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宇枝悠の異世界漫遊記  作者: U-1
第1章 異世界漂流編
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第5話 宇枝悠の全力逃走

ようやっと遭遇できた人間。

だが、喜んでもいられない。

どう見ても、熊と人が戦っているのだ。

2メートルほどの大きさの、真っ赤な体毛をした熊。

そして人間の女。

腰まで伸びた黒髪を三つ編みで結んでおり、歳は見た目で判断するなら俺とそう変わらない。

服装も変という事は無いのだが、あまり日本では見かけない感じだ。

まるでドラ●エとか、RPGの何処にでも居そうな村娘が着てそうな感じのパンツスタイルである。

そこまでは別に良い。

問題なのは、その女が両手に身に付けているモノ。

・・・・・・どう見ても剣と盾だ。

その右手で熊相手に振るう剣は、刀身が少し細く感じる西洋風の剣で、ゲームとかでよく見かける類の剣だ。

左手に持つ盾は、これもまたゲームで見かけるバックラーという小さな盾だろう。

どう考えても日本でも外国でも、現代人が武器として使う物じゃないハズ。

女が熊の剛腕を避け、隙を見ては剣で切り裂いたり、蹴りを入れたりしている。

だが熊は肉が硬いのか皮膚が分厚いのか大して効いていないようで、全く気にするそぶりも無く、獲物である女をその太い爪で仕留めようと腕を振るうのを止めない。

女の顔に焦りが見える。

怪我を負った訳では無いが、熊に怪我を負わせてもいない。

現状は五分、だが体力の差が出てこのままでは時期に狩られてしまう。

そんな顔だった。


「・・・・・・どーすっかなぁ」


自分の安全を考えるのなら、見なかったことにして道を引き返すべきだ。

だが、このままだと命の危険がある人を放っておくのも人道的に問題だろう。

自分と然程歳が離れていないような少女なら尚の事。

とは言え、このまま加勢になんて出れる訳もない。

出たって熊の獲物が1人から2人になるだけだ。

仮に、俺があの女と同じような武器を持っていてもそれは変わらない。

普通に考えたら、熊を仕留めるんだから猟銃の類がいるよな。

勿論、この場にそんな都合のいいモノがある筈も無い。

どうする? あの女を助け、この現状を如何にかする方法があるのか?

俺があーでもない、こーでもないと頭を捻ってると、戦闘の流れが変わった。

熊は大きく息を吸うような動きをみせる。

そして轟ッ‼‼と、その口から火を吹き出した。


「マジか・・・・・・!?」


コレはもう確定だ。

真っ赤な体毛の熊なんて知らないが、俺が知らないだけで地球上の何処かには存在しているのかもしれない。

剣や盾で戦うなんて現代人的ではないが、俺が知らないだけで外国の辺境地にそういう人がいるのかもしれない。

だが、口から火を吹く熊なんて流石に存在しない。

少なくとも地球上には。


「マジでファンタジーかよ」


どうやら俺は本当に地球ではない所に居るらしい。

「うわーマジかどうすっかなぁー」と頭を抱えたいところだが、そうも言ってられない。

熊が吐いた火に女が呑まれた。

盾で顔を防いでいるが、あんなもので護り切れるとは思えない。

予想通り、女は火炎の奔流から逃れようと必死に横に跳び、火炎の波から抜け出た。

そのまま地面を転がり、身体に着いた火を消している。

火が消えた所で転がるのを止め、身体を起こそうとするが痙攣するだけで起き上がれない。

地面に横たわり、そして動かなくなった。

・・・・・・死んだのか?

いや、身体が微かに動いている。

息をしているのだ。

まだ死んではいないが、それも時間の問題だ。

身に付けていた服は所々焼け落ち、露わになった素肌も焼けている。

医者じゃないからどのくらい酷いのか分からないが、あの火傷で命を落とさなくても、倒れている女に徐々に迫る熊が遅からず命を狩るだろう。

どうする?

どうすればいい?

どうすれば現状を変えられる?

・・・・・・俺は、何をすればいいんだ?


「・・・・・・あー、クソ」


こんな安直な方法しか思いつかねぇ。

死んだふり?

いやいや、それは間違った古い知識だ。

俺はズボンのポケットからカロリーメイトチョコ味を取り出し、封を開ける。

思いついた方法・・・・・・それは、食べ物で釣る、だ。

肉とかの方が良いかもだが、生憎今はカロリーメイトやお菓子の類しかない。

1個だけ投げても成功しないかもだから、鞄からクッキーと板チョコも出して、取り出しやすいようにポケットに入れておく。

まずはこのカロリーメイトで試す。

1袋2個入りが、2袋入った1箱。

つまりは全部で4個入り。

それらを取り出し3個を左手で持ち、1個を右手で持つ。


「確か、熊の注意を引くように投げればいいんだったか?」


何かの授業かテレビの番組か忘れたが、熊に遭遇した時の対処法で、荷物に食べ物があったらそれを熊の近くに投げればいいとか何とかって話を何処かで聞いた。


「近すぎても駄目だよな」


あの女を熊から助け出すのが難しくなる。

だが、遠くに投げると熊に気付かれない。


「遠すぎず、近すぎず・・・・・・」


食べ物はまだある。

最初は近くに投げ、何回かに分けて遠ざければいいか。

遠ざけて餌に気を取られている隙に、女を救出。


「コレしかねぇか」


腹を括り、俺は狙いを定める。

テニス部だから普段ラケットでボールを打ってはいるが、投げるのはボールを誰かに渡すか、あるいはサーブを打つ時くらいだ。

しかもボールのように丸い訳じゃ無く、長方形。

上手く投げれるかどうか・・・・・・。


「ま、投げるしかない訳だが・・・・・・」


のそりと動く熊が、徐々に女に近づいて行く。

狙って狙って――――――


「――――――今だ!」


右手に握るカロリーメイトを放り投げた。

軌道はやや斜め上、放物線を描いて重力に従い、目標へと落ちていく。


コツンと、熊の脳天に当たった。


「いや当ててどうする!?」


近くに落とすはずが、まさかの直撃である。

やっぱボールじゃないから投げにくい。

熊に当たったカロリーメイトは、熊の足下にポトリと落ちた。

そして熊は女へ向かう足を止め、足下に落ちるカロリーメイトを一瞥――――――


「・・・・・・GAaa?」


――――――することも無く、ジロリと茂みに隠れた俺を睨み付けた。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・――――――」

「・・・・・・・・・・・・――――――」


視線が交わる、一瞬の静寂。


「――――――GAAAAAAAAAAAAAAッ‼」

「――――――ですよねぇっ!?」


雄叫びを上げて此方に爆走してくる熊から、俺は背を向け全力で逃走した。

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