第59話 ラッセルの記憶
「――――――・・・・・・僕が、そんなことを・・・・・・・・・・・・」
これまでに何が起きたかを説明する俺達に、ラッセルは否定の言葉を使わなかった。
話せば話すほど顔色が悪くなっていくが、やはりハッキリとはいえなくともある程度は記憶に残っているらしい。
石を手に入れてから妙に気が大きくなったこと、サクラを力づくで手に入れようと考えたこと、そしてサクラソウ村で――――――
「――――――チャック達には、とんでもないことしてしまった」
「ラッセル・・・・・・」
「サクラ・・・君にも、僕は・・・・・・」
「ラッセルのせいじゃないでしょ、訳を話せばみんなもきっと分かってくれるから」
「サクラ・・・・・・」
そんな罪悪感に苛まれるラッセルに、サクラは彼の手を握り安心させるように優しく語り掛ける。
幼馴染み故に距離が近く、付き合いが長い故に親密で、何やら視線が交わって良い感じな雰囲気を醸し出していた。
・・・・・・あれ、俺の存在忘れられてません?
「・・・・・・で、あの石は具体的にどういった経緯で手に入れたんだ? 行商人から買ったってのはサクラから聞いたが」
2人は何やらハッとした様子で此方に向き直り、ラッセルは記憶を掘り起こす様に頭に手をやり語りだす。
てか、やっぱ俺の存在忘れてたなコノヤロー・・・・・・。
「あの石は、2週間くらい前に町にやって来た行商人から買ったんだ。商店通りを見回っていた時に、僕に売り込んできた行商人がいてね。彼女から買ったんだ」
「彼女・・・・・・」
てことは、行商人は女か。
まぁ、性別だけ分かったところで、だから何だって感じだが。
「あの石を商人に見せられた時、とても魅かれたんだ・・・・・・手に取ってみたら『欲しいモノがあるなら躊躇うな、力尽くでも手に入れろ! お前にはそれだけの力がある‼』って声が僕の内から聞こえてきた気がして、力が漲ってきたんだ。あの時の、自分に出来ない事なんてないって錯覚するほどの全能感。その後の事はボンヤリとしか覚えてないけど、その瞬間のことはよく覚えている」
「内の声ってのは、あの魔族の声だろうな」
あの魔刻石とやらに宿ってたっぽいし、ラッセルがその石を手に取ってから狂い始めたのは間違いないだろう。
後はそんな石を扱うその行商人が何者なのかってことだが。
「他に何かなかったか? その女の特徴とか」
「特徴・・・・・・といってもローブで身体を覆って、フードを深く被っていたからね。声で女性であることは分かったけど」
思い出そうと空を仰ぐラッセル。
そして何かを思い出したらしく「あ」と声を零した。
「どうしたの?」
「特徴・・・と言って良いのかどうか分からないけど、そのローブに奇妙な模様があったよ」
「模様?」
「ああ。冒険者ギルドのパーティや、職人ギルドの製造品、商人ギルドとかに所属している人達が身分証明にも使っている紋様があるんだけど、あれもそんな感じなのかな。ただ、見たことのない紋様だったから印象に残ってる」
「どんな紋様だったんだ?」
「山羊の頭部と下半身に、人間の上半身と悪魔の翼みたいなものを生やした姿。その後ろに星を逆さまにしたような模様・・・・・・うん、そんな紋様だったよ」




