第46話 サクラの好きな冒険譚
読書家というほどではないが、本を読むのは幼少の頃からそれなりに好きだった。
好きな本は冒険譚物。
中でもお気に入りは『光の勇者』。
異世界から召喚された5人の異世界人が、世界を旅してまわり、力を身につけ、魔王を倒す物語。
その『光の勇者』の話の中で一番好きなのは、勇者たちが魔王に連れ去られたお姫様を助け出す話。
村の少女たちは勇者に助けられるお姫様に憧れていたが、どちらかと言えば勇者に憧れる。
未知の探求、出会う仲間、隠れた財宝、強敵との戦い・・・・・・その冒険。
最初はそんなに強くない勇者達でも、冒険を経て伝説に至るほど強くなっていく。
そんな冒険譚が昔から好きだった。
悪者に捕らわれて勇者が助けに来るのを心待ちにするお姫様より、悪い奴等をバッタバッタと薙ぎ払って勇敢に突き進んでいく勇者の方が断然カッコいい。
そんな事を言っていると、村の少女達は「変わってる」と口を揃える。
皆と違う事を感じ、違う事を思っていて、幼き頃から自分は周りの少女達と比べて変わっているのは自覚していた。
何故お姫様に憧れるのか解らない。
勇者の方がどう考えてもカッコいい。
一番身近な人物を見ても、やはりお姫様より冒険してる勇者の方が華やかに思える。
自分の父の様に。
お城で暮らすお姫様の様に煌びやかではないが、その口から語られる自らが歩んだ冒険譚は何よりも輝いていると思う。
未知の探求、出会う仲間、隠れた財宝、強敵との戦い。
『冒険』。
幼少の頃からその話を聞いて、いつか自分もと心躍らせていた。
王国で5指に入る凄腕の冒険者。
そんな父の様な冒険者になり、勇者の冒険譚の様な旅をする。
そんな事を小さな頃から考えていた。
ただジッと助けを待つお姫様など、自分の性には合わない。
村の少女たちは、いったい捕らわれるお姫様の何が好きなのか?
それは未だに解らない。
・・・・・・ああ、でも――――――――
――――もし物語のお姫様の様な捕らわれの身にでもなったりしたら、助けを待つその気持ちが分かるようになるのだろうか。
◆◆◆
「―――――――ぅ・・・・・・?」
ボンヤリと、目が覚める。
ぼやける景色が徐々に鮮明になっていき、視界が晴れていく。
知らない天井だった。
「此処は・・・・・・?」
やや薄暗い部屋。
明かりは窓から差し込む太陽の光のみで、ランプの類は点いていない。
だが、天井高く広がっている窓の為、部屋の様子は良く見える。
大広間とでもいうような広い部屋。
よく見れば、ガラスはステンドグラス。
他に何か目立つ物は・・・・・・
「・・・・・・え」
取りあえず上体を起こして辺りを見回そうとするが、身体を起こせない。
ガチャッと音を立てて、腕が何かに引っ張られる。
そこで初めて、サクラは自分の置かれている状況に気が付く。
両腕を頭の上に引っ張られ、手首を鎖付きの手錠で固定され繋げられて、台座の上に寝かされていた。
足にも枷が付けられ、同じく鎖で繋がれている。
そして、自分の服装。
村でいつも着ている衣服ではない。
清純さを表す様な、白を基調とするドレス。
所謂、花嫁衣裳――――――ウェディングドレスと呼ばれるモノを身に纏っていた。
「やあ、目が覚めたんだね、サクラ」
何故こんな物を?と疑問に思うよりも早く、広間にやって来た男に首を動かし目を向ける。
瞬間、記憶が呼び起こされる。
何故自分が今此処にいるのか、何故こんなことになったのか、何故・・・幼馴染みがこのような狼藉を働いたのか。
「ラッセルッ・・・・・・‼」
豹変した幼馴染みを睨むサクラだが、その幼馴染みはいつもと変わらない朗らかな微笑を浮かべた。




