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第8話 俺とヘビと魚の取り方



 新しい拠点への引っ越しは、計二回の往復により、幸い何事もなく無事に完了した。


 ただ、ちょっと不安なことが出来た。


 先程、見かけた赤と黄色のしま模様のヘビが、二匹に増えていたのだ。

 一応、この拠点にと通る道とは、少し離れた木に居座っているので、戦闘にはなっていないが、もし夜、寝ているときにでも襲われたらと思うと恐い。


「出来れば、日のあるうちに戦いたいな……」

 ただ、二匹一緒にいるので、今、同時に戦うのも無理だ。最悪でも一匹ずつ倒したい。

 火ネズミですら、まだ二匹同時に相手するのは恐いのだ。


「とりあえず、今は考えないでおこう……」

 幸いあの木から動く気配はなさそうだったし。



 考えを放棄して、俺は作業に集中する。

 今やっているのは、かまどの作成である。要するに、新しい拠点の台所を作成中だ。

 河原の近くという事もあり、石が沢山手に入るようになったので、焚き火ではなく、雨が降っても、火が確保できるようにと作成中である。

 もちろん、DIYといった趣味は持っていないので、今まで竃なんて作った事はない。試行錯誤しながらイメージで作り上げている。完全オリジナルとも言う。


 結果、やはりというか、石斧を最初作った時と同じく、自分のイメージとは何段階も劣る、不格好な竃が出来た。

 おかしいな……イメージでは、ピザ釜のように綺麗に石を並べた竃が出来るはずだったのだが。


 ただ、自力で石を組み上げて、竃の天井と煙突まで作ったのは、誰かに褒めてもらいたい。誰もいないが。


「さっそくだが、火を点けてみるか!」

 デザインはこの際、関係ないのだ。重要なのは、機能性である。火がキチンと点いて燃えてくれれば、いいのだ。


 俺は、マッチ棒を石に擦り付け火を起こし、竃の中に予めセットしておいた木の枝や枯れ葉などに火を移す。



「……」


 パチッパチッと火が音を立てながら、燃えていくのをジッと見つめる。

 やがて煙は、俺が頑張って作った煙突の中へと入り込み、そのまま外へと流れていった。


「よし、一応成功だな」

 俺は、一人ガッツポーズをして喜ぶ。


 竃の隙間隙間から出る煙は、無視である……。



「……」



「隙間埋めるか……」

 そして、俺は隙間を埋める作業へと戻ったのだった。






 竃の完成から、およそ一時間が経った。

 太陽は既におやすみなさいとベッドに入り、月がこんばんはと顔出している。

 そんな中、俺はまだ作業をしていた。普段なら、もうとっくに寝ている時間だが、火がある事により、作業をするのを可能にしていた。と言っても、やってることは、とても地味な作業だ。


 拠点の周りを整備する。以上だ。


 飛び出ている枝を折ったり、切ったり、拠点にする範囲を石で囲ったり、である。

 ナイフが手に入ったので、この前よりは楽に作業は出来ているが、何にせよ草木の数が多い。動物に見つからないようにと自分で選んだ場所ではあるが、生活できないと意味がない。という訳で、俺は黙々と作業を進めていく。

 そして、漸くひと段落ついたところで、俺は眠りについたのだった。もちろん、葉っぱの布団で隠れながらである。





 五日目の朝。

 懸念していたヘビの襲来もなく、無事に朝を迎えた。


 朝食に、もう恒例となった隠れ実を食べる。

 また、ストックの隠れ実もこれで最後なので、また取りに行かないとな、と思いながら食べ終える。

 ただ、今日はいつもと同じ朝ではない。俺は、最低限の装備を持ち、川へと向かう。


「冷てぇー」

 そして、俺は川の水で顔を洗った。そう、近くに川があるだけで、こんなにも人間らしい生活が送れるのだ。水を飲み、うがいなどを済ませ、また拠点へと戻る。


「さて、今日の予定を立てるか」

 俺は拠点に置いた椅子代わりの拾ってきた石へと座り、考える。


 まず優先は、食料の確保だよな。

 隠れ実を取りに行くか、ウサギのドロップ肉を狙うか、それとも違う食料を探すか、選択肢はこれくらいか。隠れ実は、一番現実的だな。肉はドロップするか分からないし、ウサギとの戦闘になる。他の食材となると……。


「そうだ! 魚とかいいんじゃないか?」

 目の前に、川があるのだ。魚は十中八九いるだろう。それに、上手くいけば安全に食料をゲット出来るのだ。

 よし、そうと決まれば、今日の午前中は、魚を取ることを目標にして、上手く行かなかったら、午後に隠れ実を取りに行くことにしよう。



 さて、魚を取る方法を考えてみよう。


 提案1 魚釣り

 提案2 素手

 提案3 銛突き

 提案4 網漁


 ざっと思いつく限りは、これぐらいか。


 提案1の魚釣り。上手くいけば、これが一番安全な魚の取り方だろう。上手くいけば、放置でも魚を取れるだろう。必要なものは、釣り糸と針、それから餌かな。最低限、これだけあれば、魚を取れそうだ。竿は在っても無くてもいいだろう。釣り糸の代わりは、蔓とかで、針は木の枝を削って作れるか……準備に多少時間は掛かるが、この案は十分現実的ではある。


 提案2の素手で魚を取る方法は、何も準備は必要ないのではあるが、かなりの難易度ではある。素潜りするにせよ浅瀬で魚を掴むことにせよ、水の中を自由に泳ぎ回る魚を捕まえるのは容易ではない。

 うーん。これは却下かな。一応、選択肢として思い浮かんだだけだし、最悪の場合この案になるだけである。


 提案3の銛突きは、素手で魚を取るよりは、リーチが長くなる分まだ成功率は高いだろうが、ある程度の技術は必要だろう。銛に関しては、木の棒の先にナイフを付けるだけで簡単に作成出来るだろうが、サバイバル番組のような先端が飛び出すようなものではないので、番組より難度は高い。ただ、2の提案よりは現実味は高いだろう。


 提案4の網漁については、一番魚を取れそうではある。川に網を設置して、そこに魚を追い込むだけで、確保出来そうだ。ただ、網を作るのに時間と材料の蔓が大量に必要になってしまうので、今日の食料を確保したい俺にとっては向いていない。ただあったら便利である事に違いないので、網は時間があるときに、少しずつ作ればいいだろう。



 さて、考えた結果、どうやら、魚釣りと銛突きが、一番現実的だな。

「よし!」

 という訳で、早速、釣り竿と銛を作成してみるか。



 まずは、釣り竿から……材料は、長い木の枝に、丈夫な蔓、針、餌かな。

 竿の部分にあたる長い木の枝は、ヘビの通り道の近くに、細長い木が生えていたから、それを調達して来よう。これは、あとでもいいな。

 釣り糸の代わりの丈夫な蔓は、蔓同士を編み込んでみるか。

 針は、木の枝を加工して出来そうな気がする。蔓を巻き付ける部分と返しの部分を作れば、何とかなるはずだ。

 餌は、ミミズを予定しているが調達に問題はない。ここは森である。その辺の落ち葉などをひっくり返せば、こんにちはするし、土を掘ってもこんにちはである。したがって、問題はない。


 釣り竿の作成は、割と早く終わった。ざっと一時間くらいだろうか。途中、スキル【武器作成】が、遂に取得未満スキルから取得スキルになったことと、ナイフが手に入ったことにより作業がしやすくなったことが、早く終わった要因だろう。

 ちなみに、竿の材料を取りに行ったとき、ヘビとの戦闘はなく何事もなく戻って来れた。


 だが、新たな問題が起きていた。

「でかいんだよなぁ……」

 俺は、完成した釣り竿を見て呟いた。具体的には、竿から先を見てだ。

 竿の方は問題ない。問題は、釣り糸と針の部分である。釣り糸は、蔓を丈夫にしようと思い、数本の蔓を編み込んで作ったのだが、これがまた、釣り糸らしからぬ太さなのだ。丈夫にしようとしたのが、裏目に出てしまった結果である。そして、これまた針なのだが、これも手作りだけあってデカい。木の枝をちゃんと削って、蔓を通す穴も魚が掛かるように返しも作ったのだが、やはり細かい作業は小さければ小さいほど難しく全体的には、大きくなってしまった。いや、それでも、人差し指を曲げたぐらいの大きさではあるのだが、こんな針にかかる巨大魚が、この川にいるのかという問題である。


「まぁ仕方ない」

 ここは割り切って、巨大魚狙いで釣れれば、ラッキーぐらいと考えよう。

 という訳で、銛突きが魚を取る主な手段となりそうなので、銛作りに移ろう……。




 銛作りはあっさりと終わった。石斧を作った経験が生きたのだろうか。それともナイフを手に入れたからだろうか。おそらくその両方だろう。


「初めてイメージ通りだ……」

 出来た銛を持って眺める。

 見た目は、完璧に旧石器時代の槍そのものだ。先端には尖った石君を、ナイフで作った割れ目の間に挟み、紐代わりの蔓でしっかりとと固定した。魚を取るために作ったのだが、これならあのウサギ達と戦うことも出来るだろう。



 という訳で、さっそく俺は、魚を捕まえに川へと歩く。まぁ目と鼻の先ではあるが。

 ちなみに、釣り竿は諦めた。餌となるミミズが釣り針が大きすぎて、取り付けられなかったからだ。もっと改良が必要だろう。



 靴を脱ぐか迷ったが、俺はそのまま川へと入る。靴を脱いでいる状態で、敵に遭遇したら危険だと判断したからだ。


 浅瀬を歩きながら、魚を探す。水はとても澄んでいて川底まで見えるが、魚はなかなか見つからない。


 たまに、見つけても小魚泳いでいるだけで、近寄ったらすぐに逃げてしまう。

 魚を取るのにも、何か作戦を考える必要がありそうだ。


 太陽が頂点に達するまで粘ってみたが結局、成果は0だった。

 やはり、この世界は甘くない。そう簡単に、魚一匹取らせてくれない。

 結局、魚ゲット作戦は失敗に終わったのだった。



 俺は、一度拠点に戻って、少し休憩してから、隠れ実を取りに行くことにするのだった。




 隠れ実の採取は何事もなく終わった。ウサギも火ネズミにも出会わず、順調に作業を終えることが出来た。


 だが、帰宅する道中、とうとう奴らが動き出した。懸念していた赤黄色ヘビである。


 いつもの定位置にいたヘビがいないと気付いた瞬間、何かが俺に飛び掛かってきたのだ。


――――技《蛇の咬みつき》


「おっと!」

 俺はそれを間一髪で回避したあと、すぐに飛び掛かってきた奴の正体を目で捉える。やはり、あの赤黄色ヘビだ。だが、飛び掛かってきたのは一匹。

 俺は正面で威嚇している奴に、目を離さないようにしつつも、サッと周囲を伺う。


――――技《蛇の咬みつき》


「危ねぇっ!」

 その瞬間、今度は別のヘビが俺に向かって飛び掛かってきた。俺は咄嗟に後ろに跳び、またそれをかわす。


「上の木の枝から落ちてくるのは反則だろ!」

 と悪態をつくが、自然界において反則、ましてやルールがないのだから言ってもしょうがない。

 二匹ヘビがいると分かっていなかったら、間違いなく咬まれていただろう。


 だが、不意打ちは回避した。ヘビとの距離も少し空いている。その隙に俺は、背負っていた隠れ実を一旦放り投げ、右手に持っている石斧を握りしめる。


「シャァァァッ!!!」

 叫び声を上げながら、最初に飛び掛かってきたヘビが俺へと向かってくる。ニョロニョロしてるが意外と早い。


――――技《早投げ》


 俺はそいつに向かって、石斧を投げる。持っているモノを投げる。早投げ最速バージョンだ。


 地面に向かって投げられた石斧は、そのまま回転しながら、ヘビに突き刺さり動きを止める。



――――技《飛び掛かる》

――――技・連鎖《蛇の咬みつき》



 一匹目を対処したところで、二匹目も動き出す。


 技の発動直後に、一瞬だけ動きが止まる所を狙ってくるあたり、このヘビが戦い慣れていることが分かる。


 だが、俺も負ける訳にはいかない。


 飛び掛かってきているヘビに、石を投げる。空中で動いてるものに当てるのは、至難の業だが、ここで当てないと、咬まれてしまう。


――――技・連鎖《早投げ》




 俺の投げた石は、真っ直ぐにヘビへと向かい、そして、ヘビの頭へとぶつかる。

 石とぶつかった衝撃で、そのままヘビは地面に落ちる。


 俺はその隙に背負っていた銛を掴む。

 そして、そのまま地面に落ちたヘビに向かい追い打ちをかける。



 そのまま、そのヘビは粒子となったが、まだ戦闘は終わっていない。

 俺は最初に石斧を投げたヘビの方に目を向ける。


「いない……!」

 と分かり次第、俺はすぐに辺りを警戒する。



――――技《飛び掛かる》

――――技・連鎖《蛇の咬みつき》



 案の定、横の藪からヘビが飛び出してきた。

 ヘビの背中からは、石斧での傷で、粒子が空気中へと流れ出ている。


 俺は、咄嗟に身を捻り、咬みつきを回避する。

 地面に落下していくヘビが、体勢を整える前に勝負を決めるべく、俺は動き出す。



――――技《蛇の咬みつき》


 が、俺の行動は、突如、上から降ってきた別のヘビによって止められてしまった。



――――!



 咄嗟にガードした左腕がヘビに咬みつかれた。




明日の更新は、夜になりそうです。

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