワシの力をか!わっはっはっは。最期の最期でそんなことをこのワシ言うとは小僧なかなか勇気があるではないか」
巨大な魔族はさっきまでの威圧とは変わって陽気な調子でそう答える
「では問おう。お前は力を得てそれを何に使う」
「復讐です。母様の仇をとります」
「それを遂行するためにお前はなにをワシに渡せる」
「命です。いや、僕の全てです。魂からなにまで全てかけます」
ルークはキッパリとそう答える。
すると巨大な魔族はまた笑い出した
「小僧、気に入った、実に面白い奴だ。魔族に魂を売る人間を見たのはお前で2人目だ。いいだろう、お前にワシの力の源や知識、魔導や武道を叩き込んでやろう」
「あ、ありがとうございます」
ルークはほっとし身体から力が抜ける
「では行くか、言っておくが小僧。訓練に根をあげたらいつでもお前を食ってやるからな」
のちにサタンという名前だと知るその巨大な魔族の笑い声な森中に響き渡っていた
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