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第2話 俺と果実とスキル


「なんか、色んなことが同時に起きたが……とりあえずは、腹を満たすか」

 お腹が空いてたら考え事もできないしな。腹が減っては戦は出来ぬだ。


 俺は手元にある果実を見る。緑色の梨っぽい果実だ。大きさは梨より二回りほど大きい。


「今さらだが、毒とかないよな……?」

 いや、でもあのカラフル鳥様は食べていたしな。あの鳥の種類だけが抗体を持ってたりしたらアウトだが……。いやいや、食べられたくない無いから、この果実は隠れていただけあって、めちゃくちゃ美味しいかも。まぁ、そんなこと考えてたらキリはないが……大丈夫だろ。カラフル鳥様を信じよう。


「いただきます!」

 そして、俺は思い切って、この梨のような果実を齧った。


 シャリっとした食感の後に、口の中に広がる甘味と適度な酸味。それでいて、みずみずしさもある。

「うまい!」

 俺は、すぐに二口目を齧る。それからは、もう夢中で食べていた。


「ごちそうさまでした」

 そう言いながら、俺は手を合わせる。本当に美味しい果実だった。鳥様が二つ食べるのも頷ける。


「さて」

 腹ごしらえも済んだし、先程の事を確認するか。



――――skill【投擲】を獲得しました。スキル初回獲得により、自身のステータスが閲覧できるようになりました。ご使用の際は、「ステータスの閲覧」と発声してください。


 俺が果実をキャッチした後、確かに頭の中で声が響いた。

 いよいよ、この世界がゲームっぽくなってきたなぁ。まぁ、ドラゴンがいる時点でそうだが。

 おそらく、頭の中で聞こえた音声も”そういうこと”なんだろう。

 でも、そういうことなら、俺がこの世界で生き延びれる可能性も高くなるってことだ。こうなったら、利用できるものは、何でも利用するぐらいの気持ちでいかないと。この世界には、あの巨大なドラゴンみたいな人が太刀打ちできない存在もいることだし。

 よし……やってやる……skillでも何でも使いこなして、この世界を生き延びてやる。


 という事で。

「ステータス閲覧!」

 

 ピコん――。


 俺がそう口にすると、頭の中で音が鳴った。


 そして、すぐそのあとに、俺の目の前、空中に、SF映画のバーチャル映像さながらの四角いウィンドウが現れた。


〇 アカシ シュウト


・取得スキル一覧

 【投擲】1.00


・以下取得未満スキル一覧






「なるほど……」

 一番上は、俺の名前だ。その下には、俺の視界の端と同じようにHPバー的なものがある。

 次に、先程獲得した【投擲】のスキル。おそらくだが、果実を取るために石を投げまくっていたから、所得出来たのだろう。隣の数値は、おそらく、いや間違いなく、この取得したスキルの”レベル”だろう。自分の努力の結果が、数値として見れるというのはちょっと嬉しい。モチベーションも上がるしな。


「あとこれは……?」

 そして、俺は、バーチャルのウィンドウの取得未満スキルの文字に、ゆっくりと触れる。バーチャルのはずなのに、ちゃんと何かに触れる感触がする。


 すると、取得未満スキルの下に隠れていた文字が表示された。




 【歩き】0.31

 【恐怖耐性】0.95

 【物拾い】0.16

 【観察】0.40




 ふむふむ。これで傾向がだいぶ読めてきたぞ。おそらく、取得未満スキルというのは、スキル横の数値……レベルが1以下のスキルのことをいうのだろう。

 逆を言うと、取得未満スキルは1以上になったら普通のスキルになるという事だ。


「ん?」

 これは、いい発見かもしれないな。だって、取得未満スキルのレベルを上げていけば、スキルを取得できるってことなんだから。それに、スキルがあるほど俺の生存率も上がるだろう。


「そういえば、スキルの詳細とか説明って無いのかな?」

 もっと情報がないかと、俺は表示されているスキルの文字を押していく。


 【投擲】のスキルの文字のところで、ウィンドウが反応した。




【投擲】 物などを投げるときに、コントロールが良くなったり、威力の調整などが上手くなる。




 なるほど。簡単に言うと、投げる時に補正が掛かる、という感じか。


 俺は、先程投げて散らばった石たちを拾い、試しに投げてみることにした。

 ただ投げるのも嫌なので、隠れている果実……隠れ実を採取しながら、一緒に【投擲】スキルを試すことにする。


 隠れ実の木に、石たちを四体同時出撃させて、実が隠れている枝をあぶりだす。

 さて、ここからが本番だ。


 俺は石を一つ持ち、呼吸を整えて、振りかぶる。そのまま、あぶりだした枝を狙って投球……もとい投石!



――――!!!



 見事、石は命中した。ふむ。確かに先程より、思ったところに石を投げられた気がする。

 あくまでも、気がするだけだが。


 俺は、再度石を投げて検証する。


 結果、30回目の投擲で果実を落とすことに成功した。

 まぁ、先程が40回だったのに対して、一応、少ない回数で落とせてはいるが……まだまだ検証が必要だな。

 という訳で、俺はしばらくスキルの検証をしながら、今のところ唯一の食料、隠れ実を取ることにした。






 あれから、俺は、隠れ実を八つほど取った。っていうか、めちゃくちゃ隠れ実あるんだよな。今まで探していたのは何だったんだって思うくらい沢山あるんだよな……。適当に木に石投げるだけで、ノイズが沢山走るんだから。まぁ、食料問題がとりあえず解決したからいいんだけどね。それに関しては、あの鳥様に本当に感謝だ。次、会ったらお供えくらいは喜んでするよ。


 それと、スキルに関しても新たに分かったことがいくつかあった。

 まずは、一つ目。【投擲】のスキルは、やはり、最初の隠れ実を落した時の回数より少なくなっていた。平均して大体28回ほどでは、隠れ実を落すことが出来るようになっていたので、かなりの成長だ。


 二つ目。数値の上がり方についても分析できた。石を投げては数値の確認、投げては確認と、少しめんどくさい作業ではあったが。生き延びるためには必要なことだ。

 結果としては、数値はそのスキルの行動をした分だけ数値が上がることが分かった。つまり、練習しればするほど、石を投げれば投げるほど、数値が上がるという訳だ。そして、これはまだ推測の域をでないが、おそらく、考えながら、工夫しながらそのスキルの行動をすることで、数値も上がりやすくなっている気がする。でも、これは現実世界じゃ当たり前のことなんだよな。何でも成長するには、自分で、考えながら、工夫しながらやっていくしかないのだ。

 なんだか、この世界に来て、改めてこういった当たり前のことを考えさせられる。食料もそうだな。日本じゃスーパーやコンビニにいけば、すぐに食料にありつけるけど、ここじゃ自分で取るしかないしな。改めて、誰かのおかげで自分が生きていられることを痛感するなぁ。


 閑話休題。


 という訳で、スキルの数値の考察はこれぐらいだ。探せば他にもあると思うのだが、それはその都度確認していけばいいだろう。


 最後に三つ目。これが一番の発見だな。なんと、スキルには《技》というゲーム的なシステムがあったのだ。このシステムを見つけたのは、たまたまだった。

 俺が、最初に隠れている隠れ実をあぶりだす際にやっていた、両手で四つの石を持ち上に向かって投げるという動作をしているときに、またあの音声が鳴ったのだ。



――――skill【投擲】より、技《上方散乱両手投げ》を新たに登録しました。


――――技、初回登録により説明。技を使うと普段より威力が上がる、命中が良くなるなどの利点があります。技の発動方法は、その技の動作を行う、または、発動させたい技を思い浮かべる、技の名前を発声するなどで発動可能です。なお、技の発動中は他の行動が制限される場合がありますのでご注意ください。



このアナウンスのせいで、また検証することが増えたのは言うまでもないが、余計に隠れ実を取ってしまったのは致し方ない。食べるぶんならいいが、カバンのような入れ物も持っていない、今の状況では荷物でしかないというのは、取った後に気づいてもあとの祭りだった。


「という訳で、一つは食べて荷物を減らすか」


 と、隠れ実を食べている間に、今のスキルの状況も確認する。



〇 アカシ シュウト


・取得スキル一覧

 【投擲】1.42

  :技《上方散乱両手投げ》

  :技《一球入魂》


 技《一球入魂》は、石を投げる時に魂……思いを込めて投げると命中や威力が上がる技だ。アナウンスでは、技を登録しましたと言っていたので、新たに技が登録できるのかと検証した結果、取得できた技だ。


 だが、取得にも何らかの条件があるらしく、他に技を考えて登録しようとしても駄目だった。おそらく、その技を実行した回数や成功した回数などの条件があるのだろう。

 あと、このステータスを見て分かるように、技には、レベル的なのことは存在していないらしい。または、表示されないか。これもおいおい検証が必要だ。

 それから技を使う上で注意することが、もう一つあった。それは、技の使用後、視界の端にあるHPバー的な表示が減ったのだ。今まで何をしてても減らなかったから、気にしていなかったのだが、ここにきてまた新たな問題だった。とりあえず、今は技を使っても微々たる消費で済んでいるのでいいのだが、一応、技を使うときは注意したほうがいいだろう。というか、本当にHPバーなのか? という疑問も出てきた。



「ごちそうさまでした」

 隠れ実を食べ終わった俺は立ち上がる。

 時計はないが、太陽の位置からして大体三時ぐらいだろうか。そろそろまた歩き出さないとやばい。何がやばいって、とりあえず、食料問題と水分の問題は隠れ実のおかげで解決したが、まだ寝床の問題が解決していないためだ。ここには、一応隠れ実の木が至る所にあるにはあるが、この木の習性なのか分からんが、木と木の間が意外と離れており、見晴らしが良すぎるのだ。つまり、夜寝ている時に野生動物……それこそさっきのドラゴンや夜行性の狼などに見つかったら一発アウトだ。

 だから、俺はここからまた移動することをする。


 一番最善で、人里を見つけること。最悪は、茂みの中とかかな……。どっちにしろ歩きださないと始まらない。できる限り安全に睡眠はしたいな……。







 歩き始めて、一時間ほど経過した頃だろうか。ようやく森、隠れ実の木以外の木が沢山生い茂っている場所を見つけた。

 ひとまず俺はその森に入る前に休憩をとる。

 余談だが、そんな俺は今上半身裸である。いや、別にそんな変態とかではなく、隠れ実を持ってくる際に、来ていた服を風呂敷代わりにして隠れ実を持ってきたのだ。断じて、ただ脱ぎたかったからとかではない。知恵を使った結果である。知恵を使った結果である。大事なことなので2回言ったぞ。


 と俺は休憩もそこそこにして、また動き始める。

 森を見つけたからといって、まだまだやることは沢山ある。寝床の作成だ。もうそろそろ日も傾いてきているので、急いで作らなければならない。タイムリミットは、日が落ちるまでといったところか。

 森に入るために俺は服を着る。隠れ実はここに置いていくことにした。お留守番だ。寝床の位置が決まったら、また取りに来たらいいだろう。ちなみに、俺の相棒の石……通称、兵士たちはちゃんとズボンのポケットの中に入っている。こいつらがいないと、何かあったとき為す術なく終わるからな。



 そして、俺は森に入る。あまり深くには行かないように気を付けながら、寝床に成り得る場所を吟味していく。

「もうここでいいか」

 と、15分程で場所を決めた俺は、隠れ実を取りに戻ることにする。

 石で木に付けた傷を目印を探しながらの道だったので、迷わずに、隠れ実を迎えに行って戻れた。


 俺が選んだ場所は、太い幹の木の周りに茂みがある場だ。ここは少し周りよりも小高くなっているので、野生動物が来てもすぐに見つけられるだろう。


「さて、あとは隠れる為にいろいろ集めないとな」

 隠れ実のように姿を偽装出来たらいいが、それはできないので、俺は寝床周辺から落ちている木の枝、石、大きい葉っぱなどを集める。


 木の枝は、拾ったりもしたが、相棒の石で何回も叩き傷を付けながら折ったりもした。葉が付いている枝は隠れる時に必要だろうと三本ほど折らせていただいた。

 大きい石は、運ぶのに苦労したが、色々と使い道が在りそうなので頑張って運んだ。

 大きい葉っぱは、雨が降ったら傘にできそうなあの葉っぱである。葉っぱの名前は知らない。隠れるのにちょうど良さそうなので、たくさん採取した。


 そして、寝床が完成した時、辺りはすっかり暗くなっていた。


 それから、俺は隠れ実を二つ食べて、そのまま作った寝床で隠れて目を閉じるのだった。自分で思ったより、よほど疲れていたのか、意識を手放すのにそれほど時間はかからなかった。





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