第65話 光の教会と悪魔教団
『悪魔教団』。
その組織の歴史は長く、源流を辿ればフィオーレ王国の建国以前まで遡る。
簡単に説明すれば、元は世界に光を齎す神を崇めていた集団だったが、いつの間にかそこから派生して悪魔を崇める集団が生まれたのだとか。
この"いつの間にか"だが、歴史が長い為か幾つもの説が存在し、コレといった確たる説は存在しないとのこと。
大陸全土に広く信仰を集めている宗教組織『アシェン教会』。
光の神を信奉している組織から派生してるせいか、『悪魔教団』とは長い間対立関係にある。
『悪魔教団』の構成員は何処に潜んでいるのかも分からず、国の要人が所属しているなんてこともあり、表沙汰に出来ない暗闘を歴史の裏で繰り返しているとも言われている。
「この世界んな物騒な集団がいんのかよ・・・・・・」
聞けば聞くほど気分が悪くなる。
大陸各地で子供を誘拐して悪魔召喚の儀式等の非道な人体実験を行ったりで、ただ単に悪魔を崇めているだけの宗教組織ではなく、一種のテロ組織とも言えるようだ。
聞くだけでもヤバそうな集団だが、何がヤバイってそんなヤバイ集団に俺が関わっている事だろう。
頭を抱えたくなる。
「つか、そんなヤバイ奴等に召喚された俺って何なんだ」
「まぁ、流石に悠殿が召喚されたのは事故だと思うが、君のその力が奴等が召喚しようとした本命の可能性はあるのぅ」
「いや、ほぼ確定だろ」
オルトンさんの言葉に、オッサンが断言する。
悪魔を崇める集団に召喚された俺に、ラッセルに取り憑いた悪魔と同じような気配を発する力が宿っていることを考えれば、自然と考えてしまう。
タマリスク荒野で死んでいた奴等が『悪魔教団』の構成員で、この力を召喚しようとしていたと。
「正確には、俺の中に居る奴か」
「悠殿の中にいる・・・という事は、実体を持ってはおらんという事じゃな」
「召喚者の誰かに憑依させようとしてたのかしら?」
「魔族は霊体故に誰かに憑かねぇと存在を保てねぇからな」
「そういうもんなの?」
「そう聞くね。僕から出ていったアイツも肉体を持つ何かに憑かないと存在を維持出来ないから、何かに憑いたか、それともあのまま消え去ったのか・・・・・・」
「あの寄生虫っぷりだとしぶとく生き残ってそうだけどな」
俺の中にいると思われる魔族に関するコメントが、オルトンさん、ヒナギクさん、オッサン、サクラ、ラッセルの順に発せられて俺で締める。
ラッセルの身体から出ていった奴が、あのまま存在が霧散して消え去ったのなら何も問題はないが、やはり何かに取り憑いて生きている可能性がある。
あの状況じゃ追う事は困難だったこともあり仕方なくはあるが、放置しておくには危険過ぎる。
オッサンがこの後冒険者ギルドに行って報告してくるとの事で、取り敢えずお任せするしかない。
「結局、俺の元の世界に帰る手掛かりは『何かクソヤバイ組織が関わっている』って事くらいしか分かんねぇわけか」
「そういう事になるわねぇ」
「坊主、もう一度言うがこいつ等について調べたりするのは止めとけ。命がいくつあっても足りやしねぇ」
「冒険者の間でも有名なのか?」
「まぁな。『悪魔教団』に関わる依頼が偶にあるんだけどよ、どれもロクなもんじゃねぇ。依頼はどれだけ上手く解決出来たとしても後味も胸糞もワリィもんばっかだし、高レベルの冒険者でも命を落とすことが多い。正直、依頼で受ける奴はそうはいない。ギルドマスターや王国からの任務でも可能なら極力拒否するからな。まぁ、任務は立場的に断れない事が多いんだけどよ」
オッサンは「命懸けてでも調べたいって言うんなら止めはしねぇけどよ」と、普段の親馬鹿っぷりがまるで見えない真面目に忠告してくる。
ベテラン冒険者の忠告だ、変に反発したりなんてせずにありがたく受け取っとくが、
「けど『悪魔教団』に関わらないってことは、俺が地球に帰る手掛かりは無くなったに等しいんだけどよ、何かねーの?」
菊之助さんの日記には特に目ぼしい情報はなかった。
本人がこの世界に骨を埋める気満々だったから、そこまで熱心には探さなかったというのも理由なんだろうが、現状『悪魔教団』関係以外での手掛かりが皆無だ。
調べるなら何かしらの取っ掛かりくらいは欲しい所である。
「先程ヒナギク君も言っておったが、此処『フィオーレ王国』で一番情報が集まるとしたらやはり王都じゃろう。王都には魔法の研究機関もあることじゃし、何か手掛かりがあるかもしれん。紹介状を用意しておこう」
「王都には冒険者ギルドの本部があるから、俺もギルドマスターに紹介状を書いといてやるよ」
俺がこの世界へやって来て6日目。
まだ1週間も経過していないというのに、もう何年も住んでいるんじゃないかと感じる程に濃密な6日間だった(初日の3日くらいは寝てたけど)。
オルトンさん達はこう言ってくれているが、今のところ異世界が如何とかって話は菊之助さん以外は聞かず、物語の中くらいでしか話を聞かないとの事。
正直、王都に行っても望み薄な気がするが・・・・・・。
それでも現状ヤバイ奴等以外には手掛かりは無く、手探りでも調べなければ何も話は進まない。
フィオーレ王国の王都の名は『トロンコ』。
取り敢えず、俺の当面の目的はそこへ行くことか。




