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第5話 俺と新技とウサギリベンジ!?

 朝立てた予定を、少し変更して、俺はスキルの技の検証をすることにした。


 まだ、技の取得方法は分からない事が多いので、手探りで進むしかないが、とりあえず、二つの技を覚えた時を思い出しながら、予想を立てていく。


 一つ目の予想は、技の取得は、投擲する動作のフォームを決める事なのではという予想だ。柔道などで、技が一つ一つ決まっているように、頭の中でやりたい技を明確に定義したら良いのではないかという事だ。


 という事で、さっそく俺はやりたい技を頭の中で考える。

 イメージする技は、早打ちだ。この場合は早投げか? ウサギ戦で間合いを詰められると何も出来ない状況だったので、西部劇のガンマンみたいに腰から銃を素早く抜き撃つ、これをポケットから石を素早く出し投げる、という感じにやりたいのだ。

 俺は、その動作を頭の中で、出来るだけ詳細にイメージしていく。


 手に何もない状態からポケットに手を突っ込む。その中からサッと石を掴み取り出す。スナップを利かせて取り出した石をすぐに投げる。


 もちろん、全部イメージである。


「…………」


 うん……何も起こらないな……。まぁ、これだけで技が取得出来るなら苦労はない。次にいこう。


 二つ目の予想は、一つ目の予想プラスその動作を実際にしてみるという事だ。


「よし、行くぞ……」

 俺は、ポケットに手を入れる、石を掴む、取り出す、そしてすぐに投げようとして……出来なかった。

 石の尖っている部分ががズボンに引っかかったのだ。


 テイクツー。


 俺は、ポケットに手を入れる……。

「痛ッ!」

 今度は、石の尖っている部分が当たって人差し指の腹が切れた。血は出ない。光る粒子の線が出来て空気中に溶け出していくだけだ。


「自分でケガした場合もこうなるのかよ」

 見れば、HPバーも心なしか減っている気がする。思わぬことで、ケガについて少し分かったが、回復手段ではないので、とりあえず覚えておくだけにする。


「うーん。改善が必要だな」

 実際にやってみて、ポケットから石を取り出すだけでも、問題が多いという事が分かった。改善策としては、石の角をなくす事かな。つまり、丸くするのである。


「そこから始めるしかないか」

 一旦、技の検証は中止だな。ケガもした事だし、おとなしく武器や罠でも作るとするか。


 技の検証のための少し広いスペースから、寝床の近くに作った作業スペースに行く。と言っても、椅子や机にも出来るいい感じの岩があるだけだが。この岩を運ぶのには苦労した。

 俺は気を背もたれにし、この岩の前に座る。


「地味な作業だが頑張るか」

 そう自分に言い聞かせ、俺は尖った石を岩に擦り付ける作業を開始した。本当に地味な作業だ。だが、物を作るという事はそういう事だ。ついつい完成品にばかり目が行ってしまいがちだが、その背景には多くの人達の努力や思いが詰まっているのだ。

 などと考えながら、俺は黙々と作業をしていくのだった。




 四つの石をすべて丸くした頃には、すっかり空も薄暗くなってきていた。

 ふとスキルの項目を見ると、武器作成の数値も上がっていた。


 【武器作成】0.46 → 0.62


 ちゃんと自分が成長しているという事で嬉しい。あと、考察を入れると、少しだが数値の上り方が良い。石斧を作ってる時は、最初は上がり方が良かったが、だんだんと上がり方も悪くなってきていた。これを踏まえるに、おそらく、スキルは新しいことをする時は、上り方が良いのではないだろうか。逆に、慣れてくるとだんだん数値も上がり難くなってくる。実際に、同じ問題を何回も解くより、違う問題を解くほうが成長している感じもするしな。


 それと、スキルとは関係ないが分かったことがもう一点。

 傷についてだ。

 お腹と背中の傷は相変わらず治っていないが、人差し指の傷は、俺が作業に没頭している間に、いつの間にか治っていたのだ。今では光る粒子はどこにもない。このことから察するに、俺の他の傷も時間が経つにつれて治るのではないかと希望が出てきた。まぁ、相変わらずそのまま光っているが………。


「さて、夕ご飯を食べて、寝るか……」

 いよいよ、二日目も終わる。昨日から、人里を見つける、水辺を見つけるなどの目標は達成していないので、何も状況が変わっていないと一瞬思ったが、昨日よりは今日、自分は成長していると思いたい。


 隠れ実もこの夕食で、ストックが尽きた。明日は何としても食料を調達しないといけない。やる事が多いが、そうしないと生きていられないのだ。一つずつ一つずつ成長していこう……。

 そんなことを考えながら、気が付くと俺は眠りについていた。




 朝。俺は昨日と同じく夜明け前に起きられた。


 まだ日の射していない森は薄暗くて気味が悪いが、今日は犬の遠吠えが聞こえないので、俺は潜んでいた藪からでて、大きく伸びをした。


「ん? 潜む?」

 伸びをしながら気づいた。潜伏のスキルは寝る時にこうして隠れていたから発現したのではないかと。

 俺は、さっそくステータスを確認してみる。


 【潜伏】0.11


「うーん」

 上がっていない。どうやら、俺の勘違いだったようだ。


 昨日で、隠れ実は全部食べてしまったので、朝ごはんはない。まだ薄暗いから、太陽が昇ってから隠れ実を取りに行くとして、今は昨日中止した技の検証でもしよう。俺は、ストレッチをしながらそう考える。



 ストレッチを終えて、俺はポケットに、昨日角を削って丸くした石を入れる。昨日頑張って削ったおかげで、スッとポケットに入った。入る前に手で持った感じだと、指を傷つける要素もなかった。準備完了だ。


 昨日は、イメージをすることと予想を立て失敗、イメージ+実行するのところで、でケガをして中止したので、もちろん2番目の検証からだ。


「ふぅー!」

 俺は息を整える。

 そして、落ち着いたところで、ポケットに手を入れる、石を掴む、ポケットから出す、すぐに投げる。


 ――――成功だ。


 だが、コントロールは失敗だった。狙っていた木の一つ隣の木に当たった。意外と難しい。それに、技の取得のメッセージも流れない。動作は成功だったが、全体的に失敗だ。


 まぁ。ここまでの失敗は想定済みだ。次の予想にいく。

 三つ目の予想は、一つ目の予想+二つ目の予想+この動作を何回か繰り返すだ。《上方散乱両手投げ》も《一球入魂》を取得した時もその動作を何回もしていたから、取得出来たのだ。やはり、練習あるのみという事である。一つ目と二つ目の予想は、あくまでもこれで技が取得出来たらいいな、ぐらいである。ここからが、本番だ。


 俺は、また同じ動作をする。ポケットから石を出しては、すぐに投げる。四つの石を投げ終えたら、拾いに行き、また繰り返す。途中で、こうしたら投げ易いなとか、こうしたらコントロールがし易いなとか、少しずつ、発見を見つけながらの作業である。そうすることで、作業も面白くなってくる。


 四つを投げ終えて、拾いに行く。この作業を10セットほどしたところだっただろうか。



――――skill【投擲】より、技《早投げ》を新たに登録しました。



 念願の音声が響いたのである。およそ50回目で、ようやく取得出来た。


「よっしゃ!」

 思わず声を上げてしまう。それほど嬉しい。何というか、こう自分の予想が当たったというのもあるし、試行錯誤して頑張って取得出来たというのが嬉しいのだ。



――――技《早投げ》


 俺はさっそく取得した技を使ってみる。結構練習した技だが、《技》として使うとまた違う感覚である。何というか、動きが洗練されているというか、動きに無駄がないのだ。そうして、放たれた石は狙い違わず、目標に投擲された。

 うん。流石、ゲーム的システムと称賛したいが、なんだか悔しさもある。自分であの完成された技をしたいという気持ちが俺の中で生まれたのだ。今は無理でもいつかは、あの技がシステムの補助無しでしたい。そう俺は感じたのだ。




さて、キリも良いのでそろそろ隠れ実を取りに行くとしよう。太陽も既に昇っている事だし。


 俺は準備を整える。ポケットには四つの石。右手に石斧だ。

 これで、まだ、あの場所にウサギがいたとしても、少しは戦えるだろう。戦ってみてまだ無理そうなら、また逃走したらいいのだ。


 今回の任務は、隠れ実の確保、それから、落ちているはずの尖った石君の救出だ。あの尖った子は蔓とか切るのに本当に丁度いいんだよなぁ。

 それと、任務中、ウサギとは出来るだけ戦闘は避ける方針でいこう。未だにHPバーは減ったままなので、万が一にでもHPバー減らしたくないのだ。ゲーム的に考えても、HPが半分ほどでも減ったら体が動かし難くなるなどの悪影響が出ても困るからだ。


 よし、大体確認も終わったし出発しよう。


 俺が何回か通って、もう獣道になっている森の中を歩く。って誰が獣だ。ひとりぼっちなので、一人でボケて、一人でのツッコミである。


 そして、何事もなく森の出口まで来た。

 道中、俺の前を火ネズミが一匹横切ったが、特に何もなかった。火を纏っているのに森に引火しないのは、やはり不思議である。

 森の木の影から、俺は草原を見回す。


「よし、大丈夫だな」

 あのウサギの姿は見る限り無い。そう確認して、隠れ実の木が生えているところに向かう。


 途中、昨日ウサギと戦闘した場所にまで来たが、ウサギは居なかった。

 警戒していただけに、拍子抜けだ。出会わないに越したことはないんだけどな。


 俺は、昨日投げたまま、拾わなかった尖った石を探す。

 ウサギが持っていくはずはないので、少し探しただけで見つかった。



 辺りをキョロキョロと確認しながら歩いたが、特に何とも遭遇せずに、一番近い隠れ実の木までこれた。



――――技《上方散乱両手投げ》


 いつものように、俺は隠れ実を取っていくが、今回はちゃんと周囲を警戒しながらだ。

 って、俺、普段通りに技使っちゃったけど、考えたらこれでもHP減るんだよな………。《一球入魂》は使わずに実は落すか。


実を五つほど取った俺は、持ってきた蔓に括り付ける。


「さて、帰るが……」

 俺は、咄嗟に後ろを振り向く。


 大丈夫。何も居ないみたいだ。前回は、この油断した時に襲われたからな。用心に越したことはない。いつでも、戦闘出来るように気を配りながら、俺は来た道戻る。



「あれは……」

 すると、目の前、少し遠くのほうからウサギが走ってきた。

 ただ、茶色い毛なので、昨日のあいつではない。あいつは白い毛だった。


 俺は、背負っていた隠れ実を地面に置き、戦闘の準備をする。いや、そのままウサギが通り過ぎてくれたら一番いいのだが、残念ながら、真っ直ぐにこちらに向かって来る。


 というか、このウサギ。俺を襲うつもりで突撃してきたんなら、ちょっと無策過ぎないか? 真正面から攻撃って……サイとかゾウとか大きい生き物ならまだ分かるが、普通より少しデカいぐらいのウサギに真正面から来られても……。迫力とか、まるでない。あの戦い慣れてそうな泥棒ウサギでさえ、背後から襲ってきたというのに。


「いや、待てよ」

 あれが囮っていうことはないか? それなら理解は出来る。


 俺は、向かってくるウサギを視界で捉えながら、辺りを見渡す。そのあと、まだウサギとの距離に余裕があるの確認し、一瞬だけ、パッと後ろを振り向く。


 おかしい……何も居ない。どうやら、杞憂だったようだ。


 だとしたら、このウサギは本当に何なんだ? あまりにも無策過ぎる。だが、もう考えている距離では無くなった。


 ウサギは、やはりこちらに向かって走ってくる。獰猛そうな目は、完全にこちらを狙っている。


 その目を見て、俺は気持ちを引き締める。そうだった、ここは自然界なのだ。食うか食われるか、ただそれだけだ。正直舐めている部分があったが、相手が本気ならこちらも本気じゃないと失礼だ。


――――バチン。


 と俺は、自分で頬を叩き気合を入れる。


 それから俺は、ウサギの行動、一挙一動見逃さないように集中する。


 もう俺の射程距離ではあるが、敢えて俺は【投擲】をしない。投擲は、遠くから攻撃出来るメリットもあるが、手数が決まっているというデメリットもあるからだ。だから、初撃は石斧でウサギを迎え撃つことに決めた。



――――技《ダッシュタックル》

 7メートルほどまで、来たウサギは、技を繰り出す。

 その瞬間、ウサギのスピードが上がる。


 だが、あいつよりは遅い。見える―――。


 俺はウサギが突撃してくる瞬間を狙って俺は石斧を振り下ろした。



「ピギャ!」

 ドンピシャで、ウサギに当たる。そのままウサギは地面に投げ出される。


 ただ、流石は野生動物。すぐに体制を整え俺と距離を取った。

 ウサギの体には、粒子の傷が付いて空気中に溢れて出ていた。どうやら、動物の傷も粒子になるらしい。まぁ、血を見るよりはこっちの方がマシなのでいい。


 さて、このままだと膠着こうちゃく状態になりそうなので、俺は仕掛けることにした。



――――技《早投げ》


 右手には石斧を持っているので、俺は《早投げ》を左手で発動した。


 利き手ではないのにも関わらず、技は発動した。


 一秒程でポケットにあった石を投げる。

  だが、やはり右手で投げるより、威力も速さも精度も劣っている。



 ウサギは、これに反応して跳んで躱す。――――これでいい。


 俺は、ウサギが着地する瞬間を狙っていた。それに合わせて石斧を投げる。


 空中でウサギが目を見開くのが分かる。


 回転して飛んでいく石斧。


 そして、ウサギに当たった。




気が付いたら、ブックマークを頂いていました。

作り手クリエイターとして誰かに評価されるのは嬉しいものです。

今後ともよろしくお願いいたします。(*‵・ω・)ゞ


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