二人かくれんぼ
ある日
本当によくあるごく普通の日
霜の降りるとても寒くて美しい朝
僕は目が覚めた。
君なら朝、初めに何をするかな?
僕は、真っ先に何をするかというと、
そう、起きることが必要さ
体を起こさなくては ならないからね
ごく普通のこと?僕には少し特別なことなんだ
今日も、隣には彼女が寝ているから。
「んん~?いま起きたの?」
「そうだよ、たった今さ」
下着の彼女のブラジャーの背からはみ出る
わずかな贅肉が気になる
赤い日差しが程よく僕らを照らす
「いい天気ね~!」
「そうだね… 」
表情を変えずに不思議そうに僕を見つめる
僕に 何かついてるかい?
「いいえ、今日も格好いいわね」
「君こそ、今日も綺麗だよ」
赤い紅 がついた君を、優しく 撫でる
そうだ、朝刊を見なきゃあね
そういってコーヒーミルに手をかける
味ではなく、コーヒーを飲むという行為が好きだ。
よく変わっていると言われる
コーヒーと新聞、おきまりの朝、日常
広げると、右上に大きく、奇妙な殺人の一面が
書かれていた
「殺人犯、今日逮捕へ…?物騒な世の中だな。」
ここ数日の朝刊はどこも都内の殺人が目につく
「おーい、美穂!」
反応がない
殺人犯の一面を見てからこうなると、妙に焦る
いつもこうだ
小さなことで心配になってしまう。
理想の彼女が好きすぎるからかな笑
…なんてね
”ゴトッ”
ーーーーなにかが動いた音のようだった
笑った僕の
左のこめかみを一筋の冷や汗が通った
慌てて寝室に走る
扉を開けて ほっ、とした
「なんだ、寝ていたのか」
そこには
幸せそうに目をつぶって、横になった彼女がいた
さっきの音は、きっと何かが落ちた音なんだろう
唇だけじゃなく、服まで同じ色なんて、
君は本当に、紅色が好きなんだね
今日もとても綺麗だよ
僕は安心して、身支度を済ませた。
「早く帰るから待っていてね」
コクリ、と彼女は頷く
恥ずかしがり屋だからか、あまり話そうとしない
そういうところが僕は好きさ
行ってくるよ
そういって彼女を撫でた
首と身体が、少し離れた
紅まみれの、”彼女”を。
かくれんぼとは
彼女が見えない間(殺された後)に、彼がどこかへ行ってしまうという意味を込めてつけました。
幸せそうに寝ているというのは、彼女が死んでも彼を探してかくれんぼを楽しんでいるということです。
初めから、彼女は死んでいました