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宇枝悠の異世界漫遊記  作者: U-1
第1章 異世界漂流編
61/70

第61話 宇枝悠とサクラの朝帰り

「ふあぁぁ~・・・・・・」


日がまだ昇っておらず、朝焼けが薄っすらと森を照らす中、大きな欠伸をしながら俺はゆるりとバイクを走らせる。

横には馬車を走らせるラッセルと、馬車内にサクラ。

時は早朝のハコベ森、アセビタウンの宿で一泊し、予定通り俺達は朝早くに町を発ちサクラソウ村へ向かっている。


「あふぅ・・・・・・」

「お前も眠そうだな」

「アハハ・・・まぁね」

「サクラは二度寝に入りやがったし」

「まぁ、昨日はかなり飲んで騒いだしね」


四角い箱状で屋根付きの四輪馬車内で、サクラは毛布に包まって二度寝している。

昨日は宿酒場で飲み食いし、ラッセルは長々と泣きながら謝罪やら全然自身の気持ちに気付いてくれないサクラに対する不満やら貴族として愚痴などを語り、サクラはそれを辟易としながらも聞いていたのだ。

完全に酔っ払いとそれに絡まれた人というか、親戚の飲み会の席でおじさんに絡まれる娘みたいな絵面だ。

いくら鈍チンなサクラといえど、今回の騒動でラッセルの気持ちくらいは気付いたはずだ。

今回の件で長年想い続けていた女にフラれたも同然なのだから、思わずこの幼馴染みの鈍さに対する愚痴の一つや二つくらい零れても仕方がないだろう。

何か愚痴の最中チャックの恋心に関することも零していたような気がするのだが、いいのか本人のいないところで暴露して。

いや、一度告ってるから本来なら問題ないのだろうが、それが告白だと気付かずにいた女が此処に居る訳で。

帰ってチャックと遭遇したらいったいどんな反応をするのか、若干楽しみである。

・・・・・・てか、うん。気づいたんだよな? 流石にここまでの事が起きて気付いてなかったら悲しすぎるんだが、ラッセルとチャックの2人が。

どんだけ男を振り回す魔性の女だっつー話だよ。

そんなこんなで長々とラッセルの愚痴を聞いていたサクラは夜遅くまで付き合わされ、睡眠が充分ではなかったのだ。

同じく愚痴ってたラッセルも眠いのだが、バイクに乗る俺はともかく誰かが馬車を運転しなければサクラソウ村に早く帰れないので、眠気で閉じそうになる眼を気力を振り絞って開いて運転している。


「それにしても君も遅くまで騒いでいたのに、僕たち程眠そうではないね」

「あー・・・騒いでたっつってもそこまで疲れてないからな」


ベッキーに食い物よそって貰ったり酌されたりして、俺は楽しく飲み食いしていた。

仕事中にも拘らず同じく飲み食いしていたベッキーは飲んでる内にテンションが上がったのか、店の中で盛大に歌いだしたのだ。

周囲のオジサン達に聞いてみれば、いつもこんな感じなのだとか。

ノリの良いオジサン達が何処かから取り出した楽器を演奏し始めて、更には何故か俺まで歌う羽目になってしまった。

・・・・・・まぁ、ノリまくって歌いましたけどね。

カラオケとかもよく行くし、歌うのも演奏するのも嫌いじゃないし。


「それに一回死にかけて気絶したせいなのか、目覚めてからは身体の調子は良いんだよな」


死にかけて身体の調子が良いってのも訳分からんが。

あの黒い力にはスーパー●イヤ人的な要素でもあるのかね、戦闘民族的な。


「・・・・・・君のあの力も、魔族の力によるモノのようだけど」

「あー・・・みたいだな。何かそんな感じの事をあの寄生虫が言ってたような気がするな」


そして俺があの力を発動させる度に、誰かの声を聞いた。

関連付けるなら、あの声が黒い力の発生源であり、魔族であるということなんだろうが。


「声が聞こえてきて、乗っ取られる様な感覚はあるかい?」

「いんや、声が聞こえてきたのは死にかけた時だけだし、別に身体が乗っ取られる様な感じもねぇな」

「僕とは違うパターンか・・・・・・」

「そもそも『魔刻石』みたいな道具もねぇしな」


ラッセルと決定的に違うのは『魔刻石』の様な道具がない事だろう。

あの石に魔族が宿っていて、俺の【我が瞳は世界を見破る(アナライズ)】で状態異常などを見破ることが出来た。

昨日宿で寝る前に自分自身や身に付けている物などを隅々まで【我が瞳は世界を見破る(アナライズ)】で視てみたが、特に怪しいものはなかった。

少なくともあの黒い力は、何か道具を使って発動したものではない。

結局何も分からないという事が分かっただけだ。

これ以上の情報は、とりあえずアルフォンスのおっさんとヒナギクさんの情報待ちだ。


「おっさんが何か情報を持ってりゃいいが・・・・・・」

「・・・・・・アルフォンスさんか」


おっさんの名を口にして、ラッセルの顔色が青くなっていく。

・・・・・・まぁ、これから起こることを考えれば気が重いよな。


「ま、俺も一応口添えはすっけどさ。村の皆はともかく、あのおっさんがどう出るかは分からんぞ」

「う、うん・・・大丈夫だよ、自分のやってしまったことだ。彼等には僕から詫びなければならない、相手がたとえアルフォンスさんでも・・・・・・!」

「そうだな、相手がたとえ娘を溺愛してるあのおっさんでも」

「ああ。相手がたとえサクラを溺愛していて彼がいない間にサクラを誘拐してしまったとしても・・・・・・‼」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめん、やっぱり君からも口添えを頼む」

「へいへい」


決意を固めるが、やはり恐いらしい。

我が瞳は世界を見破る(アナライズ)】で見えてしまうレベルとステータスの差を考えれば無理もないが。


◆◆◆


まだ早朝という事もあってかモンスターの類は出てくることも無く、俺達はノンビリとした道行きでサクラソウ村へと帰ってきた。

流石にまだ村の皆は起きていないようだ。

さて先ずはサクラの家に向かおうかと考えたが、先に村長であるオルトンさんの元へ行き事情を説明した方が良いと発言したラッセルの案で、俺達は村長の家に向かうことにした。

決してアルフォンスのおっさんに事情説明という名の言い訳を並べ立てることにラッセルがビビった訳では無い。

そして村長宅へ向かう中、村の一部の破壊跡が目に入る。

ラッセルが魔法で薙ぎ払って出来た破壊跡。

焼け焦げた家屋に、踏み荒らされた地面、地に血痕が残っているのはチャックのモノだろうか。

それらを見て、ただでさえ青いラッセルの顔色が時間経過と共に酷い事になっていく。

しかし、逸らしかけた目は村の惨状をしっかりと見据えた。

自分の罪から逃げない様に、決意に満ちた瞳で、ラッセルは村長宅へと馬車を進める。


「だから! 今直ぐラッセルのクソ坊主のとこに行くべきだっつってんだろーがッ‼‼‼」


そんな決意の瞳は、村長宅から聞こえてきた怒声に、一瞬で揺れ動いた。

村長宅に近づくにつれて声はハッキリと聞こえてくる。


「落ち着きなさいアルフォンス君」

「そうよ。悠君が先行してくれてるんだし、私達は念入りに準備していくべきよ」

「うむ。何やら只ならぬ様子のようじゃし、ワシ達といえど万が一という事もありえる。確実にサクラ君を奪還する為にも、装備は整えておくべきじゃ!」

「・・・・・・ああ、そう、だな。すまねぇ、熱くなりすぎてたみてぇだ」

「貴方・・・・・・」

「焦ることはない。連れ去ったという事は少なくとも命を奪う事はせんじゃろうし、悠殿もおる。気負い過ぎると、冷静な判断が出来なくなるぞ」

「・・・・・・おう」

「それじゃ、準備に取り掛かりましょうか!」

「うむ。わしは倉庫にある魔法道具(マジックアイテム)と装備品や薬品を持ってこよう」

「私は馬を連れてくるわね」

「よし、なら俺は家の倉庫からこんなこともあろうかと用意していたあのクソ坊主の家を木端微塵に消し飛ばす爆弾をありったけ持ってくるぜ‼」

「「ちょっと待て!?」」


・・・・・・声がハッキリと聞こえてきて、ラッセルの顔色と脂汗が酷いことになっていく。


「おーい、生きてるかラッセル?」

「・・・・・・ウン、ダイジョウブダヨ」

「大丈夫じゃねぇな」


一瞬にして冷や汗がびっしょりだ。

元々病弱だとは聞いていたが、何か今にも倒れそうというか死にそうな勢いなのだが。

ここから先に進むのは勇気がいるのかもしれないが、それでもいつまでもこの場で足踏みしている訳にもいかなく、仕方なしに先ずは俺が行って事情を説明して、ラッセルが落ち着くのを待ってもらった方が良いか。

サクラは無事だし、連れて帰ってきたことを告げればみんな落ち着いた対応をしてくれるだろう。

うん、そうしようと俺がバイクから降りたその時だった。


ガチャっと、村長宅の扉が開かれた。


勢いよく飛び出してくるおっさんに、慌てた様子で飛び出してくるヒナギクさんとオルトンさん。

そんな彼らの真正面に居る俺達は、当然彼らと目が合った。

キョトンとする大人達。

よし、偶然とはいえ虚を突いた空気になってる今なら冷静に説明できるチャンス。

俺はラッセルに馬車から降りるよう手招き、そして事情を説明しようと――――――


「うぅん・・・・・・何、もう着いたの?」


――――――したところで、馬車内からサクラが出てきた。

寝不足故に今まで寝ていたが、まだ寝たりないのか欠伸をしながら馬車から降りてきた。


衣服がはだけて、やけに肌を露出した格好で。


馬車内の寝心地が良かったとは思えないが、それでも寝相悪すぎだろ。

どんだけだらしない格好で出てきてんだ。

だが、まぁ、こんな娘の無事な姿を見ればこの人達も安心するだろう。

俺はやれやれと肩を竦め、恐らく一番冷静じゃないであろうアルフォンスのおっさんを見る。


「貴様ら・・・・・・娘にそんな格好をさせて何をしていたぁ・・・・・・ッ!?」


・・・・・・めっちゃ冷静じゃなかった。

いや、確かに冷静じゃないとは言ったがそういう意味ではなく!


「待て、おっさん落ち着け。冷静になれ」

「俺ハ冷静ダッ‼」

「冷静な人間の喋り方じゃねぇから!?」

「黙れ! 貴様ら娘とナニをしていた!?」

「何もしてねぇから、昨日の内に帰ってこなかったのは悪かったとは思うが、朝早くに3人でこうやって一緒に帰ってきたんだから別に良いだろーが」

「3人で一緒に朝帰りだから別に良いだぁ!? 昨日の内って何だ!? 3Pか!? 3人で一緒に昨日から朝までよろしくやってたってか!?」

「すいませーん! 誰か通訳して!?」


誘拐されたサクラを救出して、一応の首謀者を連れての帰還。

大いに揉める可能性はあると思っていたが、俺達の帰還は何か違う方向に大いに揉め出したのだった。

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